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文学フリマ36 い‐58試し読み「オンライン深夜コンビニ前」官能小説合同誌「喪失」

2023年、文学フリマ東京が 東京流通センター 第一展示場・第二展示場Fホールにて行われます。
※入場無料

【文学フリマ公式サイト】
https://bunfree.net/event/tokyo36/


こちらで、サークル「オンライン深夜コンビニ前」にて、SM文芸部の文芸員も小説を執筆致しました。
小説の頒布に伴いまして、頒布予定の全作品の冒頭を特別に、試し読みで掲載致します。


頒布作品紹介 官能小説合同誌「喪失」

処女/童貞喪失をテーマに書かれた官能小説合同誌。
執筆者三人が、それぞれの思いや人生を乗せた、一生で一度しか書けない特別な小説集。

会場頒布価格:1100円(税込み)
通販予定:アリ
※通販価格は手数料、送料が上乗せとなります。


掲載作品「超えていけ、境界線。」

作者:マゾ猫       Twitter:@mazoneco

あらすじ

毒親との日常を過ごす高校生の愛華。
日常から逃れるために通い始めたダンススクールで、講師の遺人にあこがれを超えた感情を持ち始め……。
けして一線だけは越さなかった二人は、先生と生徒、ノーマルとアブノーマルの境界線を超えていく――。

試し読み

 求められず生まれてきた子供は二択だ。必死に世界に求められようとするか、世界を諦めるか。前者の子供は、求められるためなら何でもする。求められたいい子、求められた道化、求められた人物像、そして求められた人生。

 求められたものが、いつしか決められたレールに感じる。人生の答えは、求められた人になりきって生きること。そうしないと、生きていけない。そうじゃないと、この世界に自分の居場所なんて存在しない。そうわかっていても、自分というものを諦めてずっと生きていくなんて、どうしてもできないものだ。

 そんな私に、先生、思い出をください。私が私として生きられるタイムリミットまでの少しの間に、一生忘れられない思い出をください。こんなに大好きになったのは貴方が初めてなんです。朝起きても、夜寝るときも、一日中、二十四時間、ずっと貴方を想って、貴方の事だけ考えて、その時間だけが自分でいれて、自分の人生を歩んでいる証拠になる。だから、一晩でいい、夢でいいから、思い出をください。

 始まりの感情は、憧れを超えたそんな感情だったっけ。

「愛華、イっていいぞ」
「あっ、遺人さん。イきます、イきます……!」

 深夜二時。眠れなくなったからと言っていた遺人さんに、声が聞きたいと甘えてみた。その前に、少しだけメッセージアプリを使って猥談をしていた私たちが、大した会話も無くそうソウイウコト・・・・・・に突入するのは、当たり前だと思った――

〈続きは「喪失」 超えていけ、境界線にて〉



掲載作品 「檻と遊戯箱」

作者:監禁   Twitter:@c37u1_k

あらすじ

性的倒錯記事を書いているライター明夫は、うだつが上がらず編集からもドヤされる日々。ある日招待を受けて母校の学園祭に顔を出して知り合った、文芸部の後輩サヤカから痴漢をされて興奮したとカミングアウトされる。物書きとしての自信を取り戻す過程で、痴漢をすることへの願望の葛藤が生まれ……。

試し読み

1 インターネットカフェ

 今回お送りするのは、20代前半の匿名の女性から届いた、編集部顔負けの体験談である。驚くべきことにこれは実際の出来事だという。

・本棚に突然現れた痴漢
 
薄暗い本棚の前で体を触られ、目の前が真っ白になった。背後からお尻に添えられた手の力が徐々に強くなってくる。

 触られることを期待していたはずなのに、突然起こった出来事への驚きと緊張で身が硬直した。家を出るときには穿いていたストッキングなんかはブースのバッグの中に入れてある。だから、スカートの下はとても無防備だった。
 普段、電車での痴漢には容赦なく足を踏んだり手をつねったりしてる。けど、今日は違った。
 監視カメラも人の目も届かない本棚の間でねっとり触られる。中学生の頃に好きになった作家を追いかけていた結果、作家の性的嗜好に当てられて、こんな状況に憧れていた。
 スカートの上から触っていた男の手が太ももに伸びてきて、の肌に触れる。ぞわりとした感覚の中に徐々に迫られ始めていることに、恍惚とする。肌感を確かめるようにねっとりと触っていた男の手にに力が込められていく。それに伴ってお腹の奥の方にぎゅんと力が入る。それに気付いたのか、男の手がまた上へスライドし始めて、息苦しさを増していく。
 
 スカートの中に入れてきた男の手が、躊躇うような動きをした。おそらく気付いたんだと思う。私がもうすっかり濡れていることに、そしてそれがすぐ分かるように下着を穿いていないことに。

 男は気付いて尚、お尻を堪能するように鷲掴みにしてきた。数年前から丹念にトレーニングをして鍛えてきたから、みっともなくはないはず。男はそのことに気付いているのか否か、少なくとも興奮はしていることが分かるくらい息が荒くなっていた。男の興奮が伝わり、自分の呼吸も浅く、細切れになって、うまく酸素が吸えない。
 鷲掴みにされたお尻は男の手の形に歪み、その皺寄せで膣がわずかに口を開く。公共の空間で性感帯を刺激される独特な興奮があって、軽率に濡れた。ところが膣の中に指を入れようとしてきたときにはさすがに焦った。さすがにそこまで触られるのは想定してない。
「ちょッ……」
 
 悪戯な手を制しながら小声で答えると、男は番号札を見せてきた。そのブースに行くように促される。
私は首肯して男の言うままに歩き始めた。男は私が逃げないように絶妙な距離を取りながら後ろから着いてきた――


〈続きは「喪失」 檻と遊戯箱にて〉



掲載作品 「浅紫のアダージオ」 

作者:全回答   Twitter:@zen_jajauma


あらすじ

部活をやめた。暇になった高校生男子・ヨリが見つけたのは、バレエを習う美しい同級生だった。10年たっても追いかけたいあの子との、暴力と初期衝動。

試し読み

1 プリエ

 プリエには、「折りたたむ」という意味がある。跳躍の前などに行う、ひざを折る動きをさす。あわせて上半身をゆったりと動かし、指先や視線まで気を配ることが求められる。ウォーミングアップ後すぐに行われる、最初のバーレッスンのメニュー。

 放課後はすぐに帰る。授業中はしばしば寝ている。友達は少ない。こんな女子が周りから舐められたら、生きていけないってわかっている。一番簡単なのは髪を染めること。それはできないから、せめて放課後までは、ポニーテールにまとめておく。力いっぱい潰してシニョンにするのは慣れていて、鏡なんてなくたって三分もかからない。

 私が視線を集めるのは教室ではない。もっと大きくて、がらんどうで。リノリウムのゴム質のにおい、ファンデーションの甘苦いにおい、人間の汗のにおいがする舞台。照明の熱に照らされた時のために、学校の私は息をひそめる。誰にもみられないように。
 
 北陸の片隅、特急が止まる程度のちいさな地方都市には、私立高校、まして、うちみたいな中高一貫のところなんてあんまりない。だから、高校一年生の春といえどもみんな知った顔だ。

 学校の子が私の踊るところを見る機会はほとんどない。あるとすれば、毎年夏休みの終わりに、市内のバレエ教室が一堂に集まる「洋舞祭り」。校内に何人か、週一回か二回の、のんびりしたお教室に通っている子がいる。そういう子たちに話しかけられても会話は続かない。コンクールとか出るの? そうなんだ、すごいね。私は県民会館のロビーのくたびれた赤いじゅうたんを見つめ、彼女たちは彼女たちの群れに帰っていく。同じ舞台で演じられる、不揃いで楽しそうなマズルカや花のワルツ。体形を気にすることもなく差し入れのお菓子をほおばる無邪気さが、少しまぶしい。
 だけど私は、少なくともメインのソリストとして出演する必要がある――

〈続きは喪失 浅紫のアダージオにて〉





お品書き

  1. 官能小説合同誌 「喪失」 1100円(税込み)頒布予定

  2. 全回答作 写真&小説作品 「49号棟の修道女」 1000円(税込み)頒布予定

    ※「喪失」と「49号棟の修道女」を合わせてお買い上げいただきますと、定価2100円が、100円引きの2000円での頒布となります!
    ぜひ合わせてお買い求め下さい!


無料頒布予定

SM文芸部活動日誌(SM文芸部の部長、副部長SS書き下ろし小説掲載名刺付き)

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2023年5月21日の文学フリマ東京36、ブースい-58にて、皆様のお越しをお待ちしております!!!!!!


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