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20240304「深水」

雪が溶けて
雨樋を抜け
地面を穿つ
一滴一滴をもって
少しだけ変化を与える
跳ね返ったしぶきまでも
その辺りに影響して
雰囲気を変えている
垂れた後をなぞって
湿しを打って
わたしたちを流れる
その存在を
水という
そう聞いたのは
いつだったのだろう
憶えてないくらいに
わたしを通り
あなたを通し
道を開ける

零れるそれを
手にとって
少しだけ飲み込む
喉もとを通って
駆け巡るどこかで
しばらく留まるのだろう
通った道を何回か進み
しばらくすると
もうさっきまでのことまでも
憶えきれないくらいに
当然としてしまう
せめてもの緩衝を和らげ
救いのそれを
受け入れる
代わりに窪みで掬って
一椀を充たす
飲み干したら
もう一度汲みに行こう
どれだけ遠くてもいい

流れる通りに
下りに降って
雨音を聞いている
どれもが静か
それでいて
じっとしていられないから
耳を澄ましている
塞がれた堰に
滲みが染み込み
現れる濾過された深水
ぶつかりで磨かれ
鍛えられたそれらを
見逃すように
振り向けば
もう遠くへ
前を向けば
もうその瞬間までも
通り過ぎ
霞の中を更に進む

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