カーテンを閉めて
遠い日の
失われた魔法に
思いを馳せる窓辺
幾つまでだったろう
カーテンを
体に巻き付けただけで
おひめさまになれたのは
今はもう
おひめさまになど
なりたくはない
かぼちゃの馬車に乗るよりも
自分の足で歩きたい
それでも時には
歩き疲れて
厚い雲に覆われた夜空に
見えない星を探す
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こんな日は
ただひとつ
手元に残った魔法を試す
カーテンを閉めて
おひめさまの衣に
護られた部屋の中で
灯りを消して
目を閉じて
自分の中へと降りていく
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真っ暗で
何も見えない
けれど
何も見えなくても
どこに何があるかを
知っているから
自分の星の在り処まで
まっすぐに降りて
見えない星に触れて
手触りを確かめて
祈りを捧げる
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私の闇の色を
決めるのは
私だけ
漆黒は
全ての色を含んで
全てを優しく包む空
漆黒は
全ての色を吸い込んで
旅へと誘う川の水
抱えるにしても
包まれるにしても
暖かな闇を
優しい闇を
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祈りは眠りに溶けて
窓の外側と
私の内側で
星が瞬く夢を見る
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朝になれば
夢を忘れて
歩き始めるだろう
それまでのひと時
魔法の中で
おやすみなさい
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お目に掛かれて嬉しいです。またご縁がありますように。