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畑のやさい加工部| 託して嬉しい、作って嬉しい、⾷べて嬉しい。畑の野菜で笑顔の循環を作りたい!

第1章 加工って、ところで一体全体どうすんだ??

[NPO法人スモールファーマーズ・加工部:これまでの活動]
今年の2月のこと、畑の野菜のフードロスに着目し、ロス野菜を活用して貧困や食の安全問題の役に立てないか、このような問題に実際直面したり、その為に自分に出来ることはないかと思い当たったメンバーで、この部活を立ち上げました。福祉や食品、栄養の分野で働いている人、絶賛子育て奮闘中のパパ、農家と、所属している人たちは個性豊かです。

当初は規格外の野菜たちを引き取って商品企画や開発、製造、販売まで携わり、出来上がったものを社会でのお困り事に役立てよう!と意気揚々としていたものの、活動にあたっては分からないことだらけ!資金繰りはどうしようか?廃棄野菜を引き取るルートの確保はどうしよう?数ある問題からどうターゲットを絞ろうか?商品はどんなものがいいんだろう?加工場ってどうやって探すの?などなど、数ある壁にひとつひとつ向き合ってきました。

フードバンクへの視察や、加工食品の専門家の方にお話を伺う機会を得たり、部員の畑で余った人参でスープを作って試食会をしてみたり、資金繰りの方法を模索したり、商品やイベントの企画を練ってみたり……。そんな中、自分たちでこの半年間で得た経験と知識を具体化するために、SFDで夏野菜のポタージュの試作販売にチャレンジしてみることにしました。


第2章 甘くはなかった、ロス野菜加工への道

計画し始めたのは4月の下旬。まずはSFCの実習圃場で、実習中に発生する規格外のロス野菜に着目することにしました。ロス野菜が発生する時期の予想や野菜の種類の決定、どんな料理に加工するのか検討及びレシピの作成、何個製造するのか、加工場の選定や見積もり、経費回収の方法の検討など、部員同士平日の合間を縫ってミーティングを重ねていきます。

加工場によって製造の最低ロットが決まっていたり、試作するにも数食程度の少数単位では出来なかったり、野菜の生育の状況によって当初予定していた種類の変更がやむを得なかったり。ロス野菜を回収するといっても、ロス野菜が集まってからレシピを考え製造するのでは遅すぎるので、全ての行動が想定で動かざるを得ません。

製造をする際でも、当日作るだけではなくて安全性を確かめる為に細菌検査を外部にお願いしなければいけないので、そのスケジュール込みで販売日に間に合わせなければいけない。いつ採れるかも分からない規格外の野菜を引き取り商品化することの難しさや壁をまざまざと突き付けられた私たち。

どうにかこうにかレシピを完成させ、加工場の決定をし、前日に現役生からロスのきゅうりを寄付いただいて製造の日を迎えます。そして当日もハプニングに見舞われる私たち!さぁ、どうなる?!

〈加工にあたって浮上した問題と、製造までにおこなったこと〉

  1. ナスが余ってくると想定し、ポタージュにしようと計画していたけれど、月日が進むにつれ生育状況と製造時期が噛み合わない!急遽キュウリで行うことに。

  2. 野菜変更に伴うレシピの再検討と作成。

  3. 各自宅で行う少量での試作と、製造での作業工程は同じようにはいかない!少量の調理工程だったものを、大量調理向けに変換していく作業に追われる。

  4. 規格外の野菜が手元に無い状況下でのレシピ検討は「想定」の範囲でしか出来ない。

  5. 加工場によって一度に製造できる食数は決まっているので、それに合わせて作業工程を組んでいく。

  6. いつ野菜集める?どうやって加工場まで運ぶ?前日から当日にかけてのロス野菜の回収と搬入方法の確認を行う。


第3章 仕上がりが変わる?!製造ってムズカシイ

製造当日。スタッフさんに交じって部員4人も作業に参加!洗浄をした後は、ひたすら皮をトラ剥きにして中身をこそげ落とし、包丁やスライサーで薄切りにしていきます。15kgの使用予定に対して、廃棄部分と予備合わせて30kgのキュウリを持ち込んだものの、想定とは裏腹に皮の一部分と中の種とゼリー部分を除いてみるとまさかの12kg少々に!キュウリの中心部分の重量に驚くと共に、この時点で150食想定の計画が崩れ、100食あまりに・・・。

その後は大きなお鍋でキュウリの水分量と格闘しながら国産チキンブイヨンで煮込み、ミキサーに掛けていきます。牛乳とバター、食塩で様子を見ながら味を調え、出来上がったポタージュをみんなで味見してみると……。「おいしい!」「バターのコクときゅうりの甘さがいい感じ!」「皮部分は硬かったから、全部剥いてもよかったかもね〜」と、少し改善点を見つかったものの、おいしいポタージュが出来たとみんなで歓喜。レトルト容器に分量を計りながら詰め、真空包装機で封をしていきます。

部員のほとんどが初めての体験で、興味津々で作業を進めていきます。・・・順調に思えた作業でしたが、問題はこの後の「レトルト殺菌」という、圧力を掛けながら加熱をしてパウチ内の殺菌をする工程にありました。121℃の高温で25分間機械に掛け、その後細菌検査に提出し、問題がなければ2年間常温保管が出来るレトルト食品になるわけなのですが、ここで私たちは加工食品開発の洗礼を受けることになります。

殺菌後、どんなおいしいポタージュが完成したかとワクワクして開封してみると、ポタージュの色は鍋の中で出来上がった時よりもクリーミーな色合いに変化している。お、いいぞいいぞ?続いてみんなでひと口パクリ。・・・。「パウチに詰める前と味が変わってる〜!」「少し酸味が出たのが気になるね。」「不味いわけではないけれど、自分たちの目指していた味じゃないね。」3月に聞いた、加工食品専門家の方の『決められた時間と予算の中、どれだけ自分たちの味に近づけられるか、加工の過程で妥協しなければいけない部分にどう折り合いをつけていくか、その調整がカギになってきます。』というお話が、部員の頭の中に蘇ります。

畑のロス野菜を活用したい、作るなら自分たちの納得できる食材料で。そう意気込んでいたものの、加工の過程で味や物性の変化があること、使う材料によっては好ましくない変化をしてしまう為、時にはそれを抑えるために食品添加物の力を借りることもあること、世の中に出ている加工品がいかに沢山の試行錯誤を経て誕生しているか、企業努力の凄さを知るなど沢山の学びを得た1日となったのでした。とはいえ、せっかくお譲り頂いたきゅうりで作り上げた第一弾試作品。しっかり経費も掛かっているので、売らないわけにはいきません。

[今回掛かった製造経費の一覧]
製造費(容器、シール代込) 42,610円
無菌検査料 12,760円
食材料費 7,910円
                  
合計 63,280円


第4章 いざ、販売へ。そしてその先へ。

完成した100食あまりのポタージュをSDFで販売する機会を得た私たち。会場参加者のみなさんに、お昼休みを使ってひとつひとつ手売りを行いました。150gのレトルトパウチ包装で、お値段なんとひとつ600円。当初150食想定だったこともあり、何とも高値になってしまったポタージュな訳ですが、どんな想いでこの活動を始めたのか、加工にあたって苦労した点、製造工程の話、原材料の話など、自分たちが経験したことを購入してくださるみなさんとお話しながら販売していきます。

食品加工素人集団の私たちがひとつの商品を作り上げたことに、まずは会場のみなさんは興味津々の様子。
「きゅうりでポタージュって想像できない。どうレシピ化したの?」「製造過程で味が変わるっていうのは、どんな変化があるの?」「どうやって加工場見つけたの?」「レトルト加工って他の加工とどう違うの?」「原材料、こんなにシンプルなんだ!」製造方法に興味がある人、レシピや原材料に興味がある人、製造経費に興味がある人と、色々な質問に対して回答していく私たち。2月には「加工ってどうすんだ?」とちんぷんかんぷんだった私たちも、少しはお話出来るまでになってきたことを実感したひと時なのでした。

後日、実際に食べた感想や活動についての応援の声、ご意見を頂くことができ、やっぱり声を聞くって大事なことだなぁと実感しながら、今回の製造で浮上した課題を踏まえ、現在は今後の活動に向けて調整を行っているところです。


スモールファーマーズの「加工部」

畑の野菜のフードロスに着目し、ロス野菜を活用して貧困や食の安全問題の役に立てないかと考え、試行錯誤しています。

加工部に参加したい!という方は、NPO法人スモールファーマーズのサポートメンバーにご登録くださいね。
皆さんのご参加、お待ちしてます~。


やってみたいをやっちゃう「部活」

やってみたいと思うけれど、ひとりでなかなかできないことってありませんか?それならみんなでやっちゃおう!という活動場所、それがスモールファーマーズの「部活」です。
スモールでユニークなその活動、ちょっと覗いてみませんか?


記事を書いた人
中尾千明さん

京都市出身の大阪府在住。管理栄養士として給食委託会社にて勤務し、その後特定保健指導や子ども食堂の立ち上げ及び運営に携わり、大学職員として管理栄養士・栄養士養成課程にて実習助手を勤める。管理栄養士として携わった延べ53万2千食・500名以上の日々の食を通じ、食との向き合い方がいかに人生において大切かを痛感。自分を大切に生きるための食とは何か、食を通じて「気づきの場所」をもっと身近に作りたいという想いが芽生え、現在は料理教室の講師や調理代行などの仕事の傍ら、刺繍作家としても活動中。


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