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製本勉強会 第4回 印刷研修 at 望月製本所

SKGでは、印刷の知識を深めるべく、不定期に印刷研修会を開催しています。

第4回となる今回のテーマは「製本」。
「これはどのように作ったのだろう?」と思う本に出会うことはありませんか?
私はそのような本に出会ったときに心が躍ります。

今回は、望月製本所さま(以下敬称略)のご協力のもと工場見学の場を設けていただきました。
スタッフ・Mの目線から、その様子をお届けいたします。



1.はじめに

せい‐ほん【製本】:印刷物・原稿などを綴じ合わせて、1冊の書物にまとめること(デジタル大辞泉より)

つまり、紙の束を私たちが幼い頃から手にしてきた本の形にする最終工程。
上製本、並製本、中綴じ、無線綴じなど、さまざまな製本方法があります。

大量の紙は、どのようにして本や冊子になるのか?
デザイナーたるもの最後の仕上がりまでイメージできてこそ。
現場に行ける機会はそうそう無いため、目に焼き付けるぞと意気込みました。

望月製本所
新宿区神楽坂にある望月製本所は、特殊な製本を得意としている製本所です。
2023年からは工場の近くに「写場」というギャラリーも運営されています。
SKGの「杜の小さな印刷工房」の仕事を見ていただき、今回の工場見学が実現しました。


2.工場見学

早速、工場見学スタートです!
製本の工程ごとに印象に残ったことをお伝えします。

断裁

断裁機のそばに本文になるたくさんの紙の束が積み上がっています。
そこから1束取り、まずジョガー(紙揃え機)という機械を使って紙をぴったり揃えるところから始まります。ジョガーから断裁機に移し、いよいよ断裁です。
ヒョイと移していらっしゃいましたが、整えた紙の束はとても重く、そのまま移すこと自体が至難の技とのことです。

紙をセットした後にスイッチを入れると、左上から大きな刃が降りてきて文字通り「バサッ」と紙が切れました。刃が降りるのはほんの一瞬です。

(左)紙をピッタリ揃える機械(ジョガー)。 穴から空気が出て振動で紙が少しずつ動く
(右)断裁機。 「バサッ」は一瞬で、見ているのも怖いくらいです

【ポイント】変形にも対応する現場の力!
例えば、斜めにカットされた変形本にしたい場合。
断裁機の刃は角度調整はできません。本来は紙を仕上がりの形に型抜きしてから丁合いしますが、望月製本所では、お客様の要望に様々な角度から応えるべく断裁したい形に合わせて治具を作り、断裁機に治具と紙の束をセットすることで色んな変形本紙に対応しているそうです。
この治具作りが普通は難しい故に時間もかかるのですが、工場長が短時間で作り上げてしまうとのこと。まさに職人技です。


丁合い

本文を決まった順番に並べてセットする工程。
断裁した紙を専用の機械にセットすると自動で丁合いされていきます。
ただし、正しく丁合いされているかは人の目でチェックが必要です。

(左)1枚ものの丁合い機械
(右)この積み方が絶妙なバランスなんだとか…


綴じ

丁合いされた印刷物は、綴じ工程へ。
無線綴じ機械を見せていただきました。

(左)1つずつ丁合いされた印刷物を手作業でセット
(右)表紙と本文が機械内でセットされる

丁合いされた本文を手でセットし、別の場所に表紙をセット、機械が動くと表紙と本文が合体して出てくる仕組みです。

ホチキス止めの平綴じ機械や、手動で対応するための道具もたくさんありました。
要望に合わせ、柔軟に対応しているとのことです。
例えば、ミシン綴じでストックに無い糸を使いたいという要望があれば糸を探して縫ったり、とても分厚い中綴じ本や大型変形の場合は蹴飛ばしプレスという原始的な機械を使用したり。


化粧裁ち

最終仕上げサイズに断裁する工程。
専用機械で、こちらも「バサッ」と一発です。

【ポイント】イレギュラー判型の本にはひと工夫を!
細長い本の場合、1回の製本過程で2冊分の冊子を作る製本方法(2丁製本)が採用されます。その場合、最後の断裁で2冊に分けるのですが、その時に重要になるのが切れ込み(★)。この切れ込み無しに断裁すると、斜めに入る刃の圧力に負けて、紙が割れてしまうそうです。
その圧力を逃すために、断裁前にこのひと工夫をすることが重要なのだと教えていただきました。


カバーかけ

本や冊子の顔とも呼べるのではないでしょうか。

望月製本所では、
機械だと品質に不安が残る場合があり、何万部も発行しないものは
手作業でカバーかけを行っていることも多いとのことです。
ここでも担当の方が1つずつ丁寧にセットしていらっしゃいました。
見せていただいたのは写真集でしたが、帯までピシッと。写真集の内容とリンクした佇まいでした。


3.手仕事いろいろ

上記に加えて、人の手で行う工程をクローズアップします!

スジ入れ

折りをつける工程です。
竹道具を指にはめて人の手で行うことで、小回りがききます。

丸背

丸みを帯びた本の背も手仕事によって作られていました。
何冊もあると考えると、気が遠くなってしまいます…。

箔押し

金属の型と熱を用いて、箔を用紙や布に圧着させます。
紙との相性、布との相性などを考慮し、温め時間も調整が必要だそうです。その感覚を掴むには相応の時間がかかります。
今は専用機械に発熱機能も備わっていますが、昔はコンロの上で温めてから押していたとか。
ちなみに、発熱棒はとても熱かったです!
担当の方曰く「まずこの熱さが平気になることが一人前の条件」。

【ポイント】金属活字での箔押し
金属活字1つずつ拾って組む方法でも対応されています。もちろん型をつくる方法もされていますが、文選だとどのような文字でも活字があれば無限の組み合わせが可能に。とはいえやはりここも職人技なくして成立せずです。

なんと「SKG」の文字が!3種類も箔押ししていただきました


4.見学を終えて

見学中、最も飛び出した言葉が「これも手作業なのですか?!」でした。
「製本ってほとんど自動化されてるのかな」とぼんやり考えていた見学前の私にパンチを喰らわしたいです。

お忙しい中にもかかわらず、手掛けられた製本一つ一つ苦労したポイントやどのような工夫をしているかを細かく教えてくださいました。
その中で、お客様の細かな要望に応えるうちに、人の手だからこそ対応できる(逆に機械では太刀打ちできない)ことが増えていったことを伺いました。
難しいお題にも柔軟なアイデアと丁寧な手仕事で乗り越えていく、その姿勢こそが望月製本所の強みなのだなと強く感じました。同じ物づくりをする身として、そのような真摯な姿勢を持ち続けていきたいと改めて思いました。

最後に、貴重なお時間をくださった望月製本所の皆さまに心より感謝申し上げます。

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