見出し画像

#24『リバース』(著:湊かなえ)を読んだ感想【ネタバレなし】

湊かなえさんの『リバース』

TBSでテレビドラマ化され、湊さんが長編小説で初めて男性を主人公にした作品でもあります。


あらすじ

深瀬和久は平凡なサラリーマン。唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れる事だ。そんな深瀬が自宅以外でリラックスできる場所といえば、自宅近所にあるクローバーコーヒーだった。ある日、深瀬はそこで、越智美穂子という女性と出会う。その後何度か店で会ううちに、付き合うようになる。淡々とした日々が急に華やぎはじめ、未来のことも考え始めた矢先、美穂子にある告発文が届く。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた――。何のことかと詰め寄る美穂子。深瀬には、人には隠していたある”闇”があった。それをついに明かさねばならない時が来てしまったのかと、懊悩する。

「BOOK」データベースより

感想

  • 湊かなえさんの作品で1番印象的な作品になった

  • どんなに親しい相手でも、知らないことはたくさんある

  • 読み終わってからしばらく放心状態?


本作の主人公は、平凡な会社員である深瀬。
深瀬の交際相手の美穂子に深瀬は人殺しだという告発文が届くところから物語が動いていきます。
実は深瀬には、学生時代に旅行に行ったときに不慮の事故で亡くなった友人の広沢の件で、ある隠していることがありました。


本作で1番感じたのは、どんなに親しいと思っていた相手だとしても、実は知らなかったことがたくさんあることです。

寛容で何でも受け入れてくれる、穏やかな心を持った広沢。
1番の友人だと思っていた深瀬は、彼の知らなかった過去をどんどん知っていくことになります。

人って外側の部分で判断することが多くて、色を決めつける。それを踏まえて関わるかどうか判断してしまうことがある。
まさに僕もそうではなかったかと自らに問いかけていました。

そして、周囲に馴染めず劣等感を持つ深瀬が広沢の寛容さに依存する気持ちが分かる気がしました。
その寛容さが当たり前にあるものと感じ、自らの立ち位置が上がったと勘違いしてしまうことも含めて。

人間の闇の部分を鋭くとらえていると思います。
特に本作は主要人物が男性なのもあって、彼らが保身に走る姿などの男性のドロドロした感じに、心のエグられ具合が強かったです。


告発文の犯人は、ああやっぱりといった感じ。
あの人ではないかと、読み進めるうちにうっすらと分かってきます。

犯人のやっていたことに怖いなあと思ったり、理由を探る中で知った事実に目頭が熱くなったり……

……えっ!?

……

……

読み終わってからしばらく放心状態になりました。
書いている今も、モヤモヤした気持ちを抱えています。

湊かなえさんの作品は『告白』など何冊か読んでいますが、本作が1番印象的な作品になりました。

読めばきっと分かるはず?

印象的なフレーズ

「どんなときでも、行動と思いが伴っているわけじゃない。自分の行動がベストじゃないなんてことは、ほとんどの人が自覚してる。だけど、そうすることによって成り立つ世界もある。気付いていないことは指摘すれば改善されることもある。だけど、自覚していることを指摘されても、何も変わらない。むしろ、恥をかかされたって、相手を意固地にさせてしまうだけ」

『リバース』

「(中略) 人を見るとき、この人は何色かなって色に例えるんだ。この人は同系色、この人は反対色、この人は補色、とか美術の時間に習った十二色相環に当てはめて考えてみると、合わない人ともそれなりに上手くやっていけそうな気がするから」

『リバース』

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,460件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?