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彼女

彼の後をついて入ると
何と表したら伝わるだろうか。

部屋を入った瞬間、目に入った物は
鋭い殺気ついた刃物のような目線が私を刺した。

彼のお父さん、元嫁のお父さん、子供2人、元夫婦共通の先輩。

私は息を飲んだ。

想像していた元嫁とは正反対で見た目からして、圧力が凄い、そして彼より更に年上のおばさんだった…。

もっと、もっと綺麗な…キャリアウーマンのような女性だったら、そこで敗北を感じたに違いない。


元嫁は、私の事を「彼女」と呼んだ。


「彼女が、この人と付き合ってる彼女で間違いない?」

「はい。」

「聞いてると思うけど私達離婚してるけど一緒に暮らしてるの。彼女に、この人の事面倒見れる?別に縁を切ってあげても良いけど養育費、慰謝料は貰いますから!
その際に、彼だと信用性が無いので彼女にサインしてもらいます!条件は、それだけ!彼女大丈夫?」

いきなりの質問に冷静さを装い聞き返す。

「あの、離婚されているのに彼の恋愛は自由だと思います。元嫁夫婦間の事は分からない、そして私が署名する意味が分からないです。他人なのに。」

震えていたかもしれない。

声が。

「は?自分ら勝手に好き好きで良いかもしれない!こっちには子供がいるの!あなた達、子供が出来てもおかしくない付き合い方してるよね?子供が出来たらどうするの?」

答えになっていない。

元嫁も動揺していたのだろう。

影で思い詰めていた気持ちが爆発したのだろう。

私と同じ。

誰にも言えない、相談出来ない悩みを当事者にぶつけ合っている。

彼は私のかたをもつように
「俺は養育費も慰謝料も払う、でもそれは、すかいには関係ない事だよね。署名もしなくていいよ。理不尽じゃん。今日も来てくれてるのに。」

動揺を隠しきれなかったのか

「手が震える。」そう言って大量の薬を飲んだ。

この人…大丈夫なのかな。

「あの、いいですか。私は真剣に付き合ってます。子供が出来たら育てます。私達は間違った事をしていません!」

ずっと、彼にも元嫁にも、世間にも言いたかった言葉。

スッキリした。

彼も私の言葉に同意をした。

「俺も。だから、すかいを巻き込みたくない。子供の事はちゃんとするから。」


「あっそう。彼女知ってる?この人、彼女とも付き合っておきながら私にも求めてきた。それも何度もね、あなた、こんな彼氏で大丈夫?悪い事は言わない、彼女にはもっと素敵な人がいるはずだよ。」


あぁ。
聞きたくなかった真実…。

だよね、ひとつ屋根の下ってさ
そういう事だよね。

私の心が一気に崩れ落ちた瞬間だった。

彼の顔も見れなくなった。

何も聞こえない。


「帰ります。」

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