【architecture】窓学|パンテオン
イタリアのローマにあるパンテオンをはじめて訪れたのは大学生のときだ
当時、竹野内豊主演の映画『冷静と情熱のあいだ』に感動してイタリアへ行ったのだ
フィレンツェを経由して訪れたローマはお世辞にも綺麗で治安の良い街ではなかった
地下鉄は落書きだらけ、物乞いやスリは当たり前のように横行していた
しかし歴史都市ローマで見る建築は古代のものであっても圧倒的な存在感があった
王道の観光スポット、コロッセオ、フォロ ロマーノ、スペイン広場、真実の口、トレヴィの泉、サン・ピエトロ大聖堂と一通りローマを堪能したが一際脳裏に焼き付いているのは『パンテオン』である
旅の目的でもあった『パンテオン』は想像以上だった
『パンテオン』は約1900年ほど前につくられた神殿である
高さ4.5mの円筒に直径43.2mの半円球のドームが載っている
ドームの頂部には直径9mの円形の開口が開いている
あまりの大きさに頂部の開口は直径9mもあるようには感じなかった
簡単に言ってしまえば、大きなドームのてっぺんに穴が開いているだけの建築だ
しかし、その無駄を削り落とした建築に人は感動するのだ
太陽からの光は時の移ろいと共にドームの内側を少しずつ姿を変えながら1900年もの間歩き続けている
この頂部の開口にはガラスは入っていない
イタリアの焼き付けるような強い光がコンクリートの壁面を照らす
この建築は『光の建築』である
また雨が降ればここにはそのまま雨や風が入ってくる
この建築は『風の建築』である
また、この神殿で披露された讃美歌を聴いた
この建築は『音の建築』である
このトップライトを窓と言っていいかは分からない
しかし人は日常的に感じている光や風、音を建築というフィルターを通して感じることで感動できることをこの古代建築は伝えている
なんてことはない家の壁面に偶然西日が当たって綺麗だなと思ったことはないだろうか
光には人の心を落ち着かせてくれる効果があるはずである
光を味方につければ建築は最強の武器を手にしたと言っても過言ではないだろう
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