『形だけのやりとりではなく、人らしい感情に価値をおきたい』 都とともに地方創生を手がける 愛甲 大さん
偶然の出会いから地方創生を手がけるようになった愛甲さん。しかし本人は、「仕事のカタチはなんでも良い、生きる意味を提供したい」と言います。彼の思う”生きる意味”とは何なのか、なぜその考えに至ったのか、愛甲さんの背景をお伺いしました。
愛甲さんプロフィール
出身地:神奈川県
活動地域:東京都
経歴:慶応大学卒業後、先輩の経営するベンチャー企業に就職。しかしその後、難病を患い死の恐怖に直面する。退院後に偶然出会った人とのつながりがきっかけで、入院中の経験を基に地方創生の仕事を手がけるようになる。
現在の職業:株式会社イタドリ代表取締役
座右の銘:顰蹙(ひんしゅく)は金を出してでも買え
『難病から起死回生!!世の中に爪痕を残すんだ!』
Q.どんな認識やあり方の変化が今の愛甲さんの活躍につながってますか?
愛甲 大さん (以下 愛甲) 大学生の時は普通の人と同じレールに乗りたくないという気持ちが強く、社会人になって自分で会社を立てたのも経済的に独立して自由になりたいというのが理由の一つです。でも、それ以上に病気を経験したことが大きな要因です。病気で死を意識して、その時に「時間を無駄にしたくない」って思って、「とにかく失敗してもいいから、自分がやりたいことを今やるんだ」と思うようになりました。とにかく独立して、自分で意思決定をしてやりたいと。
記者 私は死を実感するという経験をしたことがないので分からないのですが、そのときの気持ちはどんなものだったのか教えてもらえますか?
愛甲 例えば風邪を引いたとしますよね、風邪を引いたら風邪薬を飲みますと。普通の風邪だったら2,3日したら治るだろうって思いますよね。次の日になったらちょっとマシになるだろうとか、このくらいの体調の悪さだったら何日経てば治るとか、ある程度は想像できるわけです。でも、病気ってそういう計算ができないんですよね。自分にできるのは病室で休むことだけで、明日になって病状がどっちに転んでいるか分からない、サイコロを振るような感じですよ。良くなるか悪くなるかは天に委ねる。
それで僕の場合は悪くなったんですよね。治療を繰り返す度に体力を持っていかれて、薬を飲むから副作用もある。食べ物を摂れないつらさとも戦いながら一進一退。でも体重は自然と減っていくんですよね。最初は腕からの点滴だったんですけど、体重が減って最後は首から。それも、24時間入れているので24時間物を食べている感覚。そうすると気持ちが高ぶって眠れない、今は寝る時間なのか起きる時間なのか分からない状態が続くんです。水にしても、最初は粉末を溶かして栄養を摂れた時期もあったんですけど、それも負担になって、最後は水も飲んじゃダメ、うがいで口の中を潤してバケツに吐くみたいな。そんな感じで徐々に自分の自由が奪われていって、体重も減っていくし、薬も強くなっていく。最後は大腸の全摘出か免疫抑制剤かの二択でした。臓器の全摘出は日常の自由度を狭める可能性があり、免疫抑制剤も臓器移植の際の拒絶反応を抑えることが目的のリスクがある薬です。そんな風に徐々に選択肢が狭まっていく。自力で立てなくなり、何もできなくなっていく。これは本当にもう厳しいなと思った瞬間もあったし、一瞬気を抜くと多分すぐコロッと逝くと、直感で思ったんです。
こんな風に風邪とは違って明日が分からないんですよ。なので、この入院期間中に感情の揺れ動きはありましたよね。もうろうとしながらですが必死に本も読みました。英語や数学とかじゃなくて、歴史・文学・哲学とか、そういったものに助けを求めた自分がいました。今でも当時の気持ちはふとした瞬間に思い出しますね。不安定な、どちらに転ぶか分からないという怖さを感じたことを覚えています。
記者 その怖さを経験されて、もうやりたいことをやるんだと思ったんですね。
愛甲 そうです。本当に明日どうなるかわからないっていうのがあって、今でも、寝たらそのまま目が覚めないかもしれないという死の恐怖が常にあるんですよ。人間なんていつ死ぬかわからない。だから仕事をして何かを成し遂げて世の中に爪跡を残したいと思ったんです。
記者 ありがとうございます。
『人と人が有機的、感情的に繋がっていくこと』
Q.AIが普及する今の時代一般的な人はどんなニーズを持ってると思いますか?
愛甲 "アート"じゃないですかね。AIがいつか人間を超えると言われていますが、厳密な意味ではおそらく超えないと思っています。確かに処理能力ではかないませんが、クリエイティビティーの部分で人間を上回ることはないでしょう。経営者の能力はアート(芸術)、クラフト(経験)、サイエンス(分析)の3つに分けられることがありますが、このうち処理に該当するサイエンスはAIに置き換わり、そして同時にクラフトの領域もAIに組み込まれていくでしょう。しかし、数字で表せないアートの部分、その感覚を繊細にしていくことでロボットにはできない仕事ができるようになるはずです。
例えば、ロボット同士の野球の試合を見て涙を流す自分を想像できますか?なぜ人がスポーツに感動するのかというと、それは人間が生み出すものだからなのだと思います。人間がやっているから感動するし、その感動を提供することこそが生きる意味、この世に生まれてきた意味なのかなって。加えて、仕事は一人じゃ絶対にできないんです。だから組織を作って人とつながって、自分に足りないものを補いながら目標を達成していく。その関わり合いがもう生きる意味ですよね、僕にとっては。だからこれからのAI時代に求められるものは、有機的で感情的なつながりだと思うんです。
記者 そうですね。人が人らしく生きるためには、無機質なつながりではなくて有機的なつながりが必要だと僕も思います。
『感情の揺れ動きを経験、認識できること』
Q.この時代をどんな美しい時代にしていきたいですか?
愛甲 やっぱり感動を与えられるのが美しい世界だと思います。例えば、レストランに行って食事をしたらお金を払いますよね。それはひとつは栄養を摂るためだけど、同時に原材料を作っている人、シェフやサービスをしてくれる人への感謝を示すという側面もあるでしょう。お金のやりとりそのものに大きな価値を置くのではなく、いかにして意志のあるお金を回していくか、という考えを常に持っていたいですね。
記者 確かに感謝・感動できるのはいいことですね。でもあえてそこにフォーカスしているのはどうしてですか?
愛甲 感謝や感動だけに着目しているわけではないんです。むしろ怒りの感情を生み出しても構わないと思っているんですよね。年齢を重ねるなかで感情の発露を一つ一つ認識して、「こういった時に気持ちが揺さぶられるんだ、こんな感情もあるんだ」と経験していくことが生きがいの一つだと考えているので、喜びや悲しみ、涙や怒り、なんでもいい。マイナスの感情でもいい。とにかく感情の揺れ動きを経験することがそれはそれで一つの価値だと思っているんです。感情って一辺倒だと逆にもったいないですから、多様な感情を提供していきたいですね。
記者 確かに感情的になることはマイナスのイメージを持たれがちですが、良い意味で感情を味わったり、その感情で人と交流できるといいですね。
『組織の目標と個人の目標の差がゼロになるのが本当のチーム』
Q.愛甲さんにとってチームプレーってどんなイメージですか?
愛甲 チームプレーはしようと思ってするものではないと感じています。チームワークって何だろうと考えてるうちはチームワークは生まれなくて。組織である以上その目標の達成を前提としたうえで、組織の目標と個人の目標の差分が限りなくゼロになっている状態が僕の思う「チーム」です。だから誰がリーダーになってもいいんです。向いている目標は同じだから誰がリーダーになろうと組織の力は変わらない、それがチームワークや連携だと僕は思っています。究極の組織は誰が社長になっても優れた業績を残し続けるでしょう。
記者 組織と個人の目標に差分がないチームや、誰が社長になっても業績が変わらないチームが本当にできたらかなり理想的ですよね!
本日はありがとうございました!
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●株式会社イタドリ
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■編集後記
インタビューを担当しました岸本と村田です。愛甲さんのお話を通して、普段馴染みの無い病気のお話やその時の状況などを垣間見ることが出来ました。そのような経験をしていると日常ものを見る観点がかわるんだという事を直に学ばせて頂きました。1日1日をそう生きるのか、考えさせられた時間でもありました。本当に貴重なお話をありがとうございました。
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この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36