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一目惚れ

当時の私は何もかも滅茶苦茶な日々で、今よりももっと感情が乱れていたと思う。
色んなサイトから相互リンクして、ある女の子に出会った。
漫画で言うと『NANA』の『大崎ナナ』みたいな、格好良くて面白い子。
ある日その子が私の家にDVDだかビデオだか持ってきた。
「文化祭でX JAPANの『紅』やったんだー」って。

再生され始めると、どうやら歌おうとしているのは友達ではなかった。
怖い程の圧倒感と何処にでも響き渡るくらいの声で歌い始めた彼女。
私は食い入るように画面を見つめ、耳を澄ませ、目の前で歌うその子に一目惚れした。
あの時の高揚感と鳥肌が立ったのは未だに忘れられない。

そしてあろうことか、友達に「その子紹介して」と頼む有様だった。

そうして私達は出会った。
そこから本当に少しずつ少しずつ打ち解けていった気がする。
勿論カラオケも何度も行った。カラオケで歌わせるのが勿体なかったくらい。
彼女を好きになった事もあった。見事に玉砕したけれど、私の中では良い思い出だ。
私の部屋で撮った写メに幽霊が写ってるとかで怖がってみたり、どっちも性格に難ありな人を好きになって相談し合ったり。
私はhideが好きなんだけど、誕生日にアルバムをくれたり、凄く可愛い手紙にhideの画像を貼っていてくれたり。
あの時の手紙はもう無いけれど、母の財布に変えるまでずっと持っていたよ。

父が亡くなり福岡に引っ越して何年か経ったある日彼女から動画付きのメールが来た。
そこには私が地元で一番見たかった、見たいと散々言ってたところを撮ってくれていて、その優しさを思い出すとこうやって書いてる今も涙が止まらない。
地元に帰って、私の住んだところまでわざわざ連れて行ってくれて、もう違う誰かが住んでたけど、階段で号泣する私を彼女はきっと慰めてくれていた。

他人を思い遣る心と、頑張りすぎちゃう真面目なところも、いつも何かに縛られ苦しんでも耐えている彼女も、私は誇りに思うよ。
彼女が私に優しく思い遣ってくれたように、私もそれを返したい。
いつも助けてくれているから。

私も好きなバンドや歌手だっているけど、それとはまた違う、暖かい声を感じ取ってくれたら嬉しいなと思う。

彼女の思いやりと優しさを胸に。

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