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【科学者#073】サモスの賢人と呼ばれ謎に包まれたピタゴラス教団のトップ【ピタゴラス】

今まで様々な科学者を紹介してきましたが、その中でも生涯が謎に包まれている人物としては、第23回目ではヘンリー・キャヴェンディッシュを紹介しました。

キャベンディッシュの場合は、人間嫌いだったため人との接触があまりなかったので謎に包まれている部分が多いのですが、実はキャベンディッシュ以上に謎に包まれており、さらに実際にいたかどうかも少々怪しい科学者がいます。

今回は、サモスの賢人と呼ばれ謎に包まれたピタゴラス教団のトップであるピタゴラスを紹介します。




ピタゴラス

名前:ピタゴラス(Pythagoras)
出身:サモス島
職業:数学者、哲学者
生誕:紀元前582年
没年:紀元前496年(???歳)


業績について

ピタゴラスのつくったピタゴラス教団は、秘密主義だったので詳しいことはあまり分かっていません。

さらに、教団内部の記録や著作物なども残っていないため、謎に包まれています。

現在私たちが知ることができるピタゴラスの人物像などについては、ピタゴラスの弟子たちの著作や、数学に関する本の注釈などから出来上がっています。

したがって、ピタゴラスの業績だと思われているものは、本当にピタゴラスの業績かどうかは分かっていないです。

そんなピタゴラスの業績と言われているもので、今回はピタゴラスの定理を紹介します。

これは中学校の数学でも習うので、聞いたことがある人もいると思います。

ピタゴラスの定理とは、直角三角形の3辺の長さの間に成り立つ関係で、直角をなす2辺をa、bとし、斜辺をcとすると

a²+b²=c²

が成り立ちます。

この定理は、ピタゴラスが直角二等辺三角形のタイルが敷き詰められた床を見ていた時に思いついたという逸話がありますが、やはり実際にピタゴラス自身が発見したものなのかは分かっていません。


生涯について

ピタゴラスの父親は、宝石細工師だったとも、商人だったとも言われています。

一説では、ティルスから来た商人で、飢餓で苦しんでいたサモス島にトウモロコシを伝え、感謝のしるしとしてサモス島の市民権を得たと言われています。

幼少期のピタゴラスは、父親と一緒に旅をしたり、竪琴の弾きかたや詩を学び、ホメロスを暗唱していました。

ちなみに、ピタゴラスの外見については全て架空である可能性があります。

ピタゴラスが若いときに、影響を受けた3人の哲学者がいます。

ひとりは数学的な考え方を教えた、ピタゴラスの師と言われているシロスのペレキュデスになります。

残りの2人はミトレスに住んでいたタレスと、その弟子のアナクシマンドロスになります。

タレス
アナクシマンドロス

ピタゴラスは18歳から20歳の時に、ミトレスのタレスを訪問します。

タレスはピタゴラスの数学と天文学の興味を引き出し、さらに学ぶためにエジプトへ旅行することを提案してくれます。

アナクシマンドロスは幾何学と宇宙論に興味を持っており、ピタゴラスの考え方に影響を与えます。


紀元前535年頃には、エジプトと同盟を組んでいたサモス島のポリュクラテスへの紹介状を持ってエジプトへ行きます。

ポリュクラテス

そこでは、多くの神殿を訪れて司祭たちとの議論に参加します。

しかし紀元前525年には、ペルシャ王カンビュセス2世がエジプトに進行します。

カンビュセス2世

この時ポリュクラテスがエジプトとの同盟を放棄したこともあり、ピタゴラスは捕虜となりバビロンに連行されます。

紀元前520年には、サモス島に戻るのですが、法制度を学ぶためクレタ島に旅へ行きます。

その後は、サモス島に戻りセミサークルと呼ばれる学校を設立します。

しかし紀元前518年ごろ、学校の運営がうまくいかなかったためサモス島を離れ南イタリアへ向かいます。

そして、クロトーンに哲学的かつ宗教学的なピタゴラス教団を設立します。

この教団は秘密主義であり、さらに共同主義で、地域の有力者の保護を得て大きな力を持ち、数百人以上の信者を抱えます。

ちなみにピタゴラス教団は2種類の形態があり、ひとつはマテマティコイと呼ばれるもので、ピタゴラス自身によって教えられ厳格な規則にしたがっていました。

例えば、教団と共に住み、個人所有物を持つことを禁じ、菜食主義者で、内部情報を外部に漏らすことを厳しく禁じていました。

そのため、ピタゴラスの業績と言われているものに関しては、ピタゴラス本人によるものなのか、それとも教団の人たちの業績なのかは区別できません。

さらに、違反者は船から海に突き落とされ死刑になってしまいます。

もうひとつはアコースマティクと呼ばれるもので、日中は協会に来るのですが、自分の家に住むことが出来たり、私物を所有することを許されたり、菜食主義者である必要がないなど、こちらは規則はそれほど厳しいものではないです。

ちなみにピタゴラスの信念としては、

最も深いレベルでは現実は本質的に数学的なものである

哲学は精神的な浄化に使用することが出来る

魂は神との結合へと昇華することが出来る

特定のシンボルには神秘的な性質がある

騎士団のすべての兄弟は厳格な忠誠心と秘密を守るべきである

というもので、教団には男性と女性の両方が会員となることができ、女性のうち何人かは有力な哲学者になります。

さらに、ピタゴラスは弟子であったテアノという女性と結婚しています。

ピタゴラスはすべての関係は数の関係に還元できると信じており、数学以外にも音楽の数理理論にも貢献しています。

さらにピタゴラスは病気の人を助ける手段として音楽を使っていました。

紀元前508年頃に、ピタゴラス教団はクロトーン出身の貴族であるサイロンによって攻撃されます。

サイロンは、かつて教団への加入を希望したが門前払いされたため、その腹いせに市民を煽って攻撃を仕掛けたのではないかと言われています。

この事で、ピタゴラスは逃亡したと言われているのですが、その後は殺されたのか、それとも自殺したのか、はたまたクロトーンに戻ったのか、いつ亡くなったのかは色々説があり未だに分かっていません。

ちなみに、亡くなったときの年齢は100歳くらいだったと言われています。


ピタゴラスという科学者

ピタゴラスの人生においては様々な説があり、未だに不明な点も多く謎に包まれています。

さらに、秘密主義のピタゴラス教団をつくり、そこで発見された情報については外に漏らされることがなかったので、誰が発見したのかもよく分かっていません。

しかし、ピタゴラスが作り上げた教団から生まれた様々な業績は、現在の数学史において多大な影響を与えました。

今回は、サモスの賢人と呼ばれ謎に包まれたピタゴラス教団のトップであるピタゴラスについて紹介しました。

この記事で少しでもピタゴラスについて興味を持っていただけると嬉しく思います。

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