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風景のレシピ #5“通り”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ#5“通り”

調理時間:1日

材料:
アパートメント:数軒
窓:無数
ラジオの音:ひと匙
手すり:ひとつ
何かの看板:ひとつ
猫や鳥類のあくび:適宜


1.通りに面したアパートメントを建てる。
  壁の漆喰は何度も塗り重ねる。


2.個性的な色で窓枠を塗る。
  何処かから、乾いたラジオの音が聴こえる。
  天気予報やサッカーの中継、歌謡曲…


3.手すりを作り、そこから通りを眺める。
  界隈を歩くひとは誰もいないが、遠い靴音が壁に響く。


4.丸くてきれいな色の看板を取り付ける。
  それはこの通りには場違いな存在。

  

5.すっかりこの通りの住人の気分(夕食のメニューを考えるとか)になったら、できあがり。


調理のコツ
*建物や窓枠の配色は思い切って。調和を崩し、新しい調和に出会う。

開け放たれた細枠の窓の心もとなさ
錆びた手すり
水溜りが空を映す
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

★「風景のレシピ」マガジンページはこちら
#1 “眠たい海辺の町”
#2 “石と流木のある部屋”
#3 “松林の散歩者”
#4 “夕景・手・オブジェ”



◎好評既刊◎
『窓から見える世界の風』福島あずさ著、nakaban絵(創元社、2018年)
『あの日からの或る日の絵とことば』筒井大介編(創元社、2019年)