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"常識" を見直してみる

皆様、今年のお盆休みはいかがお過ごしでしたか。40℃に迫る「酷暑日」が連続したかと思えば、巨大でゆっくりな台風が2つも日本列島を直撃したり、ちょうど帰省帰りのタイミングで東海道新幹線が止まってしまったりと、大変な目に合われた方もいらっしゃったかもしれません。

私はたまたま東京からでない生活をしていたため直接の影響はありませんでしたが、今回の一連の出来事を見ていて、いろいろと考えさせられました。今までは「こんなの常識」と思っていたことでも通用しないこと多くなってきています。そんな例をいくつか見ていきましょう。


エアコンを利用する習慣

まず、酷暑を安全に乗り切るためには「ずっとエアコンをつけっぱなしにすべき」という話です。

気温上昇でよく引き合いに出されるのが、過去30年平均からの気温の上昇トレンドで、2022年夏(6〜8月)は過去30年平均からの偏差は+0.91℃、長期的には100年あたり1.19℃の割合で上昇しているといいます。このような数字を聞くと大したことがないように思えるかもしれませんが、平均値での議論は個別ケースの偏差が小さく見積もられすぎる傾向があります。特定環境下では、全体の平均値よりも何倍もの偏差が出ることが知られています。

出典: 気象庁「日本の季節平均気温」

実際には、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都といった大都市で1950年代から1970年代にかけて、日本の全国平均よりもさらに+1℃程度偏差が大きくなっていたり、最高気温よりも最低気温の上昇がさらに大きかったり、1983年頃の東京の夏の最高気温は2023年の今より5℃程度低かったことを考えると、特定環境下 (例えば夏の日中の炎天下や、断熱性能が高くない戸建ての2Fの締め切った日当たりの良い室内等)では、30~40年前よりも5~10℃気温が上がっていることも考えられます。

そのため、東京だけでなく札幌などの北海道であっても、真夏は一日中エアコンをかけていないと熱中症になってしまうことも多くなってきています。年配の方は「冷房は体に悪い」「電気代がもったいない」「空気の入れ替えが必要」といってエアコンをこまめに切りたがりますが、現代ではこれらはどれも「過去の思い込み」「非常識」となっています。

「エアコンをつけっぱなしにするとどれくらい費用がかかるか」については、エアコンメーカー比較サイトで実験をしている例があります。部屋の広さや家族構成、家の断熱性能などの様々な設定条件や燃料費相場によって費用は異なってくるのですが、ざっくり「ひとり1日ペットボトル1本分の費用」くらいと理解しました。また、エアコンをこまめに切る場合とつけっぱなしの場合は、条件によってどちらの消費電力が上回るか違ってくるようですが、その差はせいぜい10~20%程度で、大した差ではないようです。

熱中症に一度なると、白内障発症リスクが上がるなどの後遺症があることが最近は分かってきています。また、室内温度は日常生活における快適性の根本にもかかわってきます。1日ひとりペットボトル1本分の費用で熱中症を回避して、かつ快適に暮らせるのであれば、それくらいの費用はかけてもよいのではないでしょうか。

我が家はペットが居ることもあり、昔から空調費用にはコストを割くようにしています。ちなみに、我が家では2017年製の定格消費電力1.3kW エアコンを一日中つけっぱなし、ノートPC 3台を一日中つけっぱなしにしていますが、一か月の電気代は8,000円程度 (2023年6月実績)です。一日当たりの電気代はすべて合わせて270円くらいでした。

休暇の取り方

2つ目は、大型休暇の取り方と過ごし方です。今年は新型コロ ナ明けで初めてのお盆ということもあり、昨年対比で渋滞の発生が130~140%の増加率、50kmの渋滞も発生したようです。

これから日本は人口が減少していくので、繁忙期の混雑を解消すべく鉄道や高速道路網をさらに増強しても、長い目で見ると社会的負債になってしまう可能性があります。

そもそもなぜ休暇の時に大混雑になるかというと、国民全員が一斉に休暇を取るからで、夏休み、年末年始休暇、ゴールデンウィークといった大型連休を国民一斉で実施する代わりに、休みを分散するようにすれば無駄は発生しません

「お盆や年末年始に田舎の実家に帰る」というのも、何も「昔からある日本文化の伝統」というわけではなく、1950年代の高度成長期に本格的に実施された地方からの集団就職・就職列車、1960年代からの新幹線や高速道路網の整備による社会の行動変容が、古来からある年末年始やお盆の行事と混ざり合って出来た、割と新しい習慣でしかありません。

日本人は働き過ぎで労働者は自分では有給休暇を取ることが難しいため、国が休日を決めて強制的に休ませる、ということで、日本は世界でも休日が最も多い国のひとつとなっています。しかし、現代では有給休暇の取得も容易になってきているため、休日を減らして有給休暇を分散していくような社会に変容していく必要があるかもしれません。私自身も、旅行に行ったり家族と会うときは、敢えて大型連休は外すようにしています。

グローバルな環境で仕事をしていると、休みの取り方は結構国民性が出ていて面白いです。ヨーロッパの人は2~3週間連続して休む人も多くいます。また、クリスマス休暇、正月、旧正月等、国によって大型連休の時期も微妙に異なっているので、シフトをうまく組んでおかないと仕事にならない時期が2~3か月出来てしまうこともあります。まさに多様性を考えての休暇の取り方を考える必要があります。

休暇の過ごし方

休みの日には、夏は外でスポーツをしたことも結構あったかもしれません。しかし、日中の気温が炎天下で40℃にもなる時代になると、日中に太陽の下でスポーツをやることは自殺行為になりかねません。

いまだに、子供に日中の炎天下で野球などのスポーツをさせているケースも見受けられます。スポーツは早朝、夕方かナイターで行い、日中はエアコンの利いた部屋でゆっくり過ごすように変容していく必要がありそうです。

新たな試みへの批判

速度がゆっくりな台風6号、7号の日本列島への接近に伴い、鉄道各線や航空機は計画運休することをあらかじめ発表しました。最近では災害に備えた計画運休もだんだん社会に受け入れられるようになってきていますが、一方、マスコミでは計画運休への批判報道も、今回やはり出てきました

この手の新しい取り組みは、完全な形で対応できなかったとしても「よくチャレンジした!」と勇敢に実施したことを褒めるべきであるのに、日本の文化は面白いことに災害や外的不可抗力についても、無理繰り理由をつけて誰か身近な人に責任を取らせたい風潮があるようです。いわゆる「犯人捜し」です。

「犯人捜し」が組織や団体で行われてしまうと、従業員はリスクを取ることを嫌い新しいことに挑戦しなくなります。しかし、残念なことに「犯人捜し」は日本の企業や団体ではまだまだ横行しています。

本来は、「誰 (Who)」が悪かったのではなく、「なぜ (Why)」ダメだったのか、を徹底的に調べて、「失敗から学ぶ」ことが、次の成功につなげることには重要です。しかし、「犯人捜し」をしたがる人は、犯人が見つかるとそれで満足してしまい、どうしてダメだったのかは追求せずにおわってしまうことが多いようです。こうして、犯人だけ断罪され、何も学びがないまま再び同じことを繰り返したり挑戦しなくなる、という悪循環が生まれます。

「誰 (Who)」から「なぜ (Why)」へーー日本の文化の変容が求められています。

住居の構え方

最後は住居の構え方です。昔から賃貸がいいか購入がいいかについては論争があり、これは人によって事情も異なってくるので一概に答えが出ないものです。一方、社会の変容に従って求められてくる要件もあります。

日本は昔から、市街地の境界があいまいなまま市街地を全国に広げてきました。しかし、この先の人口減少をにらみ、電柱、上下水道、ガスなどの広がりすぎた社会インフラをどこかで畳む方向に切り替えることになるでしょう。また、持続可能な社会の実現に向けて、スクラップ・アンド・ビルド方式から、一回作ったものを数百年使うような環境にやさしい住居に変えていくことが求められます。

すると、住居は間取りのような大きな構造を個別カスタマイズするのではなく、なるべく標準的で長く使える間取りを作ることになります。また、断熱性能が高く環境負荷の低い作りにする必要があることは言うまでもありません。

そして、環境性能という意味ではマンションのような集合住宅は多くの居住者で大きな投資をすることも可能になるため、いろいろなメリットがあります。たとえば、断熱性や気密性も外側に接している面が戸建てよりも少ないため確保しやすい、防災、防犯や汚水処理、さらには介護サービスも集中的によりよい設備を入れることが可能です。

現在は住宅購入は約8割が戸建てを選択、集合住宅に住む世帯数は約4割に留まっていて、地方に行くほど戸建ての割合がさらに増えますが、持続可能な社会の実現を考えた時に、住戸の形も一考する価値があるように思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!では、また!

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