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ミトコンドリアはどこから来たのか?

ミトコンドリアが進化を決めた』について書いた記事で、「ミトコンドリアの獲得は、生命40億年史における奇跡であると感じる」と述べました。

では、そのミトコンドリアはどこから来たのかということについては、一般的には、酸素がまだ生物にとって有害であった遥か昔に、酸素を利用してエネルギーを効率的に生産する好気性細菌(最近の仮説ではαプロテオバクテリア)が、原始細菌のなかに侵入したことが始まりだと言われています。


好気性細菌が細胞内に取り込まれたことが、共生だったのか乗っ取りだったのかは判然としませんが、それがオルガネラ(細胞小器官)として残ったのがミトコンドリアであるといわれています。

原始細菌が、どの段階でミトコンドリアを獲得したかについては、諸説がありますが、細胞小器官であるミトコンドリアは、核をもつ真核細胞へと進化する途上で構築されていったと考えられています。


最近の研究によれば、ミトコンドリアの獲得は、核に遺伝子が詰まってすでに複雑になっている細胞に、効率的な電源をつないだだけではなく、はるかに重要なことだったらしい――そもそも複雑な真核細胞の進化に可能にした、ただ一度の出来事だったのである。ミトコンドリアの融合が起きていなかったら、現在、われわれはもちろん、ほかの知的生命や多細胞生物も存在していなかっただろう。

(『ミトコンドリアが進化を決めた』 ニック・レーン 著 斉藤隆央 訳 p35)


そして、生物が進化すると共に、様々な活動を行えるようになったのは、酸素を利用するミトコンドリアによって、大量の「ATP(アデノシン3リン酸)」が作られるようになったからなのです。

エネルギー通貨とも呼ばれる「ATP」は、酸素を利用しない解糖エンジンと呼ばれる仕組みでも作られますが、その際はたったの2分子です。

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しかし解糖エンジンから、ミトコンドリア内部のTCA回路 ⇒ 電子伝達系という経路をたどると、最終的に30分子程度ものATPが作られます(最大で38)。


解糖エンジンからミトコンドリア・エンジンへの経路をたどると、ブドウ糖1分子につきATP38分子が生み出される。しかも、得られるエネルギーは、ブドウ糖1分子につきATP2分子しか生み出さない解糖エンジンだけの時の19倍にもなり、その余裕がハイブリッド化した私たちの生命活動に大きな影響をもたらした。こうして、おそらく現在の私たちの体系発達と行動力につながったであろうことは、容易に想像がつくのである。

(宇野克明『ミトコンドリア革命』p45ー47)


ちなみに一般的に「呼吸」というと、酸素を吸って二酸化炭素を吐くことですが、生化学的な意味での「呼吸」とは、細胞内のミトコンドリアが関わる、このような過程を指します。

エネルギー通貨である「ATP」がいかに重要であるかということについてはまた別の機会に書くかもしれませんが、何となく社会生活が息苦しいと感じられる時こそ、「呼吸」はもちろんのこと、「内部共生」や「ハイブリッド」、もしくは(松岡正剛氏がいうように)「編集」という観点から、ヒトがミトコンドリアによってつくられたということは一体どういうことなのか、考えてみるのも面白いかもしれません。



関連リンク

松岡正剛の千夜千冊1177夜『ミトコンドリアと生きる』瀬名秀明・太田成男

https://1000ya.isis.ne.jp/1177.html




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