詩『離島殴打事件』

(遠くの空へ、から発想して冒頭の数行?を書いたのですが、その責任を取るように続きを書いたら少し長くなりました。細かいことが気になりこれでも納得できませんが続けると3倍に膨れそうなのでやめました。それからこれは、私にとっては詩です。詩の練習です)

題名
『離島殴打事件』
(隠しテーマ・遠くの空へ)



 俺は、遠くの空へ、叫んだ。
「犯人は絶体にー、捕まえてみせるからなー!」

 恋人はドクターヘリに乗せられ病院に運ばれた。
 頭の傷は深く出血も多いことから生命の危険があることは俺にもわかっていた。しかし、刑事である俺は犯人を捕まえることを優先した。

 小さな離島だが、最近は隠れた?人気で観光客も少しずつ増えていた島だった。

 1週間くらい前かな、仲のいい女友達が直前に足を怪我して彼氏と行けなくなったので代わりに俺と二人で行ってきたらって、その子の家にお見舞いに行ったときにチケットをもらったみたいなのです。
 すべてのチケットは購入済みでタダで行けると言うことでケチで有名な?じゃなくて節約家の恋人は喜んでもらっちゃったみたいで。

 その日は俺たちも久しぶりのデートの約束を前からしていた。俺には珍しく二日連続の休みでどこに行こうかともめていた?じゃなくて話し合っていた時でした。
 俺は旅行かテーマパークが良かったが恋人は将来のために少しでも貯金を増やしたいみたいでドライブとかピクニックとか家の大掃除を手伝って?とかいろいろ言っていた。
 だから、その旅行は俺にも渡りに舟の話だった。

 事件は、その離島に向かうフェリーの中で起こった。

 知名度は上がって隠れた人気とはいってもまだ旅行客はそんなに多くなくて、俺たちは午前中の便に乗ったがほとんどの観光客は昼からの便で離島に渡る人が多いと聞いた。宿のチェックインが15時からだからだ。
 俺たちが午前中に行ったのは島で魚釣りを俺がしたいと言ったからである。俺の趣味が釣りなのだ。

 そしてそのフェリーの乗客は少なかった。俺たちを入れても5人くらいだった。あとは船長と雑用や案内をしてくれている乗組員の方が1名いた。

 俺たちは中央に二人で座っていた。年配の夫婦らしき男女は、後方の席に座ってゆっくり本を読んでいた。もうひとり若い男がいたが船長の側に行ってずっと話をしていた。乗組員も混ざって3人で楽しそうだった。顔見知りのような馴れ馴れしさが若い男にはあった。

 そして俺は恋人が眠っているのを確認してからそっとひとりでトイレに行った。戻ってきたら、恋人はすでに床にうつ伏せで倒れていた。
 すぐに駆け寄り脈を確かめ呼吸も確認した。
 生きている。
 よかったぁ~と内心では安堵したが状況は深刻だった。
 そして職業柄、辺りを見回して犯人らしき人物と凶器などの物的証拠を探した。凶器は海に捨てただろうことはすぐに想像できた。

 少し落ち着いてから頭頂部の傷を確かめた。何かの鈍器でやや右頭頂部を強く殴打され気絶したようだった。血の量も頭部としては多い。頭蓋骨骨折が想像された。後ろからいきなり殴打され衝撃で椅子から滑るように落ちたのだろうがそれでも犯人を見ようとしたのか体を捻っていてうつ伏せになっていた。

 トイレに行く前と景色は何も変わっていない。誰もこの状況に気づいていないようだった。

 誰が犯人なんだ?

「せんちょうー!」
「せんちょうー!事件でーす!」
「ちょっと船を止めて、こっちに来て下さーい!」

 私は冷静に対応していた。
 しかし、事件が解決してから船長に会うとこの時の私は声が裏がえっていたらしい。

 私の声で船内の雰囲気は一変して、みんなが駆け寄ってきた。
 島の医者の有無や島までの時間、ドクターヘリが来れる場所なのかなどいろいろ聞いて、俺はすぐに決断した。
 島はもう近く、ドクターヘリの発着場もあると言うので船長にはドクターヘリの救助要請をしてもらってからすぐに島へと向かってもらった。
 犯人については少し心当たりがあった。しかし俺は恋人に俺のコートを掛けて寄り添い続けた。出血もひどく意識も無かったが呼吸がしっかりしていたことだけが希望だった。とにかく抱きしめたかったが動かすことも良くないと考え、背中をさすり続けた。

 島に着いてからそんなに待たずにドクターヘリも到着した。俺は恋人に付き添って病院に向かうことも考えたがやめた。
 そして、島から去って行くヘリに向かって、遠くの空へ向かって、犯人の逮捕を誓ったのだった。

 俺は島の護岸を中心に調べながら電話で同僚の捜査一課の仲間たちと連絡を取り合った。

 事件は仲間の捜査で一気にすすんだ。
 俺の恋人にはストーカーがいて数ヵ月前から危険を感じて近所の派出所のお巡りさんには相談していたみたいだった。忙しい俺には心配をかけたくなかったようだ。
 そしてすべてはそのストーカーの計画だったみたいだ。

 最初は、俺の連休を知りそれを利用することを考えたようだ。要は二人の旅行はどうしても阻止したかったようだ。そして冷たく対応され警察にまで相談した恋人を逆恨みしたようだ。何よりその彼氏が刑事と知り、俺への対抗心が強くなったようだ。

 まず、女友達を襲い怪我をさせ自分の言う通りに行動するように脅迫していた。そう旅行のチケットなどはすべて犯人が用意したものだったのだ。他から盗んだ名義やクレジットを使い購入していた。女友達は秘密をばらしたら殺すと脅かされていたがお金も受け取らされて、それが裏切りのようで余計に話せなくなっていたようだった。

 それから俺の釣り好きも知っていたようで、よく釣れる穴場が午前中の満ち潮の時間帯だと教えてくれたのもその女友達だった。

 犯人の目的は、俺の目の前で犯行を実行して見せつけ、俺に勝ちたかったようだ。犯人は自分に頼らなかった恋人に罰を与えたつもりだったようだ。

 そして、犯行の中身だ。

 実は犯人はトイレに隠れていて俺がトイレに行くのを待っていた。
 考えてみれば港の男子トイレが俺が何回行っても掃除中だったのも犯人の仕業だった。
 そらから乗船していた若い男は犯人の仲間。船長と乗組員を惹き付けておくのが役目だったらしい。

 俺がトイレに行き、そこで交代するようにトイレからそっと出てきた男が犯人だった。
 トイレの側には死角があり、素早くそこに移動する計画だったのかもしれないが漏れそうだった俺の動きが速すぎて移動が間に合わず俺とトイレでほんの一瞬だが接触したのが犯人の最大の失敗だったんだろう。
 
 犯行後は、海に飛び込み泳いで島まで辿り着いたようだ。
 犯人は、この島の出身で泳ぎはかなり上手で遠泳が子供の頃からの特技だったようだ。

 まぁ、とにかく、刑事の俺を馬鹿にしちゃいけない。
 チラッとすれ違っただけでも顔を覚えられるんだ。

 事件が起こったあと、その顔が船にいないのに気づき船長に乗客の人数の確認をしてすぐに犯人はわかっていた。もう島が近いと聞けば必ず島に泳いで渡ったと確信して俺はドクターヘリに乗らずに、すぐに島中を探したのだった。時間が立つと島民にまぎれたり小舟で島を脱出するおそれもあり決定的な証拠がないと逮捕しづらくなる可能性もあったのでスピードにこだわった。
 目立たない場所でずぶ濡れになって島に上陸して着替えるとしたら場所はかなり絞られると思った。

 そして、小屋に隠れてるアイツをスピード逮捕した。

 その日の夜には俺は病院に駆けつけられた。
 手術は成功して命は助かったと聞いたときは思わず泣いた。しかし、意識は戻らず、一晩中ロビーや集中治療室をうろうろ歩き回った。

 そして、長い夜が明けた。

 恋人が意識を取り戻した。
 まぶたを開けたんだ。
 俺の手を握った。
 言葉はまだ喋りづらいようだったけれど、大きな瞳からポロリと涙が枕に落ちるのが見えた。
 奇跡を目の当たりにした朝日は神々しく黄金の光を二人に注ぎ続けた。

 その翌日。
 俺は午前中を休みにしてもらって、また病院に駆けつけた。

 まだ絶体安静の状態だったけど酸素マスクも取れて会話も出来るようになり急速に回復していた。
 病室に入ると、恋人がニコって笑ったから、俺は涙が止まらなくなる。
 そして看護師さんの目を盗んでちょっとだけキスをした。

 仕事に行くまえに少し気晴らしに病院の屋上に上がった。

 離島のある、遠くの空へ、叫んだ。
「ざまぁーみろー!くそったれー!ばかやろー!」
 そして、
「○○○、大好きだー!」

 みんなが振り向いて見ているので、俺はダッシュで逃げ出した。


(終わり)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?