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勇気一つを友にして

突然ですが「勇気一つを友にして」という歌をご存知ですか。

太陽を目指して自作の羽で飛んだ「イカロス」という男の歌です。

私はなんとなく聞いたことはあったものの
しっかりとは知らなかったので調べてみました。


昔ギリシャのイカロスは
ロウでかためた鳥の羽根(はね)
両手に持って飛びたった
雲より高くまだ遠く
勇気一つを友にして


なるほどなるほど、そういうお話なのね。と

ちょっと引っ掛かりを感じながらも次の歌詞を読んでみると


丘はぐんぐん遠ざかり
下に広がる青い海
両手の羽根をはばたかせ
太陽めざし飛んで行く
勇気一つを友にして


イカロスは地元のヤンチャな先輩なんかな。

水面の上を丘から飛びたって飛行、ってそれはもう完全に
鳥人間コンテスト。

しかも、両手にロウで固めた羽を持って、って
イカロスの体重がどれくらいかわからないけど、
それを支えて飛ぶなら
かなりのサイズで軽量化したものが必要だよね。

そして、それを持って長時間羽ばたかせる筋力が必要。

その辺を考えたのかな?っていうかんじが伝わってくる
イカロスのちょっと残念な感じ。

はじめてやるボードゲームのルールを説明してるのに
全然聞かずに はしゃぐタイプ。



絶対、好きな女の子とか、後輩とか呼んで、
「見とけよー!オレこっから飛ぶからヨォ!」 ってアツくなってるはず。
心の中でホワイトベリーの夏祭りが流れて、
「行くで行くで行くで行くで行くで行くで!うぉぉー!!」って飛ぶ。



赤く燃(も)えたつ太陽に
ロウでかためた鳥の羽根
みるみるとけて舞い散った
翼(つばさ)奪(うば)われイカロスは
墜(お)ちて生命(いのち)を失った


でしょうね。


丘に残された後輩たちは、はじめこそワクワクしてたかもだけど、
「うわー、めっちゃバタバタさせてるやん…ひくひく!
 うわうわ完全に高度下がってるやん…あーあーあーあー。
 すぐ落ちたやん。エグいエグい。」
ってなってみんな黙ってしまってる。
でしょうね。


そして確か、ロウの融点って60度くらいだった気がするから、
この歌詞は完全に武勇伝にしようとイカロスが盛ってる。


「墜(お)ちて生命(いのち)を失った」とか言ってる時点でもう
中二病確定演出。


絶対死んでない。


水面に勢いよくたたきつけられたことで胸のあたりを内出血で真っ赤にして
「俺、生還!!!」とかドヤ顔で言ってるはず。


イカロス。そういうとこやぞ。同学年に友達がいないの。


きっと、丘に呼び出した好きな女の子は、
慰めてくれた後輩と付き合うんだろうな。
甘酸っぱい、青春。



だけどぼくらはイカロスの
鉄の勇気をうけついで
明日(あした)へ向かい飛びたった
ぼくらは強く生きて行く
勇気一つを友にして


繰り返される「勇気一つを友にして」って
よく考えたらめっちゃディスってる。
事前に考えたり調べたりせずに
勇気(根性?)のみで乗り越えようとしたこと、ディスってる。

そして、後輩たちも
「友」っていうスタンスじゃないんですよーっていう距離感。


イカロス可哀想すぎる。



でも。


イカロスは間違いなくこの歌の主役で。

いつだって主役になる人はきっとそういう人。


他のみんなが無駄で無意味なんじゃないかと思う
「できないこと」や「やらないこと」に自ら挑戦して。

失敗してもドヤ顔できる自己肯定感。


他人の一面だけ、やったことの結果だけを見て
批判することはとても簡単だけれど
自分に置き換えたときに
その一歩が踏み出せるのかというと自信がない。


「やっても意味がないから」とか
「それが未来につながるかわからないから」とか
「単純に恥ずかしいから」とか
いろいろ自分に言い訳をして一歩を踏み出していない気がする。


それって「楽しい」とは程遠い。




きっとイカロスが水面にたたきつけられて飛び散った羽を
拾って大切に持ち帰った後輩の女の子もいるはず。

イカロスは絶対、その女の子の存在に気が付かないんだろうけれど。


そして翌年、後輩と一緒に高校生クイズに出て
第1問目の二択を間違えて
顔から思いっきり泥水にダイブするんだろうけれど。







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