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#91「生きる活力をもらえて、素敵なものに囲まれていることに気づきました」【読書感想】

目の見えない主人公が自分の人生を切り拓く力強さに、生きる活力をもらえて、素敵なものに囲まれていることに気づいた1冊。

それが、小川糸さんの『とわの庭』です。



読んだきっかけ

「新潮文庫の100冊2023」の対象書籍の中から選んだ1冊です。
目が見えない主人公の物語がどのような感じなのかも気になりました。

このような方にオススメの本です

  • 生きる力が沸いてくる作品を読みたい

  • 目の見えない世界はどのようなものか気になる

あらすじ

盲目の女の子とわは、大好きな母と二人暮らし。母が言葉を、庭の植物が四季を、鳥の合唱団が朝の訪れを教えてくれた。でもある日、母がいなくなり……それから何年経っただろう。壮絶な孤独の闇を抜け、とわは自分の人生を歩き出す。おいしいご飯、沢山の本、大切な友人、一夏の恋、そしてあの家の庭。盲導犬ジョイと切り拓いた世界は眩い光と愛に満ちていた。涙と生きる力が溢れ出す感動長編。

新潮社より

感想

  • 目の見えない世界を体験している感覚

  • 温もりのある光に包まれたような読了感


主人公のとわは、生まれた時から目が見えない状態です。本作はとわのように、目の見えない世界を体験している感覚でした。
とわは、季節の移り変わり、人や周囲の気配を嗅覚で感じ取ることが多いです。特に序盤は、周りの様子がはっきりと書かれていないため、読者側も想像することが求められます。


温もりのある光に包まれたような読了感でした。
母との暮らしの裏にあった真相は、目を背けたくなるものです。
そんな真っ暗闇のような状況の中でも、ないものではなくあるものに目を向け、与えてもらったものを大切にする。とわが自分の人生を切り拓く力強さに活力をもらいました。

草花の温もり、料理の味わい、人との出会い、色んな本など、身の回りには幸せを与えてくれる素敵なものがたくさんあります。普段は見逃してしまいがちですが、とわがそれらをじっくり味わっている様子から、改めて大切にしたいと思いました。

読書の醍醐味、すごく共感できます!

印象的なフレーズ

録音図書で読書を楽しむうちにだんだんわかってきたのだ。言葉にも蜃気楼というかオーラみたいなものがあって、ただ音として聞き流すのではなく、じっくりと手のひらに包むようにして温めていれば、そこからじわじわと蒸気のように言葉の内側に秘められていたエキスが、言葉の膜の外側ににじみ出てくるということが。
わたしはそんなふうにして、言葉がわたしの体温と同化して微熱を帯びるまで、じっと待つ。最初は、早く物語を聴き終えることだけにこだわっていた。けれど、読書に早い遅いは関係ない。それよりも、どれだけ言葉の向こう側に広がる物語の世界と親密に交われるかが、読書の醍醐味なのだ。

『とわの庭』

わたしは、自分の手で触ったり、匂いを嗅いだり、味を確かめたり、音を聞いたりすることでしか、世界を把握できない。確実に理解できる存在は自らの体の感覚で確認できたものがすべてで、だからわたしの世界は、星座のように点と点で結ばれている。わたしの人生は、見えない夜空に、少しずつ慣れ親しんだ星座を増やすことだ。

『とわの庭』

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