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【推し活】君に出会ってから、2度めの夏がやってきて

あの日、気になり始めたのも夏だった。
偶然目にした試合でぐっと掴まれて、気になりだして。
山の上の練習場まで行くようになったのも、その頃。

練習後のファンサービスで――最初は目を見て話すことも出来なかった。
「写真を撮らせてください」「ありがとうございます」
これしか言えなかった。
差し入れとして持っていったお菓子を見て、「現金?」なんて冗談っぽくいわれたり。
「現金だったら、無印の袋に入れません」
そんなことを言ったよね、私。
その時、心臓はすごくドキドキしていて。
声なんかうわずってるんじゃないかって思うほど。
しかも、目の前にやってくる前からずっと、ドキドキしながら待ってたんですよ。

その後、オンラインファンクラブにも加入して。
月に1度のオンライン交流会でも話すようになって。
山の上の練習場でファンサービスを受けながら。
次第に喋れるようになってきた。

もともと恋愛に対しては臆病で、経験値が年齢の割には低い。俗に言う『喪女』というやつなのかもしれない。
子どもの頃に受けた出来事がそのままトラウマになって、異性と付き合うことに影を落としているほどだ。
「君はひとりでも大丈夫だよね?」
そんな言葉を言われた経験もある。それが現実化して、『ひとりで生きていいける』世界を作り出せるほどだった。
それは、「誰にも愛されずに生きていくこと」にほかならない。結婚する必要性もないから、この世界で生きるしか出来ない。

だけど、君に出会ってしまった。
喋れるようになって、いつもみせる笑顔にやられて。
いつの間にか好きになってしまった。
この気持ちは、他の誰にも言えない。もしかしたら、墓場まで持ち込むつもりかもしれない。
気づかれたらアウト。人に知られちゃいけない感情が生まれてしまったのだから。

だからこっそり気にかけている。
オンラインのときも、試合の時も、練習見学のときも。

私が思ってることは、常識では理解されないと思い始めている。
思い詰めないでね、と言われても仕方がないくらい。
好きになってしまったから、どうしたらいいのかわからない。

好きになっていく気持ちに気づくのと同時に、きちんと喋れるようになった。
回数を重ねた影響かもしれないけど、もっと上手に喋れるようになりたいと思ったから。上手じゃなくても、私なりの形でいいからちゃんと話せるようになりたいと。

思い始めた感情が『好き』というものだけど、現実には「かなえられない」ことになっている。
出会った頃には彼が既婚者だったから、「推しとそのファン」以外の関係でしかないこと。
どんなにガチ恋・リアコになっても世界は変わらない。これが現実。

それを認めたら、腹落ちした。
彼の幸せを願うぐらいしか、現実には出来ないと――

自分の願いとしてはかなえられないけど、好きな人の幸せなら願うことも、祈ることもできるのではないだろうか。
そう思ったら、すごく楽になった。
『好きだから』で暴走して、許されちゃう感情は若い子の恋愛だと思っている。いろんな世界でのガチ恋・リアコの皆さんのような。
でも、私はそれが出来ないのでただ好きな人の幸せを祈るだけ。選んだ人も、何もかも。

叶わないとわかっているから、ひたすら祈るしか出来ない。
好きな人が選んだことだから、すべて願うしか出来ない。

そう思うように、生きていきます。


追伸:このテキストを読んでたらすごく考えさせられたので、紹介しておきます。


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