<11月と空>自分の時間に浸るということ
いつからか、何を考えるともなく時間に浸る、そんな過ごし方が苦手になった。
未知の将来への不安、自分の存在意義への不信、幸せって一体何なのだろう、という答えのない問いへの思索。
そんなものたちに囲まれ、正体の見えない不安に怯えながら、これでもかというくらい自分自身を見つめていた日々。
思えばそれは、「若さ」の一片だったのかもしれない。
わずかに開いた窓の隙間からバンコクの空のかけらを見上げながら、理路整然とした考え事をしている自分、さざ波一つ立たない自身の心を発見して、ふと、そんなことに気づいた。
「自分の時間をどこかに置き忘れてきてしまったかな」
***
旅はいつも、自分が忘れかけていたものを思い出させてくれる気がする。
日常に埋もれ、ストレスにまみれ、自分を見失いかけているみんなが、着の身着のまま旅に出て自分の中の古く新しい自分と再会する―――そんな日々が一日も早く戻ってくるといいなと、出会ったこともない世界中の人たちのことを想いながら、ふと、願った。
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