ニワトリの反抗期と親の気持ち
飼っている7羽のニワトリのうち、1羽が反抗期を迎えている。
その子は一番に安産で生まれて、一番かわいがってきて、一番なつっこい子だったから大ショック(笑)
(笑)なんて言っているけれど、本当は反抗期がきたと飲み込むまでにかなり時間がかかった。涙もぽろぽろ出た。数日は寂しさと、裏切られた気持ちをズルズルひきずった。
ニワトリのお母さんである私は、育児ならぬ「育鶏」に絶賛お悩み中だ。
***
反抗期を迎えているのはオスのきぬちゃんだ。
きぬちゃんが反抗期だと分かったのは、自身の出産を終え、退院してすぐのことだった。
病院には4泊5日いて、しばらくニワトリと会えないことを少しは気にしていた。しかし、これまで過ごしてきた濃密な時間があるのだから、たった数日離れただけで私のことを忘れてしまうことはないだろうと思っていた。
蓋を開けてみれば、それは簡単に裏切られてしまった。
久しぶりに帰宅してニワトリたちに挨拶をすると、きぬちゃんは私に向かって猛アタックをしてきたのだ。ズボンの裾に必死に食らいついて、放そうとしない。放したと思えば、両脚でそれはそれは見事なキックをくらわしてきた。まるでプロレスラーのとどめの一発。
きぬちゃん以外のニワトリは一回り大きくなったように見えるだけで、態度などに変化はなく平和だった。明らかにきぬちゃんだけがオラオラしている。
なんということだ。
それからというもの、毎日がそんな感じになってしまった。エサをやっても、撫でようとしても、全然ダメ。きぬちゃんはオラオラして機嫌が悪そうにしている。
性関係が成熟してきて、オスがメスを守らなければいけない任務を負っていることは重々承知だ。群れのリーダーとして責任が重いのは分かるけれど、敵対象にお母さんまで入れなくてもいいのに……!
完全に想定外。
とにかくショックで、悩んで、へこんだ。ここまでかわいがってきたきぬちゃんに、バッサリ一方的に関係性を絶たれた感覚になった。
***
そんなこんなでしばらくは冷静になれなかった。先日知人とお茶をしたときも、ついついその話を持ち出してしまった。
「ニワトリの1羽が反抗期で」
そんな会話をしているとき、一つのことにふと気が付いた。私は悲しんでいるようで、実はきぬちゃんの反抗期をある意味で喜んでいる気もする、と。
自分で自分を疑った(笑)
恐らくこの喜びというのは、きぬちゃんの成長をたっぷり感じ取れているからなのだと思う。卵から産まれて、ふわふわのひよこ時代をラブラブ過ごして、ようやくレディを守れる立派なダンディメンになったんだね、と。
もちろん最初は心のやり場もないほど悲しかったけれど、そもそも親の役目というのは、子どもの発育と発達の手伝いをすること。いつまでも親とラブラブしていることだけが、きぬちゃんにとっての幸せや成長ではないはず。
そのことに気が付いた私は、少しだけ肩の重荷が取れて、親の気持ちというものを初めて感じたのだった。
反抗期の子を持つ親の気持ちは複雑だなあ。
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