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【architecture】窓学|母の家|ル・コルビュジエ

『窓学』第一回目にご紹介したいのが、近代建築の巨匠ル・コルビュジエの『母の家』である

まずその前にル・コルビュジエという建築家について基本の『キ』くらいのレクチャーを

ル・コルビュジエ(1887ー1965)はスイス生まれでフランスを主な活動拠点としていた
1931年に竣工した『サヴォワ邸』と言う住宅にはコルビュジエが提唱する『近代建築の五原則』が全て表現されている

・ピロティ
・屋上庭園
・自由な平面
・水平連続窓
・自由な立面


もともと組積造と言って石を積み重ねた構造をメインにしていたヨーロッパの建築は、鉄筋コンクリート造と言う今では世界中で使われている構法によって表現の自由を獲得した
コルビュジエ以前からこの構法はあったが、構造を『ドミノシステム』と言う柱と床で支えるものとして明快に表現し、それを使った建築として『サヴォワ邸』をもとに『近代建築の五原則』として発信したのである

この明確でメッセージ性の強い発信は瞬く間に世界中に広まり今をもっても建築の基礎となっている

コルビュジエのもとには、日本から前川國男、坂倉準三、吉阪隆正の三人が弟子入りして学んでいる
彼らが日本に戻り公共建築などでコルビュジエの意志を継いだ建築を日本中につくったのである
また当時の日本の建築家の多くは丹下健三から安藤忠雄をはじめコルビュジエの影響を少なからず受けている


と、ここまでがコルビュジエの基本のキであるが、注目したいのが『近代建築の五原則』のなかの“水平連続窓”である

これは当時のヨーロッパでは考えられないような発明と言っても過言ではない

そんなコルビュジエが打ち出した『近代建築の五原則』を小さいながら余す事なく表現しているのがスイスのレマン湖のほとりにコルビュジエのお母さんのために建てた『母の家』である

私がこの住宅を知ったのは、高校3年生のとき丸善の建築コーナーで一目惚れして買った『a +u』と言う洋雑誌である

当時建築のことは何も知らないしコルビュジエの名前も知らなかった
高校生にしては値が張るが、英語で書かれた文章と美しい建築写真に惹かれてしまったのだ

その中にあったのが『母の家』である
4m×16mの平家建てで屋上が付いているが、別名『小さな家』と呼ばれるようにこじんまりとした住宅である

湖に面して設けられた水平連続窓はレマン湖を額縁から眺めるような窓である
『リボンウィンドウ』と呼ばれるこの窓は長さ11mもあるもので、青々としたレマン湖とアルプスを眺めることができる
風景が美しいのも当然あるがそれを取り込む窓のデザインや大きさも秀逸である

窓辺に添えられたちょっとしたテーブルはコルビュジエがよくやる手法で、ここにコーヒーカップでも置いてゆっくりしませんか?と言っているようである


ただここまで水平連続窓について話してきて、ちゃぶ台をひっくり返すかもしれないが、実はここ『母の家』で一番好きな別にある

屋外に設けた窓(開口)である
敢えて壁を設けて穴を開けて屋外の窓をつくっている
1m60cm角の窓はレマン湖の風景を絵画のように切り取っている
造り付けでつくられたテーブルと椅子が、「ここでゆっくりランチでも食べて」と誘っているようである

何も特別なことをしているわけではない窓であるが、私はこの窓を死ぬまでに一度見てみたいと思っている


今回は【風景を眺める窓】を取り上げてみた
窓にも色々な思想が込められており、窓からのメッセージをこれからもご紹介できればと思っている

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