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長寿遺伝子を働かせるための効果的な方法とは? 『ライフスパン 老いなき世界』【要約・読書メモ】
今回は前回に引き続き「老化」を「病気」と捉えた『LIFESPAN 老いなき世界』を取り上げ、要約を兼ねつつ、長寿遺伝子を働かせるための効果的な方法について述べていきたいと思います。
長寿遺伝子を働かせるには「原初のサバイバル回路を始動させることが肝心」だと『ライフスパン 老いなき世界』の著者であるデビッド・シンクレア氏は述べていますが、そのことを考えるために重要になってくるのは、DNAの修復などに関わっている「サーチュイン」という存在です。
デビッド・シンクレア氏は、「サーチュイン」に関して、
サーチュインはエピジェネティクス的な調節機能においてきわめて重要な役割を担っている。細胞を制御するシステムの最上流に位置して、私たちの生殖とDNA修復を調節しているのだ。酵母の体内に初めて現れてからおよそ10億年が経過するうちに、サーチュインは私たちの健康や体力、そして生存そのものを司るように進化してきた。
と述べています。
「また、進化の過程で、「NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という分子を用いて仕事をするようにもなった」とし、「加齢とともにNADが失われ、そのせいでサーチュインの働きが衰えることが、老齢に特有の病気を発症する大きな理由の1つと考えられている」とも述べています。
生命は環境が厳しいときに自らの遺伝物質を守り、数十億年にわたって途切れることなく繁栄を続けてきた。その仕組みを理解するうえで、鍵を握るのがサーチュインなのである。
(デビッド・A・シンクレア『ライフスパン LIFESPAN 老いなき世界』 梶山あゆみ 訳 73頁)
特にサーチュイン酵素の働きが、糖尿病、心臓病、アルツハイマー病、骨粗鬆症、がんといった、老化に伴う疾患から私たちを守っているといいます。
サーチュイン酵素は、ストレスにされされたときに生殖ではなく修復を選ぶことで、私たちの体に「じっとしている」よう命じる。また、老化に伴う主だった疾患(糖尿病、心臓病、アルツハイマー病、骨粗鬆症、さらにはがんまでも)から私たちを守っている。アテローム性動脈硬化症、代謝異常、潰瘍性大腸炎、関節炎、および喘息へとつながる慢性炎症の亢進を鎮め、細胞死を防ぎ、細胞の発電所ともいうべきミトコンドリアの機能を高める働きももつ。(73頁)
そして、長寿遺伝子を働かせるには、「原初のサバイバル回路を始動させることが肝心」であるとしているのですが、それでは、そのためには一体何が効果的なのでしょうか?
デビッド・シンクレア氏によれば、長寿遺伝子を働かせるための具体的な方法とは、食物の摂取量を減らしたり、運動したり、寒さに身をさらしたりすることだといいます。
食べる量を減らす
カロリー制限や間欠的断食でサバイバル回路を作動させる。またアミノ酸を制限することで、オートファジー(自食作用)を働かせる。
運動する
「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」などの運動によって体にストレスを与えると、サバイバル回路が始動する。
寒さに身をさらす
快適とはいえない温度に身をさらし、長寿遺伝子を働かせる。
ちなみに長寿遺伝子には、サーチュインのほかに「TOR(ラパマイシン標的タンパク質)」をつくる遺伝子群(哺乳類は「mTOR」)や、「AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)という酵素をつくる遺伝子」があるといいますが、
「これらの防御システムはすべて、生体にストレスがかかると始動するという共通点をもつ」
といいます。
しかし「大きすぎるストレスは克服できない」として、以下のように述べています。
急性の外傷や制御不能な炎症は、生物に老化する暇を与えずその命を奪う。細胞内のストレスにしても、大きすぎれば手に負えない。たとえばDNAの損傷箇所が多すぎる、などの場合だ。DNA自体に変異を残さず短期間でそれが修復できたとしても、エピゲノムのレベルでは情報が失われている。
(デビッド・A・シンクレア『ライフスパン LIFESPAN 老いなき世界』 梶山あゆみ 訳 75頁)
つまり、簡単にいえば、ストレスは大きすぎると手に負えなくなるため、適度にストレスが加わることが、長寿遺伝子を働かせるということなのです。
ここが重要なポイントだ。細胞を損傷させることなく長寿遺伝子を働かせるストレス因子はいくつもある。たとえば、ある種の運動をする、ときおき絶食する、低タンパク質の食事をする、高温や低温に体をさらす、などだ(中略)
これを「ホルミシス」と呼ぶ。ホルミシスとは、毒が毒にならない程度の量で刺激効果を現わすことを指す。一般に、ホルミシスは生物にプラスの作用を及ぼす。永続的なダメージを引き起こさずに誘発できた場合はなおさらだ。ホルミシスが起きるとき、すべては良好な状態になる。いや、良好などという言葉では足りない。少しのストレスが加わることでこれらの遺伝子がプラスの方向に働けば、体は活動を控え、エネルギーを蓄えて、少し長く生きることができるのだから。これが長寿への第一歩だ。
(同 76頁)
「運動」は今すぐ長寿遺伝子を働かせるために効果的な方法。
ちなみに長寿遺伝子を働かせるために、デビッド・シンクレア氏が特に重視しているのは「運動」であるように思います。
デビッド・シンクレア氏は『ライフスパン 老いなき世界』のなかで、
「そもそも運動とは、体にストレスを与えることにほかならない。運動をするとNADの濃度が上昇し、それが今度はサバイバルネットワークを作動させる」
「運動が遺伝子のスイッチを入れ、私たちを細胞レベルで若返らせてくれる」
と述べています。また、
なぜ運動が体にいいかといえば、運動によって数々の長寿遺伝子がプラスの方向に調節されるからだ。そのおかげで、テロメアが伸びる、細胞に酸素を運ぶ新しい微細血管ができる、ミトコンドリアの活動が高まって化学エネルギーが増える、といった効果が現れる。
としています。
さらに、「長寿遺伝子の力を余すところなく発揮させるには、強度は間違いなく大事になる」とし、メイヨー・クリニックの研究チームの調査を挙げ、
健康を増進する遺伝子を一番多く活性化したのは「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」だった。これを行なうと、心拍数や呼吸数が著しく上昇する。高齢の被験者ほど、HIITによる活性化効果が大きかった。
としています。
自分のしている運動が激しいかどうかは、きついと感じるかどうかでわかる。呼吸は深く速くなり、鼓動は最大心拍数の70~85%になる。当然ながら汗をかき、一息つかないと二言三言しか話せない。これが低酸素応答と呼ばれるもので、この状態は体に適度なストレスを与えるのにうってつけだ。永続的な害を及ぼすことなく、老化に対する体の防御反応を活性化させてくれる。
(デビッド・A・シンクレア『ライフスパン LIFESPAN 老いなき世界』 梶山あゆみ 訳 192‐193頁)
今回は前回に引き続き、これからの不老長寿について書かれている話題の本、デビッド・シンクレア /マシュー・D・ラプラント『LIFESPAN ライフスパン 老いなき世界』を、要約を兼ねつつ取り上げました。
(ついでに前回の記事も加筆修正しました。)
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