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相互の「関係性に気づくこと」が、<感謝>する練習になる。

「感謝する」には、仏教のいう「縁起」、日本語で「おかげさま」「お世話様」というように、自分自身が生きていると同時に、様々な関係性、生命(いのち)の働きによって生かされていることに気づく必要があると述べました。


しかしながら、忙しすぎる毎日を送っていたり、何か面白くないことがあってストレスが溜まっていたりすると、どうしても「ありがとう」「ありがたい」という感謝の気持ちを忘れてしまいます。

また、先述しましたが、自分のなかに感謝したい気持ちがないのに他人から「~してやったんだから感謝しろよ」と、感謝することを押し付けられた場合などは、心から「ありがとう」と言うことは難しくなります。


反対に、自分が窮地に陥った時に、誰かに助けてもらった時や、自分が出来ないことをしてもらった時は、自然と感謝の気持ちが湧いてくるものです。

では、普段から感謝する機会を増やしたり、感謝する習慣を身につけたりするにはどうすれば良いのでしょうか?

たとえば、心理学者のデイヴィッド・デステノ氏は、「幸運なことに、感謝の気持ちは日常生活でもごく簡単に増やせる」として、以下のように述べています。


幸運なことに、感謝の気持ちは日常生活でもごく簡単に増やせる。忘れないでもらいたいのは、感情は自然に湧き上がるものだと決めつける必要はないことだ。人間には、自分が何を感じるかを決定するすばらしい力が備わっている。脳はどちらかといえば、反応のメカニズムより予測のメカニズムが優勢なのである。脳はつねに、以前起こった出来事に基づいて、次に起きる出来事を予測している。

『なぜ「やる気」は長続きしないのか』 デイヴィッド・デステノ 著 住友進 訳 108‐109頁


デステノ氏は、例えば、レストランで食事をしている時に、ガラスが割れた音を聞いた場合は、ウェイターがコップを落としたのだと予測しますが、真夜中にベッドで横になっている時に、このような音を耳にすると、「脳は次に起こる出来事に対して違った予測をするため、大きな恐怖を感じる」としています。

そして、

ここで肝心なのは、多くの点で、感情は最近発生した出来事をもとにして、次に起こる出来事を推測するということである。だから、自分の感情を変えるためにやらなくてはいけないのは、最近、起きた出来事に関する認識を変えることだ。言い換えれば、普段自分が関心を払っているものに微調整を加えさえすればいいのだ。

と述べています。

さらにデステノ氏は、

感謝を育むための戦略にとってもっとも重要なのは、自分を助けてくれた人に意識を集中することだろう。どのような援助(例えば、お金、社交、労働力、情報)をしてもらったかは問題ではない。大切なのは、相手の労力、支援、親切をありがたいと思うことだ。

人間はほかの人に恩返しをするように生まれついていて、感謝を利用することは恩返しするためのエネルギーを供給する水路になる。さらに、日常生活のなかで感謝の心を養うための秘訣は、状況をどのように解釈するかにある。

と述べています。

ここで重要なのは、「どのような援助(例えば、お金、社交、労働力、情報)をしてもらったかは問題ではない。大切なのは、相手の労力、支援、親切をありがたいと思うこと」であり、「日常生活のなかで感謝の心を養うための秘訣は、状況をどのように解釈するかにある」という点です。

では日々の生活においては、どのように感謝する練習を実践すれば良いのでしょうか?

先日のnoteで、感謝する練習とは、仏教のいう「縁起」、相互の関係性に気づくことだと述べましたが、「~してあげている」と認識している場合、少しずつゆっくりと、その認識を「~してもらっている」に変えていくことをお勧めします。

具体的には、家族であれ友人であれ恋人であれ、よく行くお店の店員さんであれ、「~してくれてありがとう」と、これまではなかなか気づくことがなかった、自分のために何かしてくれたことに対して、常に感謝の気持ちをもって接してみるのです。


たとえば近所のコンビニエンスストアに立ち寄り、会計する際に、見慣れない店員さんの接客態度があまり良くないと不満を持ったとします。そしてそのことでイライラすると、ついその店員さんに対して文句を言いたくなるかもしれません。

しかしながら、そういう時こそ、心を落ち着かせるためにマインドフルネス瞑想を実践するようにすれば、そのあとで、レジで会計をし、商品を売ってくれたということに気づき、そのことに対して「ありがとう」と感謝することも出来るのです。


また、宅配などで、ネット通販で注文した商品が予定よりも遅れて到着した場合は、待たされたことにストレスを感じてしまいますが、そういう時はオンラインショッピングの利用者が増加していると共に、道路の渋滞や、宅配業界が人手不足であることなども考慮し、「届けてくれただけでありがたい」と思うことで、ストレスや不満が増大していくのを防ぐことが出来るのです。

もちろん、相手の対応が不愉快であると感じたり、自分の思い通りにいかなかったりしてイライラしている時は、すぐに相手に感謝することは難しいかもしれません。

そういう場合は無理に感謝する必要はなく、怒りや憎しみの気持ちが収まるよう、いまの呼吸に意識を集中させるようにし、しばらく時間が経って気持ちが落ち着いてから、「~してくれたこと」に気づくようにすればよいのです。



そのほか感謝する練習としては、心のなかで「ありがたい」という言葉をこまめに唱えてみるのもオススメです。

私たちが生きる現実社会は「言葉」によって形成されていると言えますが、何事に対してもただ愚痴や不平不満を漏らしたり文句を言ったりするのではなく、「~してくれるだけでありがたい」「あるだけでありがたい」などと唱えるようにし、生きるための糧が「今・ここ」に存在している・成立していることに感謝してみるのです。

たとえば、親や配偶者に作ってもらった夕食のおかずがいつもより少ないと感じた場合、「たったこれだけ」と思ってしまうかもしれませんが、そのことに不満を感じるよりは、(もし体調を崩して寝込んでしまっていたら、目の前に夕飯自体が無かったかもしれないのに)「作ってくれただけでありがたい」「おかずがあるだけでありがたい」と感謝の気持ちを持ってみるのです。


反対に、どうしても感謝が出来ないという場合は、資本主義社会において、意識的であれ、無意識的であれ、「お金」を持っている(もしくはたくさん稼いでいる)自分のほうが相手よりも偉い、立場や地位が上であると思い込んでしまっており、そのことが邪魔してしまっているのかもしれません。

少なくとも私自身は、相手にどういうわけか感謝出来ないという時は、相手に対して何らかの無意識的な偏見(アンコンシャスバイアス)をもっていることが多いのです。

しかし仏教では、「お金」や「地位」とは関係なく、生きとし生けるものはみな、平等な「いのち」として捉えており、そこに資本主義的な優劣はありません。

最後に、「当たり前」であることが実は決して「当たり前」ではなかったことを身をもって知ることになった時に、初めて日常の「ありがたみ」に気づくものです。

もし日々の生活のなかで不満や愚痴を漏らしたくなる場面に直面したら、日常の「当たり前」を、仏教のいう「縁起」という視点から眺め、あえて「ありがとう」や「ありがたい」と、感謝の気持ちを抱くようにしてみてはいかがでしょうか?

ちなみに感謝の気持ちを持つことを生活のベースにしてみることは、いつもの脳を変える、脳科学的にもオススメです。


感謝する練習のための3つのポイント。


  1. 日頃からマインドフルネス瞑想をこまめに実践し、「今・ここ」は、自分の力だけではなく、関係性によって成り立っていることに気づいてみる。

  2. 日常生活のなかでイライラしたり不満を感じたりすることがあったり、誰かを嫌ったり憎んだりすることがあったとしても、「今・ここ」は「お互いさま」「おかげさま」によって成り立っていると解釈を変えてみることが、感謝の心を養うための秘訣。

  3. 「今・ここ」は自分と自分以外との関係性によって成り立っていると気づければ、「ありがたい」と心のなかで唱えたり、「ありがとう」ときちんと相手に言葉で伝えられるようになる。


 人生に物を奪われるのではなく、人生からたくさんの物を与えられ満たされていきます。自分自身の中に価値あるものが増え、他の人に分け与える余裕ができたと自然に感じるようになります。

リック・ハンソン『脳を鍛えてブッダになる52の方法』 影山幸雄 訳 サンガ文庫130頁



お忙しい中ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます😊


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