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インドが落とした一粒の涙〜光り輝く東洋の真珠〜

あの国の日差しは、私の目を眩ませるようにしながら、なにか夢とか幻とかを見させるような尊さがあった。

奥底からじんわりと滲み出し、そのまま皮膚の表面をつたって滴れ落ちる汗水でさえも、今思えば、紫陽花の葉に艶めく滴のような瑞々しさを含んでいたような気がする。

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スリランカの首都、コロンボの空港に到着した私は、街の中心にあるコロンボ駅を目指す。

自分の予約した宿がどんなところにあるのか想像もできないので、とりあえずコロンボ駅に向かえばどうにかなるだろうというところだ。
しかし肝心なコロンボ駅がどんな姿をしているのかも分からないので、バスの中からずっと外を見つめて、駅らしきものを見つけるしかない。

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出発から約1時間、想定内の想定外ではあったが、やっぱり私はコロンボ駅を通り過ぎてしまったらしい。

「さっき見かけたあれが、コロンボ駅だったんじゃないの!?」ということに通り過ぎてから気づく。

ぬあー、面倒なことになった。
コロンボ駅を見ることなんて生まれて初めてだからそりゃ見過ごすわ。旅中はこんなことばかり。

次の停車で降り、歩いてコロンボ駅まで引き返すことにした。

バスを降り立った瞬間のその世界は、陽炎の中に私ひとりだけが静止していて、周りは活気と熱気に揺らめき動くような、不思議な感覚に陥った。

年中通して30℃ほどの不慣れな気候と、異国に降り立ったときの高揚感がそうさせているような気がした。

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旅立つ前、スリランカがどんな国なのかいまいち想像ができていなかった。

『インドが落とした一粒の涙』と言われているように、スリランカはインドのすぐ下に小さく小さく存在している。キラリと輝く一粒の涙。かわいい。

となると、インドに似た国かな…?

歩きながら私を通り過ぎ行く人たちは、皆インド人と同じような顔立ちをしている。でも、サリーを着ている人やターバンを巻いている人は見当たらない。デニムとシャツ、なんならスーツを着ているサラリーマンもいるので、違いは歴然。

一番の大きな違いは、コンクリートで道がきれいに舗装されていること!
インドは驚くほどにすべてが”剥き出し”になっていて、その辺に牛がいっぱいいる。人間と同じくらい牛がいる。(気がする)

⬇︎インド⬇︎

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インドはヒンズー教の国、スリランカは仏教の国、というのも大きな違い。
宗教が異なると、すべてが全く違うものになる。

オレンジ色の袈裟を着た僧侶がその辺りを普通に歩いていると、キターッ!となってテンションが上がるのは私だけ?

女の人が決して触れてはいけないと言われている僧侶を見つけるたび、その神聖さにドキドキする私である。

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人ゴミをすり抜けつつ、それでも目線は右に左に興味を持ちながら、前へ進む。しばらく歩いていると10分くらいでコロンボ駅に到着した。

アジア人というのは本当に目立つ。こういう国に来ると一斉にみんなの餌食になるような気がして、駅の前に群がるスリーウィラー(タイのトゥクトゥクみたいな乗り物)のドライバーたちに話しかけるためにも一丁気合が必要だ。

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「宿まで行きたい」と言うと、顔面力の強い4、5人のドライバーに囲まれ、しょっぱなからだいぶふっかけられては、やたらと高値を提示される。

でた〜、、と思いながら適正料金まで値下げようと頑張るも、途中からこの粘り強さ大会がめんどくさくなって、そこそこの値段で連れて行ってもらうことで交渉成立した。

よく考えたら、値切ってる価格、10円20円の世界だったりする。初日はいいけど、慣れてきた数日後には、この10円20円を決して許さない女に私は変貌する…。

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スリーウィラー。バックパックと私が乗り込んだらギュウギュウになるほどの小さな乗り物に積み込まれる感じが好きだし、こんなに風が気持ちいことある?ってなくらい、シルクのスカーフみたいな風が、優しくも大胆に私の顔を潜り抜けていくのが最高なんだ。

”光り輝く島”いう意味を持つスリランカ。
『東洋の真珠』という呼び名を持つように、走り抜けるこの一本道のすぐ横には、蒼く青いインド洋が永遠と広がっている。

空には太陽、真横には海、目の前をすり抜けてゆく潮風の黄金比が完成して、肌に降り注ぐすべてのものから恵みを得ているように感じる。光合成をする葉っぱのように、水のシャワーを浴びるお花のように、私はこうやって呼吸する。

予約をしていた一泊1000円ほどの宿『Clock Inn』は、現地の人なら誰でも知っているという有名な店の真向かいに位置することから、ここに決めた。初日から迷いたくないもんね。

もう少しこのまま走り続けていたいという気持ちに後ろ髪を引かれつつも、期待通り、運転手も迷うことなく20分ほどで宿に到着した。

『Clock Inn』

この宿で出逢う2人の男が、この旅で私に何をもたらすのか、この時まだ私は知らない。

私が過ごしたスリランカには、夢とか幻とか、現実、があった。


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