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9/19開催レポート「防災と自治 人とまちをつなぐ”関わりしろ”を考える」

毎月第3木曜日に、地域課題や、課題だと思う種を持ち寄り、課題解決へ向けた連携が生まれる場として開催しているセッション。
今回のテーマは、「防災と自治 人とまちをつなぐ”関わりしろ”を考える」

太白区長町を拠点に地域交流イベントや市民大学などを企画する一般社団法人ながまちマチキチ代表の加藤隆さんに、多様なセクター同士をつなぎ方や、転入者を含む地域住民や地域外の人たちが、主体的にまちに関わる仕組みづくりについて伺い、一人ひとりがまちの問題解決に取り組む社会づくりについて考えました。

当日会場でお話をしている加藤さん(写真右前)

加藤隆さん(一般社団法人ながまちマチキチ代表)
仙台市出身。大学卒業後、1991年ゼビオ株式会社に入社。
2013年に仙台長町副都心のゼビオアリーナ仙台に配属となり、地域連携事業「長町秋のフェスティバル」の企画・運営を通じて地域に関わる。
2019年に同社を退職し、2021年4月に長町エリアの活性化を目的とした一般社団法人ながまちマチキチを設立。


1.長町のまちの構成と変遷について

長町は、JR長町駅を中心に半径2km圏内に39,536世帯、79,092人が住む地区(2023年4月時点)であり、長町、長町南、あすと長町の3つのエリアが共存している地域です。
長町には、一丁目商店街、サンカトゥール商店街、駅前商店街の3つの商店街からなる連合の「長町商店街」があり、250の事業所が入っています。

<長町の3つのエリアについて>
●長町

昭和からある旧国道4号線を中心とし、商店街や交通拠点や史跡がある。
長町南
平成になって仙台市が政令指定都市に指定された後に開発され、ショッピングモールやマンションが建ち、2000年前後に発展した。
あすと長町
旧JR貨物操車場跡に新しく開発され、高層マンションや市立病院、大型商業施設があり、2010年以降に発展した。

かつての長町は、人流の拠点、物流の拠点、交通の拠点として、人が集まっていたため、商店街が形成されていました。
商店街は地域コミュニティの核であり、生活の安全・安心を守る場であり、地域活動の担い手でした。

<かつての長町は・・・>
●人流の拠点
奥州街道と笹谷街道の交差する地点
●物流の拠点
青果市場(1892年)、貨物操車場(1925年)があった
●交通の拠点
一般鉄道(1896年)や秋保電鉄(1914年)、路面電車(1936年)があった

しかし、青果市場の移転(1963年)や貨物操車場の閉鎖(1984年)、秋保電鉄の廃止(1961年)や路面電車の廃止(1976年)に伴い、商店街だけが残り、商店街の役割も人を集めることに変化していきました。

2.まちの課題について

長町は、住民や来街者も増えて、イベントも多く、団体活動も活発です。
商店街や大型商業施設もあり、フリーペーパーなども充実していて、一見すると地域としてヒト・モノ・カネ・情報が充実しているように見えます。
しかし、コミュニティの希薄化やイベントも単発のものが多いため、点が多数存在していて連携や連動性が少ないのが課題です。

点と点をつなぎ合わせて面をつくることで、展開も広がりコミュニティの形成も促進されていきますが、自然に面ができるわけではなく、そこにはつなぎ役や仕掛けが必要となってきます。
そのつなぎ役や仕掛けづくりを、ながまちマチキチが行っています。

3.ながまちマチキチ(事例紹介)

近年続いた長町地域での開発も終盤を迎えて、本格的にまちづくり事業を展開すべき時期に入ってきました。

そこで、今まで培ってきた「長町地区の文化」と「新しく生まれる文化」を融合させて、「地域文化の継承・育成・発掘・発展」を進めるために、今後のまちづくりの基盤となるプラットフォームをつくろうと、2021年4月にながまちマチキチ(以下、マチキチ)を設立しました。

<マチキチの名前に込めた想い>
●まち+基地=まちのプラットフォーム
●まち+吉=何かよいことが起きる場所
●マッチ(マッチング)基地=つながれる場所

マチキチは少人数で運営していますが、商店街連合会や地域支援団体、学校、行政など多くの団体とつながって活動しています。

まずは住民が安全・安心に暮らせる環境を基盤とし、ヒト・モノ・カネ・情報の動きが活発に動き、賑わいが生まれることを目的としたまちづくりを考えて活動しています。

具体的な活動例をいくつかご紹介します。
これまでのプロジェクトはこちらからご覧いただけます。

①ナガマチトレジャーウォーク

長町エリアで、謎解きをしながら、親子でまち歩きをするチーム対抗型イベントを行っています。
まち歩きする中で、親子の会話が生まれ、普段は親が通らない通学路を親子で通ることで危険な箇所の再発見につながったという声もアンケートで寄せられました。

②ながまち・みんなのぽけっと大学(通称ぽけ大)

大学のゼミのようなもので、地域活動などのやりたいことを出し合い、仲間を募って活動する場です。
現在、20~50代までの幅広い世代の24名が参加しています。

ぽけ大から波及して、学生の参加も募りたいとのことで、今年から、マチキチユースサポーターズ(略称MYSマイズ)を立ち上げました。
月1回のペースで食事会を開催し、マチキチが企画する各イベントへ参加するなど大学生の活躍の場を創出しています。(現在13名の大学生が登録)

③たこっこ市

蛸薬師如来堂の境内で地域交流機会の場を設けています。
高齢の方が凧やコマやけん玉など昔ながらのおもちゃで子どもたちと遊ぶ場をつくっています。来年からは毎月開催しようと考えています。

④SABORI-BA GISUKE

もともと、飲み屋として営業していた場所をリノベーションして「大人が堂々とポジティブにサボれる場所を作ろう。それが次への活力になる」というコンセプトで2023年9月から始めたコミュニティスポットです。
現在は、平日の午前中は「ママの居場所」として地域団体にスペースを貸しています。今後は、飲食店のチャレンジショップとしても活用予定です。

このようにマチキチは、地域の点と点が縦と横につながることで顔の見える関係性をつくり、地域を活性化するために色んなイベントを行っています。
まちが多様につながることで防災につながればと願っています。

⑤あすと長町中央公園でおそとde読書(次回は10/5にあります)

大人も子どもも楽しめる、本をコンテンツとしたイベントで、読書ブースやコーヒーの販売などあります。

次回は、10月5日(土)10時~15時@あすと長町中央公園で開催されます。


4.話題提供を受けてのセッション

話題提供を受けて、3つのトピックについて、加藤さんに質問させていただきました。

①まちの関係者を増やして育てる“関わりしろ”のつくりかた

まちづくりに興味がない人も参加できるイベントを多く企画していますが、
主にターゲットにしている層はありますか?
また、ターゲット層を巻き込むために、工夫していることはありますか?

地域活動をしたい人は既に何か動いているため、私たちは「一歩踏み出せない人たち」にアプローチするようにしています。
一歩踏み出せない人たちは、毎回は参加できない、一日中は参加できないなど、地域活動に参加はしたいけれど、参加に制約がある人が多くいるため、できるだけ参加のハードルを下げて、100%の参加を求めないようにしています。

まちづくりにとって30~40代は、核となる世代ですが、その世代は責任のある仕事をしていたり、子育てをしていたり、忙しい方も多いです。
その人たちに「100%参加してください」というのは、ミッションを与えることになり、嫌がられます。
できるだけゆるく参加できるように配慮しています。

半年ぶりにまた参加した時に「久しぶり」と言ってあげられる関係性が大事で、ゆるい関係の集まりでも、母数の人数を増やすことが大事だと考えています。10人声をかけて10人手を挙げることを目指すのではなく、10人中1人でも手を挙げてくれたらラッキーと思って活動しています。

一歩踏み出せない人たちに刺激を与えると何人かは手を挙げてくれるため、その母数を増やすことが最も大事です。その一歩踏み出せない人たちにまちづくりに関心を持ってもらうためには、ある程度根気も必要で、イベントも各種多様なものを数多く用意する必要があります。

②共助の輪をつくる、つなぐ

マチキチの企画する各イベントが、商店街や学校、大型店や企業などいろいろなセクターが力を発揮する場になり、つながる場になっていると思います。どのようにセクター同士をつないでいますか?

地域と企業が関わろうとすると、地域側は大企業に声を掛けづらい、企業側も地域とどのように接点を持っていいのか分からない、と規模が大きくなればなるほど関わり方が分からなくなる傾向にあります。

その解決策にヒントをもらったのが、ある高校の先生からの「中学校の先生と接点がない」という声でした。
同じ地域の教育について話ができるように、小学校から大学までの先生を集めてつながりづくりをサポートしました。みなさん、つながりを求めていたけれど、つなぎ役がいなかったのです。

地域と企業をつなぐ時も同様に、つなぎ役が必要なのだと思います。

参加者から
商店街で、高校の生徒の絵を商店街で飾ったり、中学校の生徒がお店を取材して動画を撮ってCMを作るという取り組みをするなど、学校と商店街とをつなげています。

③まちに関わる人、多様な共助の輪が増えることと防災の関係

まちづくりに関わる人を増やす活動と防災の活動はつながりますか?

災害は防ぎようがないため、災害が起きた際に何ができるかだと思います。
日頃から顔が見える関係をつくることで、誰が何が得意かを把握できていると、災害時に誰に頼ればいいのかが分かり、すぐに動けます。
最初から防災に活かすためと思って活動するのではなく、誰でも気軽に参加しやすいライトなイベントを数多く企画することで次第に顔が見える関係性をつくれるのだと思います。

5.質疑応答

多くのイベントを実施されていますが、予算はどうしていますか?

極力お金をかけずにできるイベントを行っています。
お金をかければ、大きなことはいくらでもできると思いますが、小さい規模のイベントを数多く行って、面でつながることを目指しています。
トレジャーウォークは、1年目は参加費無料で実施し、2年目は参加費を500円に設定しましたが、参加者は減りませんでした。
参加費を設けることで参加者が減るのではと心配しましたが、逆に参加費を設けたことでより良いイベントが提供できるようになりました。

30~40代の男性の参加者を増やすためにその層向けにコンテンツを設けていますか?
マルシェでお父さんでも参加しやすいように「ゴルフが上達できるブース」などがあればもっと参加しやすくなると思います。


30~40代の男性の参加者向けのコンテンツはまだないため、ゴルフのアイデアはとても良いため使わせてもらいたいです。
現在、考えている企画は、テント張りや火おこしなど防災にも使えるキャンプのイベントで、30~40代の男性を呼ぶのにいいのではと考えています。

町内会や行政との連携はどうしていますか?

町内会と積極的に関わることはまだしていないですが、少しずつ関わろうとしているところです。
行政との連携は仙台市と密に連絡を取り合っています。
SABORI-BA GISUKEにも行政職員の人も来ます。SABORI-BA GISUKEには、イベントがなくても、ちょっと休める場として、食事をしながらいろいろな相談や地域の困っている声を吸収する場になっていると思います。

自分たちもイベントを行っていますが、なかなか認知が進みません。
どのようにイベントに人を集めていますか?


いつもイベントを考える際に自分たちのイベントの受け皿はどこにあるかを考えて企画しています。
不特定多数を一気に呼ぼうとすると集客に苦労するため、対象を絞って集客した方が良いです。最初は参加者が10人でも、次は20人、その次は30人というようにイベントも成長していきます。最初から100人集めようとするのではなく、10人を100人に育てる方がイベントは組み立てやすいと思います。

若い人を集客したければ、若い人向けに特化したイベントを企画しなければ集まりません。対象を若い人からシニア層まで広げてしまうと集まらないと思います。
若い人を集めている団体と連携して、イベントをマッチングするとお互いの交流が生まれるかもしれません。
ひとつのイベントで幅広く呼ぶことは難しいと思います。

団地に住んでいますが、半数が入れ替わるため、新しい住民との接点がないことが課題です。
顔が見える関係性が防災にもつながると思っているため、すれ違う時でも必ずあいさつをするようにしています。
まずはあいさつでつながりをつくっています。


まちあるきイベントでも、顔見知りではなくても、参加者は必ずあいさつをするように呼びかけています。
あとは最近流行っているオープンチャットを使って、「今ここにいる」「ここのお店美味しかった」など情報交換ができる場をつくっています。
無理してつながろうとすると弊害も反発も起きます。特に町内会は商店街よりデリケートなところがあると思います。

長町以外に住んでいる外部の人でも企画に参加できますか?

長町の住民に限定していないです。
外部の人もイベントに参加しています。長町の住民でない人は、新鮮な目線でイベントに参加してもらえるので大歓迎です。

どこからイベントのアイデアは湧くのですか?

イベントを考えようとするのではなく、会話の中から、キーワードを拾って、「こんなことに困っている人がいる」「これをやったら喜ぶ人がいるかな」などのアイデアをあたためています。
あたためていたアイデアがふくらんで、どことつなげるとカタチになるなどが見える時があるのでそこから企画にしていきます。
マチキチでは「妄想」ではなく「望創」と呼んで、望むものを創ることをしています。ただ考えるだけではなく創っていく過程を大事にしています。


次回のセッションは10月17日(木)19時~20時半
テーマは「防災と自治 八木山の教訓から もしも と いつも の関係づくりを考える」です。
詳細はこちらをご覧ください。

みなさまのご参加お待ちしております!

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