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【目次公開】書籍『ソフトウェア・ファースト』を出版します

2019年10月10日、私、及川卓也は単著では初の書籍『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』を出版します。このnoteでは、出版の経緯や書籍づくりの裏話、発刊時に削った原稿の公開など、本書の制作にまつわるさまざまな情報を発信していきます。

こんにちは、及川です。2019年10月10日に『ソフトウェア・ファースト』というタイトルの書籍を出版することになりました。

(※正式な出版日は10月15日なので、全国各地の書店に行き渡るまで少しタイムラグがあるかもしれません)

この本は、最新テクノロジーを使った新規事業の創出や、ITを活用した事業変革を進めたいと考えている方々に向けて執筆しました。最近のトレンドで言うと、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やAI活用、クラウド(特にSaaS)をベースにした新ビジネスなどに取り組む企業の方向けです。

ただし、DXほか個別のビジネスモデルについて解説するのではなく、あらゆるITビジネスに必要な「モダンなソフトウェア開発」のやり方と、それに伴う「人と組織の変革」をテーマに執筆しました。その時々で変わるバズワードに踊らされることなく、本質的なIT活用を促すには、ビジネスモデルや開発手法を説明するだけでは事足りないと考えたからです。

私が2019年1月に設立したTably株式会社は、テクノロジーによって既存のビジネスや社会を変革しようと試みる企業をさまざまな形で支援することを生業にしています。その一環として、DXや事業のアズ・ア・サービス化に取り組む大企業からご相談いただく機会も増えました。が、その過程で強く感じるのは

そもそもITでビジネスを行う組織体制になっていない企業が多い

ということです。

米の投資家マーク・アンドリーセン氏は、2011年に書いた「Why Software Is Eating The World」というコラムで、今後あらゆる産業がソフトウェアによってデジタル化していくと予言しました。あれから8年が経ち、いまや多くの事業会社が彼の予言通りにITを使った業態転換を画策しています。

しかし、ソフトウェアはあくまで事業をデジタル化する手段の一つです。ITを使って本当に事業を変革し、ユーザーの満足度を高めるには、プロダクトの開発・運営を手掛ける組織全体を変えなければなりません。先進企業のやり方をうわべだけ真似るのでは、何も定着しないでしょう。

だからこそ、この本では事業企画やソフトウェア開発の手法解説にとどまらず、あらゆる企業活動をソフトウェア・ファーストなものに変革するためのノウハウをまとめました。その意味では、現在の開発体制を見直したいと考えているIT企業やスタートアップの方々にもお役に立てる内容になっていると思います。

「知る」だけで溜飲を下げるのではなく「行動」を起こし、これからもっと広がっていくデジタル経済の中で読者の皆さんが「事を成す」お手伝いをしたい。そんな思いで、できるだけ実践的な内容を記したつもりです。

以下に目次詳細をまとめますので、その内容や執筆趣旨が皆さんのご興味を引くものだったら、ぜひ1冊ご予約いただければ幸いです。

(※Kindle版も準備中で、出版日の10月10日までに実装される予定です。電子版が欲しいという方は、少しだけお待ちください)

『ソフトウェア・ファースト』の目次

はじめに
- ボーッと生きてんじゃねえよ!/突然ですが、クイズです

1章:ソフトウェア・ファースト

● サービス化する社会
- オール・シングス・マスト・パス/産業のサービス化とは/サービス化を象徴するSaaSの普及

● サービス化を支えるプロダクト開発手法の変化
- 未来のユーザーのために/機敏性を高めるアジャイル開発手法/走りながら考えるDevOps

● ソフトウェア・ファーストとは
- あらゆる企業活動を変革する

● Column
- アズ・ア・サービス開発、実践の前提条件〜サイボウズ 執行役員 開発本部長 佐藤鉄平氏に聞く

2章:IT・ネットの“20年戦争”に負けた日本の課題と光明

● 日本経済の没落とIT産業力の関係
- 80年代まで最強を誇った日本のハイテク産業/アプリケーションの時代になって失われた競争力

● 要因1:ITを「効率化の道具」と過小評価
- 過去の成功体験にとらわれITが持つ力を見誤る/SI産業の歴史と拡大してきた背景/SIerの功罪/SIerが採るべき今後の選択肢

● 要因2:間違った「製造業信奉」から抜け出せない
- 開発の終わりがなくなった現代のソフトウェア/パッケージソフトからSaaSへの移行で変わること/製造業の開発プロセスを参考にするべき点と異なる点

● 要因3:サービス設計〜運用面での誤解
- 「狩野モデル」で考える、間違った品質追求の愚/現実に即してない情報セキュリティポリシー/データ活用に感じる2つの違和感

● ITサービスで存在感を示すためのアイデア
- 「フィジカル×サイバー」領域の新規事業/プラットフォームを構築せよ

● Column
- あらゆるサービスは「課題解決」のためにある〜エムスリー VPoE 山崎聡氏、AI・機械学習チームリーダー 西場正浩氏に聞く

3章:ソフトウェア・ファーストの実践に必要な変革

● DXの本質的な意味
- バズワードに踊らされないために/各社それぞれの定義/DXの本質はIT活用を「手の内化」すること/DXの勝者と敗者:ネットフリックスとブロックバスター/DXは新たな価値を生み出す取り組み

● ポジション別に求められる意識の変化
- 経営陣は先頭に立つ/マネジャーが変われば組織は変わる/現場社員が常に主役/「何を提案しても会社は変わらない」と嘆く前に

● プロダクト企画のやり方を変える
- ユーザーニーズを理解する難しさ/プロダクトアウトは悪か/10X(テンエックス)を目指す/体を表す名とは/競合に対する見方を変える/ハードウェアはソフトウェアのためにある?/リーン・スタートアップとデザインスプリント/アンチ・リーン・スタートアップ/ユーザーを理解する

● プロダクトの骨太の方針を決める
- 骨太の方針の王道PRD/1枚ですべてを表すワンページャー/プレスリリースから始めよう/話しにくいことこそ最初に決めるインセプションデッキ/もし日本語ワープロを作れと言われたら/OKRの精神に学ぶ

● リリース後の運用を最初から考える
- 使われないプロダクトはゴミ/ユーザーの利用状況は宝の山/NPS®︎を活用する/全員を幸せにしなくていい/ITがすべてではない

● 組織変革を並行して進める
- 変革の拠り所となるミッション/エイリアンとミュータントを登用する/デジタイゼーションとデジタライゼーション/経営陣の中で誰が決めるのかを明確にする/組織文化を変えるヒントは「インナーソース」にあり

● Column
- 変革には長期視点の「仕込み」が必要〜コニカミノルタ 執行役 IoTサービスPF開発統括部長 江口俊哉氏に聞く

4章:これからの「強い開発組織」を考える

● 理想の体制を考える前に
- 開発を外部委託する問題点/内製化に対する4つの誤解を解く/外部リソースを使っても問題ない場合は?/全員がプロダクト志向になる/内製化のモデルケース:アマゾンの倉庫自動化

● 開発組織を整備するステップ
- ソフトウェア開発に必要な職種/開発組織におけるマネジャーの役割/プロダクトマネジャーとエンジニアリングマネジャー/CTOとVPoE/自社に合ったジョブ・ディスクリプションを作ってみる/職能組織と事業主体組織 /出島戦略
  
● エンジニアの採用難をどう乗り越えるか?
- 給与テーブルにひもづく人事制度を見直せ/採用後の定着も見据えて「評価」のやり方を変える/評価基準の設定に悩んだ時の解消法/採用戦略へのアドバイス/人材エージェント頼みの採用は間違い/最初の1名の重要性/組織文化を変える

● Column
- 変化に強い開発組織は「信頼」から生まれる〜さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏に聞く

5章:ソフトウェア・ファーストなキャリアを築くには

● キャリア形成の「型」を知る
- T型のスキル構築/T型からπ(パイ)型へ/複数の縦軸を作る時の選び方/スキルの棚卸し

● 将来のキャリアパスを考える
- ソフトウェアエンジニアのキャリア3大分類/職位とパフォーマンスをどう評価するか/マネジャーになることに抵抗がある人へ/日本の典型的な事業会社でキャリアを築くには/職種別・具体的なキャリアパス/ソフトウェア・ファーストな人材になる第一歩

● 生涯「ソフトウェアに携わる人」として成長する
- POINT 1  “なんで俺だけ?” ー 社会人1年目/POINT 2 “ひたすら挑戦” ー 米国マイクロソフトへ出向/POINT 3 “このままでいいのか” ー マイクロソフトへの転職と汎用スキル習得/POINT 4 “Something New”ー 安定への恐怖〜グーグルへの転職/POINT 5 “Something new again” ー さらなる高みを目指して/POINT 6 “独自色” ー スタートアップへの挑戦〜独立/すべては移り変わる

おわりに
- 「はじめに」で出したクイズの答え合わせ

付録:モダンなプロダクト開発を行うための技術と手法
- クラウドでのアズ・ア・サービス/マイクロサービスアーキテクチャ/開発・運用手法の進化

執筆時は、目次のColumn部分に書いたサイボウズ、エムスリー、コニカミノルタ、さくらインターネットの4社をはじめ、たくさんの方々にお力添えいただきました。この場を借りて深くお礼申し上げます。

また、この本は版元の日経BPだけでなく、フリーランスの方を含め数名の「編集チーム」を組んで企画~執筆にあたりました。一般的なソフトウェア開発でも役立つ経験だったと感じているので、その制作プロセスや失敗談(それに関連する形で削った書籍未掲載の原稿)についてもnoteで公開していく予定です。よろしければぜひフォローしていただければ幸いです。

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