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『ヨーロッパ新世紀』(2022)【新作映画】

男らしく生きたいか?
だったら、本作の主人公・マティアスを目指せ!

ライフルを背に携え、バイクを駆って冬の山林を疾走する
ベアハンター・マティアスの勇姿に、痺れろッ!憧れろッ!
付いて行けッ!
そして、共に地獄へと堕ちるのだ…!!☆

―――炸裂!!ジプシー・ヘッドバット!!!

冒頭からの衝撃。もう、ガッチリ鷲掴みだ。♪
コイツは“危険な男”だという事が、一瞬で理解できる
見事な導入に、もはや期待は抑えられない。

←←←あの瞬間!
喰らった相手の頭蓋骨は、ガラスの如く粉々に砕け散った。
皆も聴いただろう!?あの凄まじい滅殺音を…!☆


出稼ぎ先のドイツから警察の追跡を掻い潜り、
トランシルヴァニアの寒村へと舞い戻ったマティアス。
だがそこは、レイシズムヘイトクライム
一触即発の地雷原と化していた。
その動向は、欧州各国、全世界が刮目すべきものだった。
この顛末こそが、我々の“新世紀”を映し出す鏡だッ!

トランシルヴァニア版『福田村事件』
確かに、映画の枠を超えて来た瑛太が
「ムスリムやったら、ヘイトしてええんか!!」
と、一喝を入れてきそうだった。

だが、本作はそれとは違った。むしろ…
トランシルヴァニア版『スタンド・バイ・ミー』だッ!!☆

村民がゾロゾロと総出で、雪を山を乗り越えて、
首吊り死体見学ツアーに乗り出すのだ。(笑)
あの絵面は圧巻だった。一体何なんだアイツら…??


主人公・マティアスは、一言で言えば、
「中学生男子」「中2野郎」、もっと簡単に片付ければ
「アホ」である。

自分本位で周辺事情を良く解ってない、解ろうともしない。
頭にあるのは、不倫相手とのセッ久と、息子に対する
父親としてのイキリだけ。

ドイツで差別を受けて来たマティアスなので、本来ならば
外国人労働者に同情して味方となる立場にあるはず。
なのに彼は、不倫相手が擁護する外国人に嫉妬するのだ。

難しい事はサッパリ解らない。
良く解らないまま、署名活動の机代わりとして背中を貸す。
あの人数全員が署名し終わるまで、ずっとあの体勢を
維持
させられたのだろうか?(笑)

文化センターの集会で、口角泡を飛ばす激論の最中にも、
当事者として台風の目に居る不倫相手に対して、
そんな事どうでもイイとばかりに、17分間ワンカットで
「手を握ってくれ」とタダこね続ける。☆

不意にマイクが回って来て、意見を求められても、
「えっ?何?ワカレヘンワカレヘン」みたいな(笑)
80年代風にいうと、「寄ってない」ヤツだ。

そんなマティアスが、なぜ主人公なのか…?

彼は、移民問題に関心の薄い、世界中の“中学生男子”を
投影したキャラ
に違いない。

丸大ハムの田中浩の様に、サバイバルな親父として
息子から憧れの眼差しを受けたかっただけなのか。

だが彼は、家族に見放されて崩壊し、処刑ライダーとなった。
父も息絶え、失う物など何も無い。
もはや頭にあるのは、闇に蠢く脅威を排除する事のみだ。

羊や豚と戯れる時代は終わった。
これからは、野獣との戦いが彼を待っている…!

―――行け、マティアス!
非情のライフルをブッ放せッ!!☆


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