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風景のレシピ #42 “誰もいない石の町”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ #42 “誰もいない石の町”

調理時間:5時間

材料:
雲海:大量に
石の町:ひとつ
石の塔(アイルランド風):一塔
木々:適宜
朝焼け:ひとつ
鳥の声:適宜


1.広めの空間に朝の空気をひろげる。静寂に鳥の声を散らす。


2.無数の石を積み、ほとんど遺跡のような雰囲気の石の町をつくる。
  中心となる塔を建てる。町には誰もいない。
  積まれた石の重量と静電気が、かすかに言葉を発するように。


3.町の向こう側には雲海をひろげる。雲に青みを帯びた水分を含ませる。


4.雲海のかなたに幾つかの山のシルエットを並べ、朝焼けの光にやさしく包む。


調理のコツ
*塔に登って深呼吸しているかのように

雲海の防波堤のような石の壁
塔の頂点の角度は51度
ゆっくり押し寄せる雲海の波
できあがり。クリックすると拡大して見られます


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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