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#138 山へ登れ【宮沢賢治とシャーマンと山 その11】

(続き)

思い返すと、「注文の多い料理店」の山猫(のようなもの)も、最後まで姿を現すことはなく、奥深い霊山に存在する精霊が、一部分だけ実体化したようにも見える。
 
修験道というシャーマニズム的な歴史をもった早池峰は、その周辺に「猫」と名の付く地名を持つ。賢治が猫に対して持っているある種の霊的な印象と相まって、私にとって不思議で謎多き作品「注文の多い料理店」の舞台であるというのも、真実味が感じられた。
 
大迫の展示館では、他にも興味深い話を伺った。

中でも、「賢治作品には舞台となった場所が存在し、実際にその場所に足を運ばないとわからないことが沢山ある」というお話は、特に印象に残った。そして、「大迫や早池峰が舞台となったと思われる作品は多いことから、まずは早池峰に登ってみなければならない」とも教えていただいた。結果、私の山登り生活が始まったが、早池峰はとても興味深く、山中では不思議な出来事も起こった。そして、賢治の詩の気配が感じられる場所が多くある。確かに、私の知る賢治なら、早池峰に魅了されるのではないだろうか。

早池峰については、また後で触れるが、早池峰はもちろん、麓にある岳地区、そして大迫全体が神秘的な雰囲気に包まれている。大迫を知れば、賢治の物語の舞台に数多く出会えるのかもしれない、という予感が感じられた。
 
そして、いよいよ「注文の多い料理店」の舞台と言われる「猫底」への興味は高まった。

【写真は、早池峰山登山で望む山頂方向】

(続く)

2024(令和6)年2月29日(木)

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