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【architect】閉じる建築、開く建築

建築家安藤忠雄氏の実質的デビュー作は『住吉の長屋』である

安藤氏と同い年の建築家伊東豊雄氏の実質的デビュー作は『中野本町の家』である

どちらもコンクリートの無機質な壁で外部に堅く閉じた牢屋のような建築だ

内部に設けられた余白(中庭)から眺める空は誰にも邪魔をされない自分だけの空と言える

この2つの建築は現在でも語り継がれる傑作である
時代は高度経済成長期にあり、無秩序に自然が壊され均一な建物が建てられる時代にあって、自分の生活を守るための霹靂としての住宅であった

都市部では住宅が密集し、隙間なく建てられるようになると、どの住宅もいかに近隣の住宅からの目線をかわし、近隣との距離を取るかに注力するようになった

『住吉の長屋』や『中野本町の家』のような中庭形式の家は住宅密集地においては受け入れやすい考え方である

僕自身も『中庭』形式の住宅は、敷地に余裕があれば提案することも多い
なんせ『自分だけの切り取られた空』が手に入りますよ!
というコンセプトの住宅は言葉は悪いが施主のウケがいい
実際に採光や採風の点からも住み心地が良いように思う
規模が大きくなりがちではあるが、設計手法としては比較的やりやすいように思う

このような中庭形式の住宅については、受け入れられやすいし、設計手法としてもある程度出切った印象がある

今僕自身が興味があるのは、住宅をいかに開き住宅を建築にすることである

開いた建築としては昔ながらの八百屋さんや魚屋さんなど、表がお店でそのまま住居と繋がっているイメージだろうか
昔ながらのSOHOと言える形態だ

また長屋のような土間空間はある意味道路の延長のようなもので、昔は気軽に近所の人は土間に入ってきたものだ

街に対して開く建築をつくるには建築自体の作り方以上にそれを使う人間側の意識が求められる
いかに建築を開くかを考えるには、まずは人間のコミュニティに対する考え方を変える必要がある

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