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#90「春が二階から落ちてきた」【読書感想】

「春が二階から落ちてきた」

これは、伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』の冒頭の一文です。

本作は、このような数々の響く言葉や表現が詰まっていて、様々な伏線がキレイに繋がっていく。まさに「ページをめくる手が止まらない」作品でした。



読んだきっかけ

2023年の下半期は伊坂さんの色んな作品を読みたいと思っています。伊坂さんの作品について調べている中で、代表作の1つである『重力ピエロ』に出会いました。
(ちなみに『重力ピエロ』は、第129回直木賞候補作品、2004年の第1回本屋大賞ノミネート作品でもあります)

このような方にオススメの本です

  • 家族の絆について考えさせられる作品を読みたい

  • 1つ1つの伏線の繋がりが楽しめる作品を読みたい

  • 個性的で強烈なキャラクターの登場人物が出てくる作品を読みたい

あらすじ

兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

新潮社より

感想

  • 1ページごとに引き込まれ、次のページが気になって仕方なかった

  • 終盤の父の一言にはジーンときた


螺旋のように繋がっていく1つ1つの言葉や出来事。
泉水と春の兄弟をはじめとするユーモア溢れる強烈な登場人物たちのやり取り。
数々の響く言葉や表現。

これらは、伊坂さんの他の作品でも感じることですが、本作ではそれを強く感じました。
1ページごとに引き込まれ、次のページが気になって仕方なかったです。
まさに「ページをめくる手が止まらない」を体現しているかのようでした。
特に会話のテンポの良さは、リズミカルな音楽を聴いているかのような感じがします。

性犯罪について取り扱われている物語ですが、その重苦しさを感じさせない不思議さもありました。
各章のタイトルも秀逸だと思います。
(そもそも章が多くて、数えたらなんと58章もありました)


そして、終盤の父の一言にはジーンときました。
家族の絆というものは、それを築き上げた家族たち自身だから分かること。外から判断できるものではないと思います。

重力という名の現実は時に重苦しいけど、読了後はそれが取り払われるかのような感覚がありました。

皆さんはラストシーンをどう感じたのだろうか?

印象的なフレーズ

春が二階から落ちてきた。

『重力ピエロ』

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

『重力ピエロ』

「良心については、多数決の原理があてはまらないんだ」

『重力ピエロ』

「見かけで物事を信じるのは大事なことではあるけれど、恥ずかしいことでもある」

『重力ピエロ』

「未来は神様のレシピで決まるんですよ」
「未来は神様の匙加減で決まるもので、いや、すでに決まっていて、僕たちがじたばたしたところで変わらない」

『重力ピエロ』

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