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なぜ「ストレス」が免疫力低下の要因になるのか? 後編 【これからの免疫力を高める習慣24】

ストレスにうまく対処することで、これからの免疫力を高める生き方、始めてみませんか?

今回は前回の続きです。

長期的なストレスはコルチゾールの影響によって免疫機能を低下させてしまうのですが、一方、一時的なストレスであれば、免疫力は高まるとされています。

このことに関して、たとえばアメリカの神経内分泌学者であるブルース・マキューアン氏は、『ストレスに負けない脳』のなかで、免疫系は、強烈なストレスに対しては白血球を戦場に送り戦いに備えるなど、「私たちがストレスに対処するうえで重要な役割を果たしている」と述べています。

しかしストレスが長引くと、今度は感染症にかかりやすくなるため、

ストレスホルモンは正常なレベルだと免疫能を高めるが、ストレス反応がくり返し活性化されすぎたり長期に及ぶと免疫能はうまく機能しなくなる

と説明しています(1)。


またマキューアン氏は『ストレスに負けない脳』のなかで、(体温など)「生体が安定した内部環境を一定に維持する働き」である「ホメオスタシス」ではなく、「アロスタシス」という言葉で、「ストレス反応」を読み解いています。

「闘争か逃走か」という「ストレス反応のおかげで私たちは緊急事態に対応し、状況の変化に対処することができる」のですが、困難な状況に直面した際、私たちは「アロスタシス」という仕組みによって、エネルギーが提供されることで、生体が安定した状態を保てているというのです。

このことについてマキューアン氏は、

アロスタシスの本来の目的は、変化に直面したときに、生体が安定状態を維持できるように、困難な状況(それは命を脅かすようなものとは限らない)に対処するエネルギーを提供することなのである。

とし、

たとえば朝起きるという単純な行為について考えてみよう。起きるのが一日の最初の大きな試練と感じている人もいるが、早起きの人にとっても、寝ている状態から起きようとすると、体に負担がかかる。このような負担に対応するため、アロスタシスの働きがある。朝には他の時間より高いレベルのストレスホルモンが分泌されるのである。

といった例を挙げています。

アロスタシス」とは、変化に直面したり、困難な状況に陥ったりした際に、「体がいちばん必要とするところにできるだけ多くのエネルギーを送る」

つまり、「アロスタシス」とは、変化に直面したり、困難な状況に陥ったりした際に、「体がいちばん必要とするところにできるだけ多くのエネルギーを送る」ということなのです(2)。

しかし「免疫力の低下」という観点から問題になるのは、マキューアン氏が「アロスタティック負荷」と呼んでいる、「ストレスでボロボロになった状態」です。


次回へと続きます😊


注釈

1 『ストレスに負けない脳 心と体を癒すしくみを探る』 ブルース・マキューアン、エリザベス・ノートン・レスリー 著 桜内篤子 訳 早川書房

免疫系は私たちがストレスに対処するうえで重要な役割を果たす。自然界において闘争か逃走かを迫られた状況では怪我を負う危険が大いになる。ところが、怪我をする可能性はまずないようなストレスに対しても、私たちの体は、敵をやっつけるか、手に負えなければ逃げる準備をしてしまう。したがって免疫系は攻撃にさらされた部分に免疫細胞を大量に送りこむ準備をし、皮膚、筋肉、組織への損傷や感染に備える。

(中略)

強烈なストレスは免疫反応を強め、その結果白血球が戦場に送られ戦いに備える。しかしストレスが持続すると、逆に免疫力を抑える傾向があり、かえって感染症を招きやすい。

(131頁)


2 前掲書

 アロスタシスは迅速で複雑な伝達システムによって生みだされる。アロスタシスは新たな状況や脅威を感知する脳と、体のほかの部分を総動員する内分泌系(おもに副腎)と、体内の防御システムである免疫系に繋がっている。アロスタシスは、極端な状況では闘うか逃げる準備をするため、「闘争か逃走か」反応と同じ意味で使われることもある。要は体がいちばん必要とするところにできるだけ多くのエネルギーを送るのである。
 闘争するにしても逃走するにしても、動物はいつもより多くの酸素を筋肉、とくに足の主要な筋肉に送りこまなければならない。そこで酸素を体内に入れるために呼吸が激しくなり、酸素を血液を通して筋肉に送るために心拍数が高まる。また、傷を負っても出血をなるべく少なくするために、皮膚の血管が収斂する。毛が立つような感覚はこの収斂から来る。そして激しい運動に必要な燃料を供給するため、体は蓄積していた炭水化物を液化して血液に流す。急なストレスがかかると免疫系も関わってくる。免疫反応が強化されるのだ。感染と闘う白血球が血管の壁に付着し、いつでも負傷した部分に馳せ参じる用意をする。しかし、ストレスが長期化すると、もっともエネルギーが求められる主要なシステム(心臓と肺)に重点が置かれるため、免疫反応が後回しにされる。だからストレス反応が〝オン〟の状態が続けば、問題が起こるというわけだ。

(20頁)


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます💛💛💛


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