見出し画像

4月になって多くの日本企業では2022年度の新年度が始まりました。テレビなどで入社式の様子が放映され、新年度の始まりを実感された方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。ただし、テレビで報道されるような大規模な入社式や、新年度に合わせて行われる大規模な人事異動は、実は "大企業" ならではのイベントです。この記事では、新年度が始まるこの機会に「大企業」について考えてみます。

大企業ってどれくらいあるの?

日本における「大企業」ですが、実は定義がいろいろあります。

まず、法律・制度面で見ると「中小企業基本法」という法律で中小企業者、小規模企業者の定義が業種ごとになされており、大企業はそれ以外の企業という定義になっています。多くの業種では資本金3億円超、かつ従業員300人超の企業が大企業であり、卸売業、小売業、サービス業など比較的企業規模が小さい業種では資本金5,000万円超 or 1億円超、かつ従業員50人超 or 100人超となっています。経済産業省が出している統計によると、大企業数は割合にして約0.3%で、およそ1.2万社存在します。従業員数は約1,200万人で日本の労働力人口の約2割です。

一方、厚生労働省などの統計では「常用労働者1,000人以上」を大企業と定めており、日本に約3,400社あり常用労働者は約650万人、労働力人口の約1割です。前述の「資本金3億円」「従業員300人」というと、感覚的にあまり大きくないと感じる方もいるかもしれませんが、正社員1,000人以上であれば多くの方の感覚と合致するでしょう。

また、B2Bのビジネスで企業をターゲティングする場合、戦略的大規模顧客として大規模な営業チームを作って対応するのは多くてもこのうち500社程度 (或いはもっと少ない)です。業種ごとにシェアを持つ有名企業、上場企業などを中心に選定されることが多いです。

このように、大企業と一言で言っても、文脈によって定義は一定ではありません。

大企業のメリット、デメリット

大企業について、その特徴を考えてみたときに経営目線、社会からの目線、従業員からの目線で思い浮かぶようなことをざっと挙げてみました。

メリット
● リソース (資本金、キャッシュ、従業員、設備等) をたくさん持つ。そのため従業員に取っては高収入、福利厚生、教育制度の充実等が一般的に享受しやすい。
● 設立からある程度時間が経っており社会的信用がある。
● 経営制度が整っており仕組みに従った経営が行われる可能性が高い。
● さまざまな専門性を持った優秀な人材を(世界中から)集めやすい。
● 中長期的な活動を行う余裕がある。
● 世の中の環境変化に耐え忍ぶことができる。

一方、企業が大きいが故のデメリットも想定されます。

デメリット
● 部門が多くお互いに役割が細分化されサイロ化、縦割りになりやすい。
● 経営陣と現場との距離が遠くなりやすい。
● 前例が重んじられ、新しいイノベーションが生まれにくい環境になっている可能性がある。
● 動きが遅い。意思決定に時間がかかる。

なお、いずれの項目もすべての大企業に当てはまるというわけではなく、あくまでもステレオタイプな内容です。たとえば収入についてもスタートアップで儲けている企業の方が高い場合があったり、有名大学の学生も最近では大企業よりもスタートアップなどのより小さな企業を志向する傾向も出てきています。

大企業の社会的役割

このようにメリットとデメリットがある大企業ですが、社会の中での意味について考えてみたいと思います。

前に掲げた大企業のいくつかの特徴は、つまるところ「リソース (資本金、キャッシュ、従業員、設備等) をたくさん持つ」という性質に集約されます。つまり大企業と中小企業を分ける定義からくるものです。他の特徴はリソースを多く持つが故に導かれる結果であると考えることができます。

日本の大企業が持つリソースは、多いところでは数兆円にも及ぶ資本やキャッシュ、30万人を超える従業員等、1社が持つリソースだけで社会に十分大きなインパクトを与える規模のものです。グループ/系列会社まで入れれば、「日本のGDPの1割を支配する」という規模のところまで出てきます。従って、このような大企業が行う企業活動、決定は社会に大きな影響を及ぼします

大企業は社会の「ダム」機能を担う

企業が持つリソースは、川に例えるとダムで川をせき止めて水を貯めている状態です。ダムの下流には社会があり、企業から影響を受けると考えてください。企業に入ってくるリソースは上流に降る雨、企業から出ていくリソースは放出される水です。大企業であれば大きなダムで大量の水を蓄えています。

たとえば、環境の変化で上流に雨がふらなくなっても、大企業であればダムの放出量を調整することで、下流にある社会にしばらく影響を及ぼさずに過ごすことができます。実際の社会で起こることとしては、不況になっても従業員の賃金を払い続けることができたり、原材料価格が上がっても価格転嫁をせずに商品を同じ値段で出荷し続けることができたりします。

このように、大企業はさまざまな市場環境の変化に対して、社会に直ちに直接的な影響を与えずに緩衝材となってくれる役割があります。そのため、大企業の経営者は世の中の様々なことに気を配り、意思決定をする場合には自社の決定が社会に与えるインパクトも十分考える必要が出てきます。加えて、大企業が持つ豊富なリソースを使って社会インフラを整える、文化的貢献をする等の社会貢献活動も求められます。これらはいわゆるCSR (Corporate Social Responsibility)と呼ばれるものです。

最近では温暖化など、人間活動が地球環境に与える影響が大きくなってきていることもあり、企業がサステナブルな社会の実現に大きく関わることが求められてきています。企業もESG経営、SDGsの実現を経営戦略の中に入れ込むことが必須となっています。特にリソースを豊富に持つ大企業は、社会のインフラとしてこれらのことに積極的に関わって責任を果たす必要があります。私が所属する富士通でも、企業のパーパスの中にサステナブルな社会の実現が含まれています。

大企業に属する1従業員としても、日頃からこれらの社会的責任をどう実装していくかを考える必要がある世の中になっていきそうです。

それではまた!

関連記事:


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?