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【誤解を解く2つの心理テク】なぜあなたは、あの人に誤解されてしまうのか#6

こんにちは、清水陽介(@smzyuskmental)です。


長いこと「だれもわかってくれない」について書いて参りましたが、ついに最終回です。


ちなみに、前回まではこちら。

#1「人は認知的ケチ」

#2「誤解を生む超絶コンボ」

#3「誤解を生む3つの思考の近道」

#4「他人に嫌われない為の3つのポイント」

#5「言わなくても伝わる、あれは少し嘘だ」


まぁ要するに、「第一印象が大事!!!」ということです。笑


で、今回は、人間関係でもっとも大事な「誤解されちゃった場合は、どうすればいいの?」ってところを掘り下げてみましょう。


section①
基本的に誤解を解くのはムズイ

まず前提として抑えておいて欲しい点が一つ。それが、一度ついた印象を塗り替えるのは基本的にかなーーり大変だ、という事です。

たとえば、あなたは本当は人のために行動ができる優しい人なのに、周りからは「アイツは媚を売ってる」と思われていたとしましょう。

そんな時に、その状態から「あの人は本当は媚びてるんじゃなくて、心から優しい人なんだ!」と思ってもらうのは、至難の技です。

要するに、一度ついた印象をひっくり返すには、ヒジョーーーに大変な努力が必要になるわけです。どれくらい大変かというと、これくらい大変です。

とにかく、印象は基本的にひっくり返せません。

というのも、以前に解説した通り、人は一度でもなにかしらの印象がついてしまうと、確証バイアスによって”誤解が誤解を加速させる”、っていう現象が起きるんですよね。

これを平たく言うと、「一回キモいって思われたら、そのあとに何してもキモいって思われる」みたいな感じです。

つまり、一度キモいと思われたが最後、「キモいと思われないための努力」がむしろキモさを加速させてしまう、という地獄のループが起きる可能性があります。


そんなわけで、一回でも誤解されてしまうと、その誤解がどんどん強まっていってしまうので、印象をひっくり返すのはだいぶハードです。第一印象が大事、というのはまさにこの事ですね。

そして、他人からの誤解を紐解くには、トラックを自力でひっくり返すような結構な気合いが必要になります。

ただ、「方法と努力次第では不可能ではないよ」と、いうことを念頭に置いてやっていきましょう。


では、「じゃあ具体的に、頑固な誤解を解くにはどうしたらいいの?」って話ですが、ここでは基本的に2つのアプローチが考えられます。


作戦①こちらから気づかせる

作戦②相手が自分で気づくように仕向ける


他人からの誤解を紐解くには、このどちらか、もしくは両方の戦略を考えなければなりません。

というわけで、まずは①の「こちらから気づかせる」から見ていきましょう。


section②
作戦①こちらから相手に間違いを気づかせる

①のアプローチは「こちらから気づかせる」です。

わかりやすく言うと、

「気づいて!!俺、本当は優しいから!!!ね!!!」

と、こちらから相手に分かるようにアピールをすることで、相手に誤解を気づかせるアプローチです。

ただもちろん、こんなバカみたいにダイレクトなアピールをしても印象はひっくり返りません。悪い印象を良い印象にひっくり返すには、コツがあります。


ー無視できないくらい圧倒的な情報量を示すー

で、そのコツが何かって言うと、「無視できないくらい圧倒的な情報量を示すこと」です。

つまり、自分の印象をひっくり返すには生半可なアピールではなく、「圧倒的な情報量」を持ってして相手に自分のことをアピる必要があります。この、「圧倒的」という部分が非常に重要なポイントです。

たとえば、あなたが周りの人に「あの人は女遊びばっかりしていてチャラい」と思われているとしましょう。そんな中、ちょっと真面目ぶって、本を読んでいる姿を一度見せたくらいでは、「チャラい」という印象は変わりません。

これではまだ「チャラいやつが本を読んでいる」と思われるだけです。むしろ、本を読んでいることに気づいてくれるかも分かりません。


ですので、印象を塗り替えるためには、”疑いようのないくらい”もっと大量の情報を与える必要があります。

たとえば、「本当は真面目なんだよ」というアピールをしたいならば、

・”毎日”、1時間早く会社について、本を読んでいる。

・休憩時間も”常に”本を読んでいる

ここまでやれば、さすがに「あれ、この人チャラそうに見えて、実は根は真面目なのかも?」と思いますよね。


つまり、印象をひっくり返すには、疑いの余地が無くなるほど圧倒的な情報量を与える必要があるわけです

ここまでしてやっと「あ、この人、本当は違ったんだ。」「あれ、違うのも?」と、”思考の近道”をせずにあなたをしっかり見てくれるようになります。


ー1回だけでは「たまたま」だと思われるー

で、「なんでそこまで圧倒的な情報量が必要なの?一回でも印象と逆のことをすれば、ギャップで記憶に残るんじゃないの?」って話ですが、それは、1回だけだと「たまたま」だと思われるからです。


たとえば、「このクジ引きは、ハズレが多い!」と有名なクジがあるとしましょう。そして、あなたがそのクジを1回引いて、もし当たりが出たら「ラッキー!」と思いますよね。つまり、「ハズレが多いけど、”たまたま”当たっただけだ」と考えます。このクジは当たりやすい、とは考えないはずです。

ところが、あなたがもしクジを”100回”引いて、90回当たりが出たらどうでしょう。「これはたまたまじゃないな。このクジ、”本当は”当たりやすいんじゃね?」と思わざるを得ないですよね。


つまり、いつもの印象と逆のことを1回見せただけでは、元のイメージの方が勝ってしまうので、印象自体をひっくり返すことは出来ません。「たまたまなんだ」と思われて終わります。

ところが、「あ、今のはたまたまじゃなくて、本当にそういう人なんだな」と思えるくらいの”圧倒的な情報量”を与えることで、相手は誤解に気づき、間違った印象をひっくり返すことができます。


だから例えば、あなたが仕事場の上司に「使えないヤツ」と思われているとしましょう。

そんな時に、1回優秀な成績を出しただけでは「おお、やるじゃん。でも、たまたまっしょ」と思われてオシマイです。ザコのままです。

なので、「できるヤツ」と思ってもらうためには、「仕事ができるヤツである証拠」を圧倒的な回数で見せつける必要があります

具体的には、

・3回連続でトップの業績を出す

・毎日誰よりも早く出社して準備に取り掛かる

など。

僕は会社勤めの経験がないのですが、だいたいこんな感じですかねぇ。(あんまり良い例が浮かびませんでした。笑)

ただ、これを聞くと「え、そんなのキツすぎぃ!」って思うかもしれません。しかし、現実は、これくらいの努力をしないと、「ダメなヤツ」という印象は消えないということです。

とにかく、印象をひっくり返すには、これくらいの根気と努力が必要になります。そんなわけで、まぁ当然といえば当然ですが、第一印象が良いに越したことはないわけです。


section③
作戦②相手が自分で気づくように仕向ける

というわけで、作戦①は「こちらからアピールして誤解を正す」という感じでした。そしてもう一つの作戦は、「相手が自分で気づくように仕向ける」です。

分かりやすくいうと、相手に「あれ、私、他人を誤解して見てたかも!この人のこともしっかりと見なくちゃ。」ということに気づかせる、みたいなイメージですね。


「え、そんなこと可能なの?笑」って感じですが、これには科学的に根拠のあるテクニックがいくつかあります。

作戦①とは違って結構頭を使う必要はあるのですが、科学的に「良い人」に思ってくれるようになる方法はいくつか分かっています。

で、本書ではそのテクニックが紹介されているのですが、その中でも面白いテクニックがあったので、そちらだけ最後に紹介したいと思います。



ー平等意識にはたらきかけるー

人って不思議なもので。

たとえば、あなたはこう聞かれた時、なんと答えますか?

Q「あなたは、他人を平等な目線で見るべきだと思いますか?」

こう聞くと、ほとんどの人は「うん。もちろんそうだと思う」と答えます。

つまり、ほとんどの人は、「他人のことは偏見なく、平等に見るべきだ!」と考えているわけです。実際にこれを心理学では「平等主義的目標」と言います。人はみんな『平等にあるべき』と思っています。


しかし、ここで重要なのは、考えていることと実際にそうしているかは別だ、ということです。つまり、「平等に見るべきだ」と考えているからと言って、実際に平等に見ているわけではないよね?という話なわけです。

もしみんながみんな、本当に平等に見れているならば、誤解は生まれないはずですからね。


ただ、心理学的にはこういうことも分かってます。

平等主義的目標が意識された場合においては、人はバイアスやステレオタイプによる判断は抑制される/G.B.Moskowitz ら20011年の研究

シンプルにいうと、”人は「平等に見なくちゃ!」と意識すれば、ちゃんと平等に見れる”ということです。


つまり、ここまでをざっくりまとめると、人は他人を平等に見るべきだと考えているが、実際のところ他人を偏見で見ているよね、と。しかし、平等に見ようと思えば平等に見れるんだよ、と。

したがって、自分の誤解を解くためには、他人の事を平等に見るように仕向ければいいわけです。


ーラベリングを使うー

で、「じゃあ、どうやって仕向ければいいんですか?」って話ですが、リーハイ大学の心理学者ゴードン・モスコヴィッツは、そのためのナイスな方法を見つけたんだそう。

それが

「ラベリング」

というテクニック。

これは何かというと、

ある信念がある人に対して、その信念を褒めることで、その信念に見合った行動を取るようにさせる。

というテクニックです。分かりやすく言うと、「あなたは〇〇だね」と言うと、実際にその通りになる、みたいなイメージですね。


たとえば、あなたが彼女に親切をしてあげた時に、彼女から「あなたは優しくて好き」と言われたら、どうでしょう。褒められた喜びと、期待に応えたいという気持ちから、「これからももっと優しくしよう!」って思いますよね。

つまり、人は「あなたはこういう人だね」という褒め方をされると、実際にその通りの行動をしやすくなります

実際に本書で紹介されている実験でも、

チャリティに寄付をした人に、「あなたは寄付をする心の広い人ですね」と言うと、2週間後に再び寄付をする確率が高くなった。

ということが分かっております。

要するに、良い行いをした時に「あなたはこういう人ですね」と言ってあげることで、また良い行いをしてくれるようになるということです。


ということは、です。誤解を解きたい場合も、これと同じように言えばいいわけです。

つまり、自分のことを平等に見て欲しい場合は、「あなたは他人を平等に見れる人ですね」的な褒め方をすれば良いわけです。こうすることで、「あぁそうだ、私は他人を平等に見れる人だから、偏見で他人を見ないようにしないとな」と思ってくれるようになります。


だからたとえば、「俺、職場の先輩に誤解されてるなー。本当はもっと真面目に取り組んでるのに、表面上サボってるって思われる!」みたいな場合を想定してみましょう。

こういうときは、自分の内面をしっかりと見てもらうために、こんな感じで褒めてみましょう。

「先輩って、いつも部下のことをしっかり見ていてすごいですよね。この間、同僚の〇〇ちゃんが「〇〇さんって、ネイルとか変えた時すぐ気づいてくれるし、仕事でちょっとした工夫をした時もすぐ見つけて褒めてくれるからすごい嬉しいし、細かいところまで見てくれてるなーって思う」的なこと言ってましたよ。絶対彼女とかにも優しくてマメなタイプですよね(笑)どうやったらそんなに細かいところまで気づいてあげれるようになるんですか?」

こんな感じで褒めると『そっか、私は細かいところまで見れる人なんだ。これからもしっかり細かいところをみなくちゃ。』と思ってくれる可能性が高まります。


これはほんの一例ですが、とにかく、自分を偏見で判断して欲しくない時は、相手の過去の正しい行動を取り上げた上で「あなたは他人を偏見で判断しない人だね」と褒めましょう。

そうすることで、あなたを平等な目線で見てくれるようになります。

これが、「ラベリング」です。


ー代償的認知ー

で、今解説したように、ラベリングを使うことで「平等意識を思い出させる」ことは出来るのですが、実はコスモヴィッツさん、これよりもっと強力なテクニックを見つけちゃいました。

それが

「代償的認知」

を使う方法です。


まず、「代償的認知ってなによ?」って話だと思いますが、ざっくりいうと、「人は過去の過ちを思い出すと、それを埋め合わせる行動をとろうとする強力な欲求が生じる」ということです。

たとえば、過去に車で事故を起こしたことのある人はわかると思うのですが、昔に事故った時のことをフっと思い出した瞬間、「やばい、安全に運転しなきゃ!」と思うことってありますよね。

同じように、これを読むあなたも「前に彼女にキツく当たって傷つけてしまった」とか「やばい嘘がバレて友達関係がギクシャクした」みたいな過去の過ちを思い出してみてください。すると、「いかんいかん。誠実に生きねば。」と思うと思います。

つまり、人は過去の過ちを思い出すと、その穴埋めをするために、正しい行動を取ろうとします。これが「代償的認知」です。


で、ということは、です。自分を平等に見て欲しい場合も、この代償的認知に働きかければ良いわけです。

つまり、相手の平等意識を発動させるには、相手に「過去に他人を偏見で判断して後悔した経験」を思い出してもらえば良いわけです。そうすることで、「いかんいかん、他人を偏見で見ちゃだめだよね。」と思ってくれます。

「え、そんなこと可能なの!?」って感じですが、親切なことに、心理学者コスモヴィッツさんはその方法を教えてくれます。


ー自分の話としてさりげなくー

まず、代償的認知を発動されるためには、相手に「過去の過ち」を思い出してもらう必要があるわけですが、「あんた、昔に人を偏見で判断したことがあるよね」とストレートに言うと、以前解説したエゴグラスが作動して、あなたは普通に嫌われてしまいます。要は、『うっせえな!!』と思われて終わります。ストレートに言ってはいけません。


では「じゃあどうやって意識させれば良いの?」って話ですが、ポイントは、”自分の失敗談として伝えること”です。

つまり、「俺、前にこういうことがあってさ、こうしなきゃいけないと思ったんだよね」と、あくまで自分の失敗談として伝えることで、平等意識を思い出させるというやり方です。

たとえば、こんな感じに言います。


「俺さ、ホリエモンのこと、実は前は嫌いだったんだよね。っていうのも、発言は悪口ばっかりだし、炎上のニュースばっかりだし、服装も適当だし、このおっさん大丈夫?って感じだったんだよね。

でもさ、よく調べてみたら、ちゃんと色んな仕事をしていて、人脈もあって、むしろ日本を代表するインフルエンサーで、とにかくすごい人だったんだよね。

だから、”おっさん”とか言ってた自分が今では恥ずかしい(笑)。人って見た目で判断しちゃいけないなーって思ったよね。」


こんな感じでボソっと言うと、「確かに、人を見た目で判断したらダメだよな」ということを思い出させることができます。


ーまとめー

というわけで今回をまとめると、

section①
基本的に印象をひっくり返すのはキツイ。
本当は第一印象が良いに越したことはない。

section②
それでも誤解されてしまった場合は、2つの戦略を駆使して、誤解を紐解く必要がある。

作戦①こちらから気づかせる
→コツは、”無視できないくらい圧倒的な情報量”を示すこと。
1回正しい行動を見せただけでは「たまたま」と思われるだけなので、疑いようのないレベルまで行動して見せる必要がある。

section③
作戦②相手が自分で気づくように仕向ける
→とにかく、「他人を偏見で判断しちゃいけないよね」という平等意識にはたらきかけること。
そのために、使えるテクニックが
・ラベリング(あなたは平等に見れる人だねと褒める)
・代償的認知(自分が過去に他人を偏見で判断して後悔した話をする)

という感じでした。

本書ではこの他にも、「なにもせずに勝手に誤解が解ける方法」なんかが紹介されておりますが、そこは本書に譲ります。


そんなわけで、以上が「だれもわかってくれない」の解説シリーズでした。

全体の教訓としては、

・人はそもそも”お互いを誤解するもの”だと理解しよう。自分が他人に誤解されるのは当然だし、自分も他人を誤解している可能性が高い。

・特に、「言わなくても伝わる」と思わないこと。言わなかったことは誤解して伝わって当然なので、自分の気持ちはちゃんと口に出すようにしよう。

・そして、もし誤解されてしまった時は、時間をかけて根気強く粘ること。カンタンではないが、誤解は紐解ける。

・まぁでも、やっぱり第一印象が良いに越したことは無い。

みたいなところですね。

本書ではnoteで紹介しきれなかった面白い部分がたくさんありますので、ぜひ読んでみてください。良い本です。


それでは、また。


おしまい。


参考


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