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6割の若者がメンタル悪化?コロナ禍の社会不安が若者に及ぼした影響を調査しました

「何もかもうまくいかない。」
「メンタルが落ち込んでいて、興味関心が減って楽しいと思えなくなった。」
「仕事不安で死にたくなる。」

これらは、この度のコロナ禍で、仕事を失ったり、仕事探しが止まったり、働いていても様々なストレスを受けている若者の声です。

◾️若者にコロナの影響のアンケートを実施

育て上げネットリサーチ(2020年度調査)より

育て上げネットでは、2020年3月のコロナの感染拡大に伴い、オンライン支援や感染対策の徹底を急速に進めてきました。

これまで若者との関わりは対面が当たり前でした。相談の際には面談室で向かい合って話す、職業訓練の際には講師や参加者が一堂に会する、合間には雑談などでコミュニケーションを図る、それらは全て対面、オフラインを前提に行ってきました。

それが、オンライン面談、遠隔訓練、チャットでの雑談など、一足飛びにオンライン化することになりました。

若者にとっては、外出制限など雇用環境の変化に加え、就職活動や職業訓練などの職業的自立を目指す歩みにも大きな変化が生じました。

そこで私たちは、2020年7月にアンケートを実施しました。
私たちの支援を利用している現在無業の若者と、過去に支援を利用した現在仕事に就いている若者に対して、新型コロナウイルスによる仕事や生活への影響、オンライン活用にあたっての通信・機器・生活環境、多様な働き方への興味・関心などを聞きました。

アンケートに協力してくれた若者の属性はの上部の図の通りです。
年齢は概ね20‐30代が中心で、大半が両親などの家族と同居しています。
アンケート結果を紹介しながら、若者のコロナ禍における、メンタルヘルスについて考えていきます。

◾️「コロナうつ」は世界でも問題に

新型コロナウイルスの感染拡大が甚大な国・地域では、人々への精神的な影響も報じられています。アメリカでは、2020年4月から6月の3か月間に、不安障害やうつ病など、なんらかの精神衛生上の問題を訴えた人は40.9%にのぼり、過去30日間に自殺を考えたと回答した人も10.7%いたことが明らかになっています(CDC, Mental Health, Substance Use, and Suicidal Ideation During the COVID-19 Pandemic)。
日本でも、実態を把握するため、厚生労働省が調査をしています。
(新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査の結果概要)

コロナ禍で、特に若者が受けた環境の変化にはどんなものがあるでしょうか?

【学生】
・休校による学業の遅れ、交友関係の変化、イベントの中止
・アルバイトの休業、収入減
・進学や就職に向けた進路指導やイベントの中止
・授業・就活のオンライン化

【仕事についていない若者】
・雇用情勢の悪化、労働市場の変化
・ハローワーク等の体制縮小、オンライン化
・家族の在宅勤務化や外出自粛による家族関係の変化

【仕事についている若者】
・解雇・雇止め・退職・休業・シフト削減や収入減
・特にエッセンシャルワークにおける感染対策や仕事負荷の増加
・在宅勤務化などの働き方の変化

これらの変化は若者だけに限ったものではありませんが、これからの長い人生を前に、先が全く見えなくなるほどの急激な変化によって、将来を悲観し、メンタルヘルスにも影響が出ている若者もいます。

◾️6割の若者がメンタルヘルス悪化

先に紹介したアンケート結果では、約6割もの若者(仕事についてない若者とついている若者両方を含む)が、コロナ前と比べて自身のメンタルヘルスの状況は悪化している、と回答していました。

(その他の自由回答)
【無業者】
・1人になりたいと思う事が多くなった。
・ストレスのせいか、不眠や体調不良になり、精神的にも気が塞がる感じがしました。
・引きこもっていると内省的になりがちで、学生時代や会社でのことを思い出し、攻撃的な感情が湧き上がる。
・ダメ人間は死ぬしかないのか。
・不眠や悩みが1日中、頭の中から離れなかったりしてつらかった。
・家庭でゆっくり過ごす時間が増え、家庭菜園や資格勉強など自分にかかる時間で充実している。
・焦りがなくなった。自粛で引きこもるのに適応していった。

【有業者】
・周りが自粛ムードの中で出勤することにストレス。また、仕事柄余計忙しくなった。
・自宅待機が多くなったので部屋にこもるため、ストレスがたまりました。
孤独感が増した。
・コロナに感染するリスクもありどうしたらいいかわからずストレスを感じ、イライラすることが多くなった。
・仕事をする日は1日マスクをしていなければならない状態がとても煩わしく感じる。
・通勤がなくなったので毎日の負担がなくなった。
・新しく挑戦や思い込み・考え方が変わって、楽しく思える事や割り切れるようになった。

アンケートの自由回答を見ると、特に無業であることに対して自己否定的に悩みを抱え込んでしまう様子が見られ、緊急性が高いと思われる状況です。(そのためオンラインの支援でつながり続けたり、感染対策をとった上で対面の場を作ったりしています)
中には、在宅勤務化でストレスが軽減したり、この状況を前向きに捉えて新しい挑戦をしたり、外に出て人と交われという有形無形の社会的圧力が無くなったことにより、気分が軽くなった人もいたようです。

これらのメンタル悪化の背景には、就活・仕事への影響、雇用情勢の悪化だけでなく、家族関係の変化もあると思われます。

アンケートでは家族や友人との接点の変化についても聞いています。

(その他自由回答)
・自粛が長引くにつれて互いに感情的になることが増えたように思います。
家にいる時間がお互いに多くなり揉めることが多くなったし、個人のプライベートの確保が難しくなった。
・家族の中で、コロナに対する考えが違う。
・緊急事態宣言前は就活に対してなにも言われなかったが、宣言後は活動が減り、ちゃんと就活をしてるのか、働く気があるのかなど、聞かれるようになった。
・父親と一緒にいる日が多くなり自分が家に居づらい。

誰が悪いというわけではなく、外出自粛・在宅勤務等により家族関係の密度が上がるなどにより家族関係の変化が起こっていて、それに上手く対応できていないケースが見られます。
国立成育医療研究センターの「コロナ×こども本部」による「コロナ×こどもアンケート第2回調査 報告書」では17歳以下の子どもとその保護者が抱えるストレスについて詳しいので、そちらも是非ご覧になってください。

メンタルヘルスの問題は、就活や仕事の影響、家計への打撃の影響も大きくあり、相談支援だけで解消するような問題ではありません。それらの厳しい現実、さらに言えばコロナ前からそこに存在していた問題一つ一つに地道に対処していくことも非常に重要です。

(執筆:育て上げリサーチチーム)


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本記事は2020年10月に「育て上げリサーチ」に掲載したものに加筆・修正を加えたものです。
元の記事はこちら:https://www.sodateage.net/researches/961/

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