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講演会:絵本作家シドニー・スミスの絵本表現

美しい光と影を描き出す シドニー・スミスの絵本表現
~『ぼくは川のように話す』を通して作者が語る~



講演の概要

9/18 JBBY国際アンデルセン賞と世界の子どもの本講座「美しい光と影を描き出すシドニー・スミスの絵本表現」オンライン&対面 | JBBY

2023年9月18日 日本児童図書評議会(JBBY)主催
講師:シドニー・スミスさん
通訳:前沢明枝さん 聞き手:広松健児さん(偕成社)
協力:板橋区立美術館・偕成社

絵本作家シドニー・スミスさんが来日。ハイブリット開催で、私は札幌からオンラインで参加。オンラインだけでも200名もの方が参加していました。
世界の絵本賞をたくさん受賞されていますが、今回は『ぼくは川のように話す』1冊に注目した講演会。
他の絵本の話も聞きたい気もしましたが、講演終了後は、1冊に注目したからこその非常に深いお話を聞けたと感じた。最後にこの絵本を翻訳した原田勝さんもサプライズで登場。

シドニー・スミスさんプロフィール

1980年生まれ。カナダの画家。『おはなをあげる』(ジョナルノ・ローソン作)によりカナダ総督文学賞、『うみべのまちで』(ジョアン・シュウォーツ文)によりケイト・グリーナウェイ賞、初めての自作絵本『このまちのどこかに』によりケイト・グリーナウェイ賞とエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞。上記3作と『ぼくは川のように話す』はすべてニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞している。

偕成社HPより

ここからの講演の内容は、私が当日聞きながらメモしたものを基に書きました。聞き間違いや私の受け取りが講演者の意図と違う場合があります。
あくまで私が受け取った内容ということでご覧ください。
これとは別に5000字程の記録がありますが抜粋して書きました。


講演の内容

1.子ども時代

まず、子ども時代の写真を投影されました。(とても可愛らしい。手に鉛筆をもっていた!)

子ども時代は農場で両親と姉と兄、動物たちと暮らしていたそうで、夢中になった遊びは「暗闇の中の殺人」(暗闇の中でするかくれんぼ)や「昏睡患者」(一人遊び)など、自分たちで考えた遊びでスリルや恐怖を味わって楽しんでいたそうです。

音楽では悲しい感じのバラードが好きでTheBanglesの「Eternal Flame」が大好きだった。
(*多分そう言われたと思います。検索してみたらあぁ!この曲!!となんとも懐かしい曲でしたが、この曲が子ども時代か・・・とシドニー・スミスさんの若さを感じた。)

エドワード・ゴーリーの絵本が大好きで、マザーグースのグロテスクな絵も好きだった。森で迷子になって死んでしまった子どもの絵などもよく見ていて、悲劇的で悲しい物語が好きだったとのこと。

(※ゴーリーの絵本について私は聞き取れなかったのですが、後から賢き友人のみなさまがこの絵本だと教えてくれました)
『The Shirinking of Treehorn 』


シドニーさんが描く絵本はグロテスクや恐怖ではないけれど、子どもたちが味わう絵本というのはなんとも言えない複雑な気持ちをかきたてるものをよく見るのではないかとのこと。
絵本というのは、こういった様々な感情を安心して味わえる場所である心の中におきる様々な感情の地図をつくっている。とおっしゃっていたのが印象的でした。


2.『ぼくは川のように話す』について

*ここからは、広松健児さん(偕成社)とのトーク形式になりました。
絵本やラフ画などを投影しながらのお話でした。
この絵本のテクストは詩人のジョーダン・スコットさん。絵本のテクストは初めてとのこと。
場面ごとにラフがや詳しい説明をじっくりとしてくれました。
これほどまでに深く考え、描いているのか…という驚きが多数あり、絵本の内容理解もとても深まりました。

絵本にによってかなり絵の雰囲気が変化することについては、
アーティストは自分なりのルールを決めて描いている人が多いと思うが、なんとなくルールを決めて描くことに飽きて来た。これからたったひとつルールを決めるとしたら「いろいろやってみる」というルールにしようと思った。とおっしゃっていました。

また、アーティストがやるべきことは毎回ベストを尽くして一番良いと思うものを作っていくことが本来のスタイルであるべき。とも。

絵本のスタート部分の詳しい解説や観音開きのページのエピソードなどもお話されていました。

(これからのお仕事について)
『Do you remember』という絵本が日本でも出版される。子どもの頃の複雑な感情を描いている。両親の離婚、母と息子がいろいろ思い出していくようなストーリーとのこと。

3.質疑応答

『このまちのどこかで』の主人公の性別はあえて男女がわからないようになっていることについての質問が出ました。シドニーさんからは男女をわからなくすることで誰にでもあてはまるものがたりにできると思ってそうしたとこたえられていました。

また子どもたちがゲームやスマホ利用が増えるなかでどんな風に絵本に接してほしいですかという質問に応えていく中で、絵本は子どもたちがいろいろな感情を安心して体験できる場所であり、子どものためのものだけではないと考えている。
絵本を作家も自分のため、自分の中にいる子どものためにつくるのだと思ってつくった方が良い。というお話をされていました。


最後に

質問にひとつひとつじっくりと考えながらお話される様子に真摯さを感じ、ますますシドニー・スミスさんのファンになりました。また次回作もとても楽しみです。
そしてこのような講演会を開催いただきましたJBBYのみなさまに感謝です。


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