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子どものための相談、親のために立ちはだかるハードルと

この20年間で変わったこと

「お子さんのことで話があります」と連絡が来ます。僕の4人の子どもたちは小学生男児、どちらかというと闊達なタイプな気がします。ときおり、学校の先生からお子さんのことでお話がという連絡がきます。たくさん来る気もしますが、人数を考えると実はそれほど多くないのかもしれません。他のご家庭のことがわからないため、比較しようがありません。

若者や子どもたちを支援する仕事を20年もしていると、何か子どもが困った状況になったとき、その困り方によってどこに相談をしたらよいのか、どのひとに話を聞いたらよいのかがわかってきます。それは僕が子育てをする上で、非常に安心できる知識です。こうしたらうまくいくということはわからなくても、苦しくなったときにどうしたらいいのかを知っているのは、周囲の子育てしている友人・知人から悩みを聞くとき、知らないことによる不安の大きさをとても感じます。

日本で本格的に国が若者支援に乗り出したのは2003年と言われています。具体的には「若者自立・挑戦プラン」が政府によって立ち上げられたときです。そこでさまざまな議論が公式、非公式にあるなかで、ひとつのトピックになったのが「家族を支援するかどうか」です。いまでは考えられないかもしれませんが、若者のための取り組みなのに、どうして家族を支援する、家族の相談に乗る必要があるのかについて、真面目に議論がされていました。

社会的にも、子どものことで保護者が相談に行くと「本人を連れてこないと相談できない」という理由で、相談を断れるという話はいたるところにありました。相談員からすれば、若者本人の状況や状態を何とかしたいと思って来たのに、本人が不在では相談にならないというものでしょう。一方、保護者やご家族からすれば、「子ども(本人)が動けないからこそ、自分たちだけでやれることは何かを聞きに来たのに、門前払いされたらどこに相談したらいいのだ」という気持ちになるのは当たり前のことです。

若者や子どもたちが相談に来られないから、保護者やご家族が相談に来る。それが当たり前でなかった時代は、いまでは遠い過去の話になっています。この20年間で変わったのは、本人が不在であっても、保護者やご家族が相談に来てくれるだけで十分すぎることが一般化され、「保護者相談」や「家族支援」の機能が若者や子どもたち(それ以外の世代を含めて)を支援する公的・民間団体で「前提」になったということです。

それでも孤独を感じ、孤立する親が存在する

これまで子どもの将来相談窓口「結(ゆい)」を通じて、たくさんの保護者の相談を受けてきました。コロナ禍以前からオンライン相談を併設していましたが、コロナ禍以降は、多くのひとがオンラインを通じて会話をすることのハードルが下がったこともあり、日本のみならず、海外在住の方々からのご相談も増えています。これまでの若者と「働く」だけではなく、小学生・中学生の不登校や、40代以上のお子さんのご相談、高校や大学中退についてなど、保護者の相談幅が広がっています。おそらく、悩みが増えたというよりも、専門家に「相談をする」ハードルが下がったことが一因だと考えています。


それでもなお、我が子のことで心を痛めている保護者、ご家族の数からすれば、家族相談をされる方々はほんの一部でしかないでしょう。家族相談が当たり前の社会になってもなお、孤独を感じ、孤立する親が存在します。

普段からご家族の相談を受けている専門家、支援者の方々からすれば当たり前のことかもしれませんが、いくつか相談への躊躇、迷いが保護者にはあると考えます。

●そもそも相談することは難易度が高い

よく「お気軽にご相談ください」というフレーズを見かけます。あまり考え過ぎずに相談してほしい気持ちを表現した言葉である一方、相談者からすれば「相談することの難易度」の高さを越えていかなければなりません。僕は相談を三つの段階に分けて考えています。ひとつは、困っていることを整理する段階。子育ての悩みが何か単一の理由によるものであれば整理する必要はありませんが、実際には複数の要因が複雑に絡まっていることがあります。一方、ここが整理されなければ、相談をしようとするところまでたどり着くことができません。

二つ目に、言語化のハードルがあります。私たちは言葉を使ってコミュニケーションを取ることが多いです。そうなれば、困っていること、悩んでいること、問題だと考えていることを、言語化する必要があります。物事を整理することができても、それを相手に伝わるように言葉に落とし込むことは、なかなか難しいものです。しかも、過去に相談したときに、相手がなかなか理解できなかったという経験があると、「言葉にしても伝わらない」と思いがちです。

最後は、適切な相談者・相談機関を選択することです。体調が悪ければ病院や薬局に行きますが、複数の複雑な問題に対しては、それぞれどこに、どの順番で相談したらよいか自信をもって決定することは簡単ではありません。「まずはご相談を」と思われるかもしれませんが、相談者からすれば、まず相談する先はどこがよいのだろうかということになります。相談するということはとても難しいものです。

●誰にも知られたくない

いまの状況では、自分が誰かに相談していることを子どもに知られたくないということはあるかと思います。また、夫婦関係によってはパートナーにも知られずに、誰かに相談したいということもあるでしょう。また、地域によっては相談内容がということはないと思いますが、相談しているという事実が知人や友人に知られてしまうリスクが高いと、相談者ご自身が考えていることがあります。そのため、地元や近場を避けて、遠方に相談に行く方もいらっしゃいます。ただ、時間がかかることで、やはりどこに何しに行っているのかという、知られてしまうかもしれないリスクを背負う可能性があります。

そのようなニーズを拾ったのがオンラインであると思いますが、自宅にパソコンが一台しかない。リビングに置いてあるというだけだと、ひとりの時間を確保できるとは限りません。コロナ禍以降で相談がしやすくなったのは、スマホからでも(見づらいかもしれませんが)相談できるなどの要因は小さくないと考えます。それならオンラインで相談すればよいとなりがちですが、自分の大切な子どものことを、専門家とは言え、安易に話したくはないという心情もあるため、オンラインがすべてを解決するわけでもないというのは小さくないハードルです。

●楽になりたいのではなく、解決したい

専門家からすれば、保護者やご家族が一時的にでも気持ちが楽になることで、少しずつ家族関係も変わっていくケースがあることを知っています。そのため時間をかけてゆっくりとやっていくというのはとても自然です。しかし、保護者やご家族の気持ちとしては、「自分が楽になりたくて相談しているわけではない」「子どもの問題を解決したいので策がほしい」というのも本音かと思います。いきなり解決方法を提示できるようなものの方が少ないかもしれませんが、相談者に取ってみれば、そのために相談に来たというところがあるはずです。やはり、小さくとも何か一歩踏み出せたという実感が持てるような提案、解決への具体的な一歩となる助言も必要となります(当然、すべてのケースがそうということではありません)。

●経済的に苦しい

民間は有料が前提ですが、公共機関における相談無料が保護者やご家族の経済的負担をゼロにしているとは限りません。育て上げネットの家族支援は有料ですが、助成金や寄付を活用して無料枠を作ります。有料の相談が「無料になる」ことと、もともと無料であることは一件同じようですが、どちらも持っている法人として、相談者側にはさまざまな心情があることが見えています。無料だからよいという心情と、有料のものが無料になるならというのは、相談の本質ではありませんが、どちらにせよ「相談をしてみよう」というハードルが下がるのであれば、どちらも選択できる環境が大切です。

また、相談することが無料であっても、例えば、物理的な移動にかかる費用や、オンラインならデータ総量が気になるひともいます。経済的に苦しいひともいるから相談を無料にしたら、相談に来れるというわけでもないのが、とても難しい部分です。

悩みを抱え、不安の最中にある若者や子どもたちを支えようとする家族を支えください


育て上げネットでは、悩みを抱え、不安の最中にある若者や子どもたちを支えようとする「家族を支える」を、ご支援くださる寄付者を募ることを決めました。文字にすると、誰を応援するものなのかがわかりづらいと思います。しかし、困っている若者、子どもたちを支えるには、彼ら・彼女らとつながる必要があります。この「つながり」の可能性を高く持っているのが、子どもたちの最も身近な支援者になろうとしているご家族です。

私たちの相談支援は有料ですが、移動費用を含めて経済的に相談をする、相談を継続することが難しいご家族がいます。このようなご家族との関係が切れてしまうことで、私たちは同時に若者や子どもたちとつながれる可能性が途絶えてしまいます。子どもの将来窓口「結(ゆい)」は、ご家族に「もうひとりで抱えさせない」ことを大切に、経済的に苦しかったり、ひとり親世帯の保護者の子育て負担を軽減していきます。

3人に1人は誰にも相談していない、相談ができない保護者を、親が楽になり、子どもも楽になっていくための不安解消を、解決思考で取り組みます。ぜひ、ご支援をよろしくお願いいたします。

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問題解決型の保護者相談を経済困窮・ひとり親世帯にも支援を届けたい

理事長 工藤 啓

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