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印象的な色彩を持つ3本の映画

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 映画を見ていて美しいシーンがあると、やっぱり映画は画だね〜と、しみじみ思います。
 以前、モノクロ映画独特の美しさについて記事にしたので、今度は、印象的な色彩の映画について ”note” していきたいと思います。


 前の記事で紹介したモノクロ映画の中にも、一部、色が使われている映画があったりして、色のない世界での色は、とても映えるんで、なかなか印象的です。

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 ただ、映画といえば普通カラーですよね、色彩があるのは当たり前です。が、そんな中でも、色を印象的に使う監督がいたりするんですよね。

 北野武監督なんかは、青い場面が印象的なので、"北野ブルー" なんて名づけられてたりしてます。
 全部じゃないけど、青っぽい色使いの画面が、確かに多めです。

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 この ”北野ブルー” みたいなのは、映画全体のトーンとして感じられるタイプなのですが、全体的な色調だけでなく、たとえば、異なる色調の画面を組み合わせてコントラストを際立たせるタイプの映画もあります。

     一例を挙げると、ティム・バートン監督の「チャーリーとチョコレート工場」なんかでは、現実世界の色味の少ない感じに対して、チョコレート工場の中は原色を中心にしたカラフルな世界に描かれているので、強いコントラストが生じてますよね。

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   物語世界に直結した色彩構成へのこだわりだと思うのですが、こういう監督のこだわりが楽しかったりするのです。
 今回は、同じように、その監督の色使いへのこだわりが全体に施されている3本の映画について "note" したいと思います。


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『バグダッド・カフェ』

 監督: パーシー・アドロン (1987年 西独)

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 砂漠のうらぶれたカフェに集う人々と、そこに現れたドイツ人旅行者ジャスミンの交流を描く、大人のファンタジー。

 まず、紹介するのが『バグダッドカフェ』。
 主題歌の「Calling You」も含めて、今でも大好きな映画のひとつなんですが、終始、黄色のフィルターがかかったような映像なんです。

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 どんな意味があるのかはわからないのですが、この黄色のトーンが、映画全体を包んでいて、どこか現実から離れたファンタジーを感じさせると思っているのです。

 余談ですが、アドロン監督が色や構図に手を入れた最新のディレクターズカット版が、かなり前に出てるらしいのですが、なんか印象が変わると嫌なので、未だに視聴してなかったりします。
 この黄色い画面とともに、あの時の『バグダッド・カフェ』を、とっておきたかったりするんですよね。



『コックと泥棒、その妻と愛人』

監督:ピーター・グリーナウェイ(1989年 英仏合作)

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 ある高級フレンチ・レストランを舞台に、その店の常連である泥棒とその妻、妻の愛人である学者などの、欲望渦巻く人間関係を描く。

 鬼才グリーナウェイの傑作……  なのですが、中身はかなりエグいので、万人にはお薦めできません。

 ただ、映像へのこだわりが強い一作なのは間違いないのです。
 この映画では限定された部屋のシーンが多いのですが、グリーナウェイ監督は、各部屋毎に基調となる色を決めて、部屋の色に合わせて、登場人物たちの衣装の色も変えるというこだわりを見せてくれます。

 一例を挙げると、白が基調のレストルームでは白い衣装だった女性が、ドアを出て、赤が基調の廊下に出ると赤い衣装に変わる、みたいな感じです。

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 初めて見た時は、あまりに自然で、途中まで仕掛けに気づかなかったのですが、このシーンを見て、あれっと思ったのを憶えていますね。
 …普通、そんな仕掛けがあるなんて思わないですよね。

 正直、内容も倒錯気味で、グリーナウェイ監督自身の偏執的な傾向が色濃く反映されている映画です。
 恐らく、BSも含めてTVでは放映されないだろうし、レンタル屋さんでも見かけない....  多分、観ようとしないと、なかなか観れない作品だと思うのですが、観る時には、ちょっと心の準備をしておいた方が良いのです。



『アメリ』

 監督:ジャン=ピエール・ジュネ(2001年 仏)

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 ちょっと変わったパリの下町娘の可愛い恋と日常を描いた、キュートなガーリー・ムービー。

 最後は、これまた凝った色彩感覚を見せるジャン=ピエール・ジュネ監督の「アメリ」。
 可愛いと言えるかもしれませんが、ジュネ監督ですからね~、個人的にはけっこうブラックな内容の映画だと思っています。
 評価ほど万人受けする映画じゃないような気もするんですけどね....

 ただ、映像の構図や色の構成はさすがで、ここまで色にこだわってる映画も珍しいんじゃないかと思います。

 メインの色彩となるのは "赤(朱)" と "緑" で、各シーンでの色使いは、絵画的で、とても印象的なのです。色相環では正反対に位置する"赤(朱)" と "緑"の構成は、ある意味、主人公アメリの強固な世界として描かれています。

 登場人物たちの服も緑っぽいか、赤っぽいので統一されています。

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 椅子に座ってるだけですが、椅子のデザインは "赤(朱)" と "緑"のストライプ。背景の木々も含めると緑味の強い画面ですが、赤いストライプが差し色になってるのがわかると思います。

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 緑の照明のプールで泳いだ後、上がってきた男性は水泳パンツが朱色でした。(こだわりすぎ!)

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 さらに、映画の中では、時々、青や水色のものが意図的に挿入されるんですが、"赤(朱)" と "緑" で構成されたアメリの世界では、ちょっと異質な色に感じられて、画面的にも、そしてストーリー上でも... アクセントになるものとして描かれています。
 そんなところが、これまた巧みだなぁと感じるのです。

 「アメリ」を観る機会があれば、色に注目して観てみると、さらに物語が面白くなると思いますので、ぜひ!


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 自分にとって、色が印象に残っているのはこの3作品です。
 もちろん、観てない作品も多いので、他にもあると思うのですが、意識して観ないと気づかないことも多いんですよね。

 美しい風景やシーンを描いた映画は数多くあれど、全編を通じて色彩にこだわってる映画に出会えることは貴重なので、またいつか、そんな作品に出会えることを期待してたいと思います。



(色彩にこだわったCMの記事)

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