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サステイナビリティを哲学する意義 #3

「環境」を再考する

 サステイナビリティは、これまで環境・経済・社会というトリプルボトム・ラインが重視されてきた。今では、ESG投資に代表されるGovernance・統治、ネットワークの重要性が認識されるに至り、SDGsは目標は、いずれかの要素あるいはその統合によってとらえなおすことができる。
 環境問題を含めた、広く社会的な課題を解決し、人にとってよい経済活動が実現できるよう個人個人が取組りとそれが有機的にネットワークすることが大切になる。このnoteで提唱している「継承可能性」のスタンスは、外部の「環境」との付き合い方を自分事として哲学することがポイントであり、主眼となる。

 そこで、「環境」とは何かを再考したい。まず、一般的な定義をwikipediaから載せる。

 「環境は、広義においては人、生物を取り巻く家庭・社会・自然などの外的な事の総体であり、狭義ではその中で人や生物に何らかの影響を与えるものだけを指す場合もある。特に限定しない場合、人間を中心とする生物・生態系を取り巻く環境のことである場合が多い(Wikipedia)。」

 ただ、このままではあまりに漠然としていて、つかみどころがない。この「環境」を如何に自分のものとして、位置付けられるかが、継承可能性としてのサステイナビリティの肝となる。


 その際、動機・モチベーションになるのが、
  今の「環境」を何とかしたい!
  今の「環境」を改善したい!
  今の「環境」を維持したい!

という欲求の集まりである。それが自己実現であれ、ビジネスチャンスであれ、新しいライフスタイルの体現であれ、国際社会へのアピールであれ、身近な「環境」をよりよいものへとしていきたい、という思いの集合体が、大きな潮流で活きてくる。

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個人の動機・モチベーションが、
少しずつグローバルな社会をよりよくしていく。

空間軸を定める

 まず、今、このnoteを眺めるとき、読者は自分を取り巻く「環境」をどう捉えるだろうか。最も身近には、そこには、家族、友人、同僚、上司、あるいはこのnoteを通じてのクリエイターとの関係性が「環境」そのものだ。もしくは、遠く離れた誰かの憂いやよりよい未来に思いをはせているかもしれない。それも「環境」だ。
 では、これを読んでいる場所はどんな「環境」だろうか。建物の中であれば、どんな光のもとにいるだろうか?暖かいだろうか、涼しいだろうか?雨は降っているか?外の風は強いだろうか?BGMは心地よいだろうか?住宅であれ、オフィスであれ、カフェであれ、建築家とそのチームによってデザインされた空間で過ごしているはずである。

 そして、その建物は、どんな地域に建っているのだろうか。都心のオフィスの上層階だろうか?郊外の住宅地の一室だろうか?あるいは、地域の自治体が仕掛けたコ・ワーキング機能付きのカフェだろうか?駅からは近いだろうか?地域の「環境」を話す仲間はいるだろうか?

 人工物以外の自然との接点は、どの程度、あるのだろうか。庭や公園で眺める、足を延ばせば登れる山がある、湖や池がある、海が近い、、、それは自然目線から見た「環境」は、自分にどんな影響を与えているのだろうか?

 そして、「環境」問題を語るうえで欠かせないのが、国際関係であろう。ここであえて国際的な目線としてのは、inter-national、つまり国と国の関係性に着目した視点だからだ。SDGs自体は、この国際的な目線で「環境」が語られ、合意した結果である。その詳細は、別記事にまとまていく予定だ。重要なキーワードは、「世界各国の公平で公衡な発展」になる。

 最後に示したのが、地球の目線である。人が決めた国境に基づくinter-nationalではなく、球体としての地球 globeの視点である。この視点は、気候変動、海洋プラスチック、生物多様性といった諸課題が、球体としての地球 globeレベルで進行している点で、よりマクロな「環境」を提示している。

 かつてのエコロジー、現在のサステイナビリティを語るうえで、「環境」がかくに複層的な意味を持つため、時に誤解やかみ合わない議論を産んできたが、それはある意味、当然でもある。今、自分はどの目線で「環境」を語っているか、それを意識的にするだけでSDGsの理解は深まるし、建設的な議論を得やすい。あまりに使い古されてきた「環境」を再考する一つの軸となる。

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人、建物、地域、自然、国、国際、地球の目線で「環境」を捉えてみよう。

*建物の5つの区分は、学生時代に指導を受けていた建築家・内藤廣氏の
『環境デザイン講座(王国社、2011)』による。

時間軸を定める

 次に大切な視点が時間軸である。SDGsは2030年の目標、パリ協定は2050年の目標だ。それを歴史的にとらえること、そして、自分が生きる時期がどの時期なのか、を想像し、想定すること。それが、創造への大切な土台となる。人類の歴史と他者の経験は、SDGsとパリ協定、そして今のコロナ禍を冷静に位置づけ、よりよい社会へと想像をはせ、創造する胆力をつける、軸となろう。

「愚者は自身の経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
オットー・ビスマルク
「人に想像できることはすべて、ほかの人が実現できるんだよ。」
ジュール・ヴェルヌ

 では、時間軸として、ふさわしい範囲はどこであろうか。まず、歴史学者で哲学者、現在の知の巨人であるユヴァル・ノア・ハラリ氏の『ホモサピエンス全史 上・下(河出書房新社、2016年) 』を手掛かりとしよう。宇宙の誕生から、認知革命・農業革命・科学革命を経て、現在に至るというハラリ氏の世界観を引用する。そのうえで、科学革命が実社会にもたらす技術へと変革させ、実装し、広めていった工学の歴史、そして産業と都市の発展に着目する。そのためのエポックメイキングとして、アイザニック・ニュートンの誕生を置き、そこからT型フォード量産開始、モダニズム建築の成立、windows95販売開始、i-phone生産開始といった、工学が世界を規定してきた歴史を紐解く視点に立つ。この論点は、「第2章;工学の環境史観」で詳細を述べる。
 そのうえで、である。SDGsの達成年2030年、パリ協定の目標年2050年を並べてみよう、そして、自分の年齢を重ねてみよう。私自身は、まさにこの二つの国際的な潮流の真っただ中を生きることになり、幼少の娘によりよい社会を引き継ぎたいと願っている。学生たちには、「私たちがその責任世代であり、皆の感性と力に期待している。」と話をする。
 読者の皆さんは、2030年、2050年は、おいくつでしょうか?周りの人に何を残したいでしょうか?

 歴史からみるサステイナビリティ、SDGs史、連載中です。

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人類史、の中でSDGsを捉える。でも、行動できるのは、「今」だけ!!

 空間軸と時間軸を定める威力は、思いのほか、大きいサステイナビリティが求める規範的な「持続可能性」の理解と自分事としての「継承可能性」に思いをはせ、行動に移す、その考具と道具にしてくだされば、と整理した。ご参考になれば、幸いである。
 前に紹介した『哲学と宗教全史(ダイヤモンド社、2019年)』を著した出口治明氏がよく同じ空間軸=世界、時間軸=歴史を持ち出すことが多いのは、セレンディピティか。空間軸は、少し異なるけど、影響はあったのでしょう。

 まだまだ初心者なので、読んでくださるだけで、心から嬉しいです!!!
 ありがとうございます!!!

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