見出し画像

SKGのコミュニケーション術から生まれたブランディングデザインを振り返る【10周年企画】

デザイン事務所SKGは、2014年よりブランディングデザインを開始し、今年で10周年を迎えます。お客様の潜在意識に響く提案をしたいという思いと、代表の助川の名に「助」が含まれていることから、「デザインで本当の助けになる」をミッションに掲げ、お客様に支えていただきながら、10年続けることができました。

今回のnoteではSKG代表の助川に、デザインの仕事を振り返りながら、これから挑戦していきたいこと、また2024年7月23日(火)から開催される10周年の展示会についてお話を聞いていきます。

京都での学生時代やGRAPH時代から繋がるSKGの10年間の仕事

– 10周年を迎えてどのようなお気持ちですか。独立した当時を振り返り、感想を教えてください。

助川:大学時代にデザイナーを目指すと決めた際に、いつか自分のデザイン事務所を立ち上げたいと考えていました。しかし、勤めていたGRAPHから独立する際には不安でいっぱいでした。展示会の準備に際し、改めてこれまで携わった仕事を見返すと、多くの方々に支えられて10年続けることができたのだと感じています。

これまでのSKGの10年は、学生時代から独立までに吸収してきたものを活かし、仕事をしてきた実感があります。大学生の頃はたくさんの書物や展示会はもちろんのこと、大学や京都の近しい先輩方の活動に多大に影響を受けたように思います。また、GRAPHでは印刷術や仕事の向き合い方を学ぶことができました。

「デザインで本当の助けに」を心にとめて携わってきたプロジェクト

 ブランディングデザイナーとしての活動で印象に残っているプロジェクトを教えてください。

生産者、お客様、社員・スタッフの三者をそれぞれ円で表し、三つ巴をモチーフにパッケージデザインを展開

助川:独立当初から「デザインで本当の助けに」を心にとめ、お客様の持つ課題の前提を疑うことをデザイン前のコミュニケーションとして大切にしています。

独立してすぐに携わった、阪急オアシスのプライベートブランド「阪急の味」のパッケージデザインのリニューアルは、その手応えを感じたプロジェクトでした。

僕の役割は、当初すでに完成していたイラストのキービジュアルを商品のパッケージデザインに落とし込むことでした。

しかし、食材は和から洋まで多様で、パッケージの素材も様々です。同じイラストを用いて、各商品が美味しそうに見えるパッケージデザインを作ることは難しいのではという意見が出て、進行が止まってしまいました。

そのときに、僕から当時の阪急オアシスの千野会長と直接お話をさせていただきたいとお願いしました。プロジェクトへの思いを伝え、デザインを抜本的に変えることを提案させていただいたところ、千野会長はデザインの変更の決断をしてくださいました。

お客様の悩みに真剣に向き合い、提案することが、デザイナーとして自分に求められているスタンスなのではと手応えを感じたプロジェクトでした。その後も「デザインで本当の助けに」を胸にお客様と向き合い続けています。

 株式会社若廣のブランド「すしべん」の仕事も「デザインで本当の助けに」という思いで、ブランディングデザインに向き合い続けているお仕事ですよね。

寿司文化を日常に取り込んだお弁当をコンセプトにネーミング・ロゴ・パッケージデザインなどをご提案

助川:すしべん立ち上げの中心人物である若廣の沖田さんとは長いお付き合いをさせていただいています。すしべんのブランディングについては何度も議論を重ねて一緒に作り上げてきました。

ブランディングのリニューアルを提案する際に、若廣のブランド「すしべん」の一番に伝えたい思いは何かを整理しながら、沖田さんとブランドを人に例えながら話しました。

お客様のこれまで考えてきた「ブランディング論」もありますが、時には何を信じて良いか分からなくなってしまうこともあります。一緒に議論をし、これまでとは異なる視点を伝え、新しい発見を得ながら一緒にゴールに向かうよう取り組んでいます。

すしべんは、まだまだ伸び代があるブランドだと感じています。寿司文化を日々のお弁当に落とし込むというコンセプトを元に、若廣のみなさんとさらにアップデートしていきたいですね。

デザインを見る人に向けて遊び心を忍ばせるSKGのコミュニケーション術

 SKGの強みであるコミュニケーション術について教えてください。

助川:お客様とのコミュニケーションだけでなく、デザインを見てもうらう人に対して、制作物から何かしら感じ取っていただけるようなコミュニケーションを意識しています。遊び心を持ち、気づくとちょっと嬉しくなる仕掛けがあるデザインがSKGらしさかもしれません。

展示会のポスターやチラシは、単に会期や場所などの情報を伝えるだけでなく、グラフィックデザインを通して展示会の魅力を伝え、お客さんが「面白そう」と感じ、足を運んでもらうことが目的です。いわば主催者とお客さんのコミュニケーションの仲介役を担います。

2019年に千代田区立図書館で開催された「アートになった猫たち展」では、キービジュアルに特徴のある猫たちを散りばめて動きのあるデザインを考えました。

展示作品から切り抜いてコラージュしていますが、元々の作品にあった猫にまつわる話から切り離して、レイアウト上でそれぞれの猫にストーリーを作っています。絵画の人物と視線が交わされたり、気ままに文字の上でくつろいだり。タイトルロゴの「猫」の字は大胆に漢字から逸脱しています。

実はタイトルが登場する各媒体によりすべて猫の表情を変化させています。チケットのデザインでは、「猫」の文字が招き猫の手になっているんですよ。気づく人は少ないかもしれないけれど、細部に遊び心を込めてデザインしています。

 これまでのnoteでも「遊び心」はSKGの仕事のキーワードとして頻繁に出てきていますね。

助川:学生時代に読んだ佐藤卓さんの著書『クジラは潮を吹いていた。』は僕の「遊び心」のルーツかもしれません。

有名なクールミントの板ガムのパッケージデザインは、ペンギンが一匹だけ手をあげているんですよね。見た人が手をあげたペンギンに気づいて、ちょっと嬉しくなり誰かに言いたくなるような、デザイナーのこだわりが面白いと当時感じたのを覚えています。

SKG独自のブランディングを確立し、これからの仕事に挑戦していきたい

 これからさらにSKGが挑戦したいことを教えてください。

助川:SKG独自の「ブランディングを人に例える術」をさらに追求し、ブラッシュアップしていきたいです。SKGのブランディングとして確立すれば、さらに自信を持ってご提案でき、お客様への納得感も増すのではと考えています。

また、「デザインが経営に与える価値」は今後も追求したいです。経営者の想いに寄り添い、デザイナーとして経営に伴走できる仕事をもっと増やしていきたいです。

– 助川さんらしさを活かして挑戦してみたい仕事はありますか。

助川:GRAPHで培った印刷技術をさらに活かしていきたいです。先日、SKGの社内研修で望月製本所に製本の過程を見学させていただいて、改めて印刷が好きだと再確認しました。お客様に、印刷にもこだわった提案を増やしていきたいです。

10周年の展示会フライヤーは自分たちの仕事でもあり、これまでに使ったことのない用紙を使用してみました。

人物に使われている黒はマットスミに見えますが、実はスーパーブラックというとても濃い黒インキです。紙の質感に影響して、こんなにも変化するのだと驚きました。

あと、特色版はスミ版と同じく基本的に製版上「ノセ」です。この特性を使って、人物シルエットを囲みながら色を被せています。同じ色でも白地の上と黒の上とで違う見え方をしています。フライヤー全体から内からみなぎる力を表現したつもりです。ぜひ手に取っていただきたいです。

SKGの10年を振り返る展示会「SKGのコミュニケーション術」ーブランディングを人にたとえるとー

– 7月23日(火)から展示会が始まります。見どころを教えてください。

助川:SKGの10年間の制作物を会場いっぱいに並べてみました。ギャラリーの方もここまで密に展示が並ぶ事例はなかったとおっしゃっていたので、見応えがあるのではないでしょうか。マニアックな視点で言えば、制作物の印刷の仕様をほぼすべて紹介する予定です。

これまでお世話になったお客様や友人はもちろん、ブランディングデザインや印刷に興味をお持ちの方にも気軽に訪れてみてほしいです。

実は僕の学生の頃に活動していたときのVJの映像も端っこで流します。僕のルーツを楽しんでいただけると嬉しいです。

2時間以上に及ぶロングインタビューとなりましたが、記事では書ききれないほど思い入れのある仕事がたくさんあります。

7月23日から開催される10周年の展示会には、SKGのこれまでの軌跡とブランディングデザインを余すところなく詰め込みました。

展示会を通じて、SKGのこれからに向けた新たな一歩を皆さまと共有できれば幸いです。

【会期】2024年7月23日(火)~7月27日(土)
【開館時間】11:00~18:00(最終日は17:00 まで)
【会場】Gallery 5610(東京都港区南青山5-6-10 5610番館)
【入場料】無料

会期中は全日、代表の助川が会場でお待ちしております。会期初日の7月23日(火)には、どなたでもご参加可能なオープニングパーティーを行いますので、ぜひお越しください。

展示会公式サイト:https://skgcoltd10th.studio.site/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?