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【背景】 なぜ東大卒業生へインタビューをしようと思ったのか

初めての挫折で自分に自信が持てなくなった

「自分なら社会に出てもそれなりにうまくやっていけるだろう」と、根拠のない自信を胸に社会に出て約3年。ある朝、起きられなくなりました。

体が重くて動かない。布団から出られない。出たくない。
会社に行かなくてはいけない、そう強く思うのに体が動いてくれない…。

最初の数日は、遅刻しながらもなんとか出勤しました。だけどある日、まったく会社に行けなくなったのです。上司に連絡し、ひとまず1週間の休みをもらうことに。でも1週間休んだ後も、状態は良くなるどころか会社に行くのがますます怖くなっていました。結局、4ヶ月の休職を経て、そのまま、当時付き合っていた彼との結婚を理由にして退職したのでした。

逃げるように会社を辞めてしまった経験は、私からすっかり自信を奪いました。「なんで頑張れなかったのだろう」と、会社に行けなくなった自分が惨めで、恥ずかしくて、情けない。同時に、社会に貢献できていない自分が猛烈に悔しくもありました。

というのも、私が東大を目指したのは環境問題を解決し、社会に貢献したかったから。私がそのように考えるようになったのは、真面目で正義感の強い母や祖父、そして「私たちが今後の社会を担い、社会問題を解決する人財として活躍するんだ」という高校時代の友人たちの影響があったように思います。

砂漠緑化に興味があった私は、将来、環境問題に取り組むようなことができればと考えていました。環境問題は政治や技術、国際関係、経済、教育といった複合的な要素をはらんでいます。これを解決するには幅広い知識を身につける必要があると思い、恩師の勧めもあって教育・研究・人的レベルが最も高いとされる東大を志望したのでした。

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入学してから最初の2年は教養学部で幅広い学問を学び、3年次に農学部へ進学。環境問題や食糧問題といった世界的な課題について多方面からアプローチする国際開発農学を専攻し、環境問題を研究するサークルにも参加。中学、高校と続けていた卓球のサークルにも所属し、4年間の大学生活はとても充実したものになりました。

ここまでの私の人生は順調でした。だから「自分は社会に出てもうまくやっていける」と何の疑いもなく思っていました。もともと真面目だし、人とのコミュニケーションも苦ではないタイプ。努力して第一志望の東大にだって入れた。きっと仕事もうまくできる。私なりの働き方で社会に貢献することができるはずだ、と。

そう意気揚々と就職したにもかかわらず、現実は理想通りにはいきませんでした。私が望むことと実際に求められる役割には大きなギャップがありました。加えて膨大な業務量、苦手な業務内容、難しい人間関係…。「自分で全部やらなきゃ」「もっと成長しなきゃ」と思うあまり「できない」「助けてください」と言えず、心身ともに追い詰められ、逃げるように退職したのでした。

子育てにも自信が持てない

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退職し結婚してほどなく、長男を出産。専業主婦としての子育てがスタートです。忙しく働く夫に代わって家事や子育てを担っているとはいえ、自分の稼ぎから税金を納めているわけではありません。自分が社会に貢献できている実感がまったくない。この感覚は、会社を辞めたことで気落ちしている私から、さらに自信を奪っていきました。

SNSを覗けば、同級生たちがキラキラと活躍している様子が目に飛び込んできます。出産してからも社会の第一線で働いている友人もいます。それに比べて、私は……。悲しさと悔しさ、焦燥感が混じった、なんとも言えない気持ちでした。

その一方で子育ては待ったなし。初めての子育てでもありわからないことばかりです。転勤族の夫に帯同したため、土地勘のまったくない場所での生活。近くに頼れる親族はいませんし、友人、知人もいません。児童館や子育て支援センターに足を運び、家を行き来するような間柄のママ友ができ始めたところで、次の転勤が決まりました。せっかく築いた人間関係がリセットされ、とにかく孤独でした。

こんな状態だったので、子育てについてわからないことがあれば人に相談するのではなくすぐにネットで検索。子どもの能力を引き出すのは親の役目だと考えているので、知育や幼児教育についてもネットでたくさんたくさん調べました。しかしあるサイトではAと言っていたことが別のサイトではBと言っていることも日常茶飯事。情報量も多すぎて一体どれが正解なのかわかりません。

いくら検索してもキリがなく、「コレが正しいかも」とさっきまで思っていたのに次の記事を読めば今度はこっちが正解のような気もしてきます。何が本当の正解かわからない。何をしても「これで大丈夫」とは思えない。とにかく不安で不安で、あれこれも調べて、試しての繰り返しでした。

子育ての軸を確立させながら、社会貢献したい

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もちろんこんな自分の心の状態は決して心地よいものではありません。

どうして私はこんなにも情報に振り回されてしまうのだろう。なぜ「これで大丈夫」と思えないのだろうか…。

そう考えて、ふと自分には子育ての「軸」がないのだと気づきました。学歴、職業など何らかで優れた結果を出しているお子さんを育てた人のブログや本を見ると、どの人も独自の子育てのルール、つまり「軸」があります。私にはそれがなかったのです。

そこで、自分なりの子育ての軸を定めるための方法として「育ち方プロジェクト」を思いつきました。社会で活躍している同級生たちの育ち方を探ることで、子育ての軸を作るヒントが得られるかもしれないと思ったのです。

このプロジェクトを始動させるにあたって、ママ友で、ライターをしている村上杏菜さんに相談をしました。

私が思っていること、やりたいと思っていることを彼女に共有していたら「このプロジェクトが実現したら、あやちゃんのやりたかった社会貢献ができるね」と言われ、自分がこんなにも強く社会で自分の力を発揮したい、社会を良くする一助になりたいと願っていることを改めて確認しました。

同時に、私の子育てに対する不安は、退職をきっかけに自信を失ったことが大きく影響しているのだろうとも自覚しています。

私が子どもたちに望んでいたのは「私と同じような失敗をせず、社会に貢献できる立派な人間に育つこと」。でも私と息子は違う人間。同じ失敗をするとは限らないし、失敗したって息子はきっと自分の力で再起するはず……そう無条件に思えないのは、きっと私が自分の過去の挫折を受け入れられていないこと、つまり自分の弱さや不完全さを心から認めることができていないからなのでしょう。

そう考えると、この「育ち方PJ」は、活動を通して私が自信を回復し、私なりの子育ての「軸」を作っていく過程そのものなのかもしれません。

そしてこのプロジェクトを公開することで、似たような悩みを抱えている他のお母さんやお父さんの役に立てたら嬉しいなという淡い気持ちもあります。インタビュー対象者に私が聞きたいことを聞いて一人で納得するのではなく、記事という客観的な形で発信することで「子育て」「知育」「東大」「人格形成」などに興味がある人の役に立てるのではないか、と期待しています。

「育ち方」をキーワードに面白い発信を

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プロジェクトのコンセプトや発信内容を固めていくにあたっては、より多くの人たちに興味を持ってもらえるよう、取材対象者の選定を私のみに限定しないことにしました。

杏菜さんやプロジェクトのフェイスブックグループに参加してくれている協力者の方たち、あるいは公募など、色んな人の”気になる人”とその養育者に話を聞いていくことで、記事の内容に多様性が生まれるのに加え、より多くの人たちにメリットを提供できると考えています。

プロジェクトの継続のため、せめて活動費がペイできるよう何らかの形で将来的にマネタイズしたいと考えていますが、現状は個人の活動として収益は発生させていません。それよりは、文字コンテンツだけでなく動画コンテンツも併用したり、関連する他のプロジェクトの人たちとコラボしたりと、「育ち方」をキーワードに面白い発信ができたらいいなと考えています。

自分たちの「知りたい」「楽しい」という思いを大事にしながら、読者のみなさんの役にも立つコンテンツを発信していくつもりです。

よかったらぜひ応援してください。

プロジェクトの概要はこちら↓

プロジェクトメンバー

福富彩子
1988年生まれ。東京大学農学部卒。東京都在住。教育関連企業に3年間勤務後、当時石川県にいた夫との結婚のため退職し専業主婦になる。プログラミングとwebマーケティングを学び、現在は都内の会社でwebサイトの開発やアクセス解析に携わる。地元やオンラインで子育て支援活動に関わり、ママ向けオンラインイベントの開催は50回以上。2歳男児、4歳男児の二児の母。「これ」という子育ての軸がなく教育迷子になっている。

村上杏菜

1984年生まれ。都留文科大学文学部卒。東京都在住。インタビュアー、ライター。経営者、起業家、学生、アスリート、研究者、子育てママ、美容家、経済評論家、エンジニア、僧侶、映画監督、恋愛カウンセラー、医師、メンタルコーチなど幅広いジャンルでのべ500人以上へのインタビュー経験がある。1歳女児、5歳男児の二児の母。子育てのテーマは「親が人生を楽しむ姿勢を見せること」。高校教員免許あり(国語)。HPはこちら

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