佐藤守徳

小説、哲学、仏教、瞑想、官足法、政治、経済、金融など多角的に関心をよせるクリエイター。…

佐藤守徳

小説、哲学、仏教、瞑想、官足法、政治、経済、金融など多角的に関心をよせるクリエイター。 著書多数。ブログ、TW,FBあり。https://twitter.com/satokaminotri 近著に『〈気づき〉へのおどろきを伝える短編集』(理想書店)電子書籍がある

最近の記事

空海『即身成仏義』にみる〈私〉の存在

空海の即身成仏をフト調べてみようと思って、『即身成仏義』を再読というか、読み返してみた。 昔読んだことがあるが、あの当時はまったく理解の範囲ではなかったような気がする。 はじめて、読んだようなものだ。 なぜ、調べてみようとしたのかというと即身という生身のままで、生きたまま成仏できるということに関心があった。(成仏は死ぬ意味ではなく、覚醒者になるという意味です。) むかし、安東更生『日本のミイラ』(毎日新聞)という本が、家にあって、本をよく読むような家ではなかったのだが、誰が

    • 東洋医学の最前線を官足法で読み解く 山本高穂・大野智『東洋医学はなぜ効くのか』

      東洋医学と言っても、中心は鍼灸なのだけれど、NHKの特集番組で紹介されていた鍼灸・漢方薬の最前線ということだ。 山本高穂・大野智『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス2024)をとり上げてみた。この本の副題は「ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム」というもので、近代西洋医学側から見た東洋医学の科学的解明という側面を持っている。その効果の科学的側面ということで、それは科学そのものの展開とともに、脳や遺伝子・免疫などの人体の複雑な仕組みが詳しくわかってき

      • 断片だよ、断片だったんだよ! 頭木弘樹『カフカ断片集』(新潮文庫)

        かつて、「断片小説論」を書いた人間としては、断片に注目してもらえることは大変うれしい。 かつ、頭木弘樹さんは、その処女作においてなんとなく関心を持っていたカフカにあらたな視線を与えてくれた恩人であり、また私がカフカ本を出版するまでに繋がっていった人だつた。 その覚醒させてくれた本というのは、『「逮捕+終り」ー『訴訟』より』(創樹社)という真っ黒い表紙に赤い文字の小さな本だった。私の持っているのは、1999年10月25日2刷だから、25年前になる。 内容は、『訴訟』の第一章

        • イディッシュ文学の夕べ 番外篇

          これは先のブログ「 アンダースロー〈文学カフェ〉でデル・ニステルに再会する 」の続きというか、つづけて考えたことだ。 https://note.com/sodou2021new/n/n76ef7a44a3e3 5月11日に行われた「イディッシュ文学の夕べ 番外篇」のオンライン配信を受けての、直後のAmebaへ投稿した文章から引用してみる。 結論としては、ここで述べていることに集約されるが、要はおよそ100年後の日本という場で生きる私たちにとって、いかなる文学創作上のヒン

        空海『即身成仏義』にみる〈私〉の存在

          目を引くタイトルに驚く。崎谷博征『糖尿病は〝砂糖〟で治す!』

          常識を覆すようなタイトルにひかれてつい手に取ってしまった。 糖尿病では甘いものは厳禁という固定観念にとらわれていたからだった。それを崎谷は覆して見せる。 厳禁じゃなくて、その砂糖で糖尿病を治すのだという。 おいおい、本当かいな? 謂わんとすることは、こうだ。 メインストリームの医学では糖尿病というのは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が慢性的に高い状態が続く状態である。その原因はすい臓のβ細胞から分泌されるインスリンの不足によっておこる。慢性の高血糖状態が続くと毛細血管

          目を引くタイトルに驚く。崎谷博征『糖尿病は〝砂糖〟で治す!』

          川島隆先生のカフカ講義を終えて

          オンラインによる、一年間の講義を終えて、その感想なりを報告したいと思います。 NHKカルチャー梅田教室による京都大学准教授川島隆先生の「カフカ生誕140周年 1年で読む「変身」」の講義が3月31日に終わりました。 年間12回とプレ0回があり、計13回でした。 カフカの情報に関しては、特段目新しいものは無かったのですが、フェリスとの手紙が新訳本になるらしいので読んでみたいと強く思ったことと、最終回の「なぜ〝ハッピーエンド〟なのか」が強く印象にのこりました。また、異論があるな

          川島隆先生のカフカ講義を終えて

          アンダースロー〈文学カフェ〉でデル・ニステルに再会する

          以上が、amebaブログへ投稿した記事です。 もっと、語りたいと書いています。デル・ニステルについては、2019年2月に「イディッシュ文学の夕べ」ではじめて知ったのですが、これはすごい作家だと直観しました。特に『世界イディッシュ短編選』(岩波文庫)の中では、すぐれた作品の中に入るでしょう。 ブログにもあるように、午前中に再読していったのですが、この黙読と講演はやはり違う印象だったということです。黙読のほうが、より〈現在〉が際立っているのです。朗読で聞いていると聞き逃してし

          アンダースロー〈文学カフェ〉でデル・ニステルに再会する

          霊的開眼とは何か あとがき

          なぜか、こんな形で終わるとはおもっていなかったので、意外な結末となった。 未完である。 当初、本にしようと書き出したのだけれど、出版社から出版を断られたことから、ブログのままで、出そうと残り三章を掲載した。ブログではあまりに長すぎるので、不適当なのだけれど、本にしようとした原稿と考えてもらっていい。それでも、これからも探究は続くということだ。 8章はすでにブログで発表したものを転載している。 https://note.com/sodou2021new/n/n6e1b5a91

          霊的開眼とは何か あとがき

          二つのトビをめぐって

          Amebaにブログを書いている。しかし、書ききれていないと思うので、もう一度書き直してみた。まずは、それを再録してみる。 註1 「読書イニシアチブ」は大阪市阿倍野区にある書肆七味内のBOXシェア古書店。 註2 若かりし上野千鶴子が発表した論文「〈外部〉の分節 記紀の神話論理学」『大系 仏教と日本人 神と仏』(1985)所収。 構造人類学の神話論理学を用いての記紀神話の分析という論文だ。 外来王(stranger-king)というのは、マーシャル・サーリンズがとなえた概念で

          二つのトビをめぐって

          霊的開眼とは何か 第9章マイケル・ポランニー『個人的知識』『暗黙知の次元』

          〈私〉というのが、知る存在だとすれば、マイケル・ポランニーの暗黙知はまさに霊的開眼の正体ではないかという視点から考察してみる。 必ずしも〈私〉論からだけでなくてもいいのだけれど、文脈上からは、その方がわかりやすいかもしれない。ただし、言及しているのは霊的開眼であったから、霊的開眼にいかにせまれるかという事が主眼であることにはかわりない。霊的開眼の周辺をめぐることで、なんとかそれがなんであるかを探ろうとして、これまで廻ってきたのであるから、今回も暗黙知を題材にしてみたいというこ

          霊的開眼とは何か 第9章マイケル・ポランニー『個人的知識』『暗黙知の次元』

          クダンって知ってますか? 東雅夫『クダン狩り』(白澤社)

          「件」と書きます。 人面牛身の妖怪だそうです。 危機を予言して死んでしまうそうです。 西日本を中心に伝承されてきたというのですが、寡聞にして知りませんでした。でもこの図柄は見たことがある気がします。 本書は東雅夫がクダンについて、書いた記事とクダンを扱った内田百閒、小松左京の小説作品、そして短い対談よりになっています。 いわゆる妖怪モノですが、東雅夫の姿勢が、幻想文学から怪談文芸という意識にあらわれています。つまり、文学から楽しみとしての文芸という意味です。 そこには現在のア

          クダンって知ってますか? 東雅夫『クダン狩り』(白澤社)

          霊的開眼とは何か 第7章 藤田一照・山下良道・ネルケ無方・永井均『哲学する仏教』後編

          ここまで、永井均の論考に触れながら、霊的開眼とは何かに焦点をあてて巡ってきた。 即、結論を出したいところだが、もうすこし、実際の瞑想のついて、いかに永井均がかかわってきたのかについて、見てみよう。 香山リカとの対話『マインドフルネス最前線』(サンガ新書2015)があるので、それを参照してみたい。 実際に掲載されたがのが2014年の5月『サンガジャパン』だったので、それ以前に対話されたものに違いない。以後どこまで変化したのかを知ることもできないが、実践としての瞑想につ

          霊的開眼とは何か 第7章 藤田一照・山下良道・ネルケ無方・永井均『哲学する仏教』後編

          関裕二『任那・加耶の正体-古代日本外交の蹉跌』 これからの日本外交の参考になる

          これまで、関裕二に関してはブログを一つものにしている。https://note.com/sodou2021new/n/n53a7d29ffe5c これだけではなく、何度か短いものを書いてきたようにおもう。 それぐらい、ファンであって、小説を楽しむように読んできた。 今回は朝鮮半島に在ったとされる任那、または加耶の諸国を扱っている。 西暦562年に新羅によって併呑されて、滅亡するが、それまで関係のよかったヤマト政権が、それを救えなかったという蹉跌を論じている。 日本書紀に

          関裕二『任那・加耶の正体-古代日本外交の蹉跌』 これからの日本外交の参考になる

          2024年、今年はどんな年に。そしてどうする?

          昨年読んだ本のなかで、2023年の予想として出している英国エコノミスト誌の表紙に言及したものがあった。* *岩永憲治『金融暴落!グレートリセットに備えよ』(集英社) 12月号の別冊として出版されたもので、その表紙「THE WORLD AHEAD 2023」を読み解いたのもだった。THE WORLD AHEAD 2023つまり、2023年は「世界をこうする」という意味だと言っていた。 エコノミスト誌の表紙は、一般大衆にむけたメッセージではなく、世界のロイヤルファミリーを含む

          2024年、今年はどんな年に。そしてどうする?

          サンカ呪縛からの解放 筒井功『サンカの真実 三角寛の虚構』(文春新書)

          することがなくて、ふと書棚をみたらサンカの本が並んでいて、その中にこの本があった。買っておいたのに読んでいなかったのだ。 おそらく、出版されてすぐに買っていたと思う。熱心に読んでいた時期があったのだ。 なぜ、読まずに置いておいたのかというと、おそらくこれより少し前に読んでいた利田敏『サンカの末裔を訪ねて』(批評社)の「あとがき」に書いてあった筒井功の記述を読んでいたからではないかと思う。 そこには筒井のことをあまり良くは書いていなくて、サンカにたいして愛情が少ないのではな

          サンカ呪縛からの解放 筒井功『サンカの真実 三角寛の虚構』(文春新書)

          霊的開眼とは何か 第6章 藤田一照・山下良道・ネルケ無方・永井均『哲学する仏教』前編

          仏教3.0は今まさに進行中の運動であって、その総括はなされていないから、どこに落ち着くのか、それとも何でもないものだったのかはわからない。 『〈仏教3.0〉を哲学する』(春秋社)『〈仏教3.0〉を哲学するバージョンⅡ』(春秋社)の二冊が既に出版されていて、その内容は藤田一照・山下良道・永井均、による鼎談であって、それが文字起こしされ収録されている。 これとは別に、内山興正の思索をめぐって一冊が出版されている。それが『哲学する仏教』(株式会社サンガ)だ。これはこの三人に

          霊的開眼とは何か 第6章 藤田一照・山下良道・ネルケ無方・永井均『哲学する仏教』前編