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くまざわさとみ
2017年12月2日 21:26
22歳になるまで、わたしは自分のことを特別な子だって思いこんでいた。 でも、絵が上手かったり、足が速かったり、これと言って才能があったわけじゃなくて、結局のところ自分が平凡な人間だと気づいたのは、思う存分若くてきれいな時間を使った後だった。 だれのせいでそう思い込んだかと聞かれたら、間違いなく、8年前に死んじゃったママのせいだった。 子供の頃はそれでも絵を描くことが好きで、アニメの
2017年11月19日 20:30
玄関を開けると、ギターの音が聞こえくる。 その次に見えるのは窓際のソファに寄りかかる、ご機嫌なあの人の俯いた顔だった。ただいま。おかえり。今日の夕飯はなににするの。彼はそう問いかけながら、曲とも言えない音をいくつか鳴らして、私は、肉じゃがとカレーならどっちがいい、と冷蔵庫を開けながら聞き返す。しばらく手を止めて悩んだ後、カレーかな、といつも通りの答えを呟いた。それから、今度はちゃんと私でも知っ
2017年10月29日 20:51
真夜中、巨大な蜘蛛を見た。 それは掌を広げたのと同じくらいの大きさで、ベッドの真横にあるテーブルの隅にぴたりと静止していた。自分でもその気配に気づいて目を覚ましたのか、もしくは蜘蛛の夢を見たから起きたのか、よくは覚えていない。けれど、その後、テーブルから床にかけてゆっくりと下りる様子を、はっきりと視線の先に捉えていたから、私はそれから探すのも怖くて眠れなくなってしまった。 二週間