【architecture】葛西臨海公園クリスタルビュー|谷口吉生
葛西臨海公園は東京都江戸川区にある東京湾を望む公園で、都民の憩いの場として有名だ
東京駅からJR京葉線でディズニーランドのある舞浜駅のひとつ手前の駅で降りる
駅を降りて公園内に入ると真っ直ぐに海までつづく軸線を描くようなメインストリートがある
このメインストリート沿いに水族園や観覧車がある
ゆっくりとメインストリートを歩いていくと、ようやく見えてくるのが建築家谷口吉生氏設計による『クリスタルビュー』である
谷口吉生氏の建築は私のnoteでも度々ご紹介している
谷口吉生氏の建築は水平垂直のラインが美しく、現代的な素材を用いながらも日本的な要素を感じさせる特徴があるように私は思う
さて、葛西臨海公園の『クリスタルビュー』であるが完成は1995年と意外と古い
しかし全面ガラス張りのこの四角い箱は全く古さを感じさせることはない
『クリスタルビュー』というだけあって、内部は展望台となっている
スロープを上りながら内陸側と海側、そして東西方向へ視界が次々に変えながら一筆書きで一周回ってくるというものである
この建築は普通の展望台と違い、登った先端がゴールではなく、展望台全てが展望台であるということ
ぐるっと一周をゆっくり歩きながら移り行く景色を楽しむ展望台なのだ
スロープは当然バリアフリーの意味もあるが歩きながら景色を楽しむためには階段では足元に目がいってしまう
スロープは景色を眺めながら移動ができる優れものなのである
歩きながら景色を眺めるのはとても気持ちがいい
ディズニーランドも見ることができる
東京湾のキラキラ輝く海は都会にあって自然を感じられる場所としては珍しい
とは言え、巨匠相手にこんなことを言ってはいけないのであるが、内部のつくりはナンテコトハナイ
普通と言えば普通なのである
コンセプトは歩きながら眺める展望台
ただ私が思うこの建築のミソは、展望台の用途よりも、ここを通過する『鳥居』的な要素ではないかと勝手に想像している
以前にも寺社仏閣の鳥居や門の『くぐる』という建築における行為についてnoteで記事にしたことがあるが、『クリスタルビュー』の本来の目的は『くぐる』にあるのではないだろうか
葛西臨海公園は非常に広い敷地である
そんな巨大な敷地に対してメインストリートという明確な『軸線』を引く
この『軸線』に沿って水族館や観覧車などを配置するわけだが、その軸線上に『鳥居』を設けることで、その向こう側に広がる海岸と公園を繋げることを意図しているように感じるのである
透明なガラスの『鳥居』をメインストリートから眺めると歩いていくにつれ海が少しずつ見えてくる
ゆるーい登り坂になっているのも海への期待感の演出と考えられる
そしてこの透明な『鳥居』をくぐると海がパーッと開けるというストーリーがあるのではないだろうか
私の主観でしかないが、谷口吉生氏の建築には日本の伝統的な思想が現れているように思う
この建築では『鳥居』や『門』といった“くぐる”
が根底にあるように思う
しかしひとつ合点がいかない事がある
この四角い箱の『鳥居』であるが、その入り口が箱の中心ではなく、中心からズレている点である
『鳥居』であればなんとなく線対象のセンターにありそうなものだ
でもこの『クリスタルビュー』は敢えて非対称となっている
これが何故かは分からないのだが、逆にど真ん中にあると何となくガッチリし過ぎてしまうようにも思う
非対称にすることで、ガラスの軽さや、展望台としての動きのある建築を表現しているのではないだろうか
結果的に出来上がってみるとプロポーションが整っていて自然に溶け込む建築になっているように思う
今回もメンドクサイ視点で考察してみたが、葛西臨海公園へ行かれた際は、こんなことは気にせず楽しんでもらいたい
ちなみに水族園も谷口吉生氏による設計で素晴らしい建築である
バーベキューをしたり、海水浴をしたり、とても楽しい公園である
ちなみに私はサラリーマン時代の営業の合間に疲れるとここでサボっていた
スーツ姿なものだからかなり目立っていただろう
もしスーツ姿のサラリーマンがひとりで海を眺めていたらそっとなぐさめてあげて欲しい
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