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#177 神様みたいなアイドルや猫【宮沢賢治とシャーマンと山 その50】

(続き)

神社仏閣に限らず、芸能人やスポーツ選手までもが信仰対象のような立場となり、芸能人の一部は「アイドル」とも呼ばれる。アイドルの意味は「偶像」で、偶像崇拝という宗教用語もあるくらいだから、傍から見ると、宗教の一団の如きファンを持つスポーツ選手やアイドルも存在する。

空前の大ブームと言われている「猫」人気も、興味がない人間にとっては、合理性を超えた、ある種の信仰のようにさえ見える。宮沢賢治が、猫に対して動物以上の神秘性のようなものを感じているように見えるのも興味深い。

日本人が持つ宗教に対するアレルギーに反して、日常的に何かを信仰することは、日本人にとっては当たり前の事として習慣化しているようにも見える。祈りの対象は、仏や神はもちろんのこと、生きている人間や動物、山や木や岩。古来から日本人にはアニミズムの思想を持っていたと言われているが、今なお、その思想は、日本人の中に連綿と生き続けているのではないだろうか。

そして、日本人の信仰や思想に影響を与えたものの1つが、1000年以上続く神仏習合で、その影響は現代でも続いていると思われる。明治維新による神仏分離で、神仏習合の姿は大きく揺らいだが、神仏分離の影響は、現代で想像する以上に大きかったのではないだろうか。

長年にわたって国の信仰の中心にあった仏教はその地位を下げ、代わりに神道が国家の宗教となった。そして、宗教を取り巻く変化だけではなく、開国によって流入した海外の思想や、産業革命をもたらした科学技術の発展に伴い、従来の信仰や思想も大きく揺らいだのであろう。その影響の大きさは、現代から想像することが困難なほどにすら思える。

【写真は、茨城県 鹿島神宮の拝殿・本殿・御神木】

(続く)

2024(令和6)年4月29日(月)


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