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ステージIIお花見散歩

組織検査結果は、ステージIIでした。
S字結腸と直腸の間にできた癌は5.5センチもの大きさで、筋組織まで到達する進行癌であり、組織周辺のリンパが腫れていたにも関わらず、手術で摘出した39個のリンパ節には一切転移が認められず、抗がん剤も放射線も不要、この先5年間半年に一回血液検査とCT検査のみの経過観察のみで良いという診断結果。早期発見ではなかったけど、ギリギリセーフ、あとちょっとでステージIIIのギリギリ瀬戸際ステージIIとの事でした。

最悪のケースについてや、薬物放射線治療の副作用、これからの日常がどうなるのか、体験者談や世の中に溢れているケースを参考に、あらゆるパターンを想像しては、覚悟を決めて、何を諦め、何ができるのか、何ができないのか、全てを受け入れる事、自分自身の精神と肉体に向き合う事を日課に、癌告知からの3ヶ月を過ごして参りました。楽観し過ぎず、悲観し過ぎないバランスを探り、希望を持つ事と楽観視は似て非なるものである事を学びました。

悲観するならとことん最悪のパターンを、気が済むまでシュミレーションして、その時自分が何をどう感じるかを自己分析しました。

ここ1週間ほどで、やっと体も回復し、リハビリがてらの不用品整理と断捨離をしながら、精神も着地点を見つけて、組織検査結果がどんな形であれ、心穏やかに受け入れられる準備が整いつつありました。

そして、迎えた結果は、ギリギリセーフ。

その瞬間、ほっとした、というより、何かが揮発し昇華された感覚がありました。力を入れて息を止めて踏ん張っていたのなら、緊張が緩んでため息も漏れた事でしょう。

この3ヶ月、私は力を抜いて深呼吸をする事に努めているような感覚でした。病に集約される自らの過去の全てを両腕に抱えて、どう受け入れて死に向かっていけば、この先楽に息がして行けるのか、考え続けて来ました。どう生きてどう死ぬか、どう死にたいのかという禅問答。死を見つめる事は、生を見直すきっかけになると、実感しました。

生きてきた過去を振り返り、目の前にあるがままの現在があり、この先の癌であろうがなかろうが、やがて来る終わりにあたって、悔いのない人生とは何なのか。納得するまで自分に向き合う事ができれば、悔いはあっても、ある程度はその濃度が薄まるのではないか、と。

検査結果を聞いて、身近に感じられた死の影が輪郭を緩め、遠ざかり、生が目の前に開けた瞬間、何を感じたか。

紐で引っ張るタイプの電気がついたように、場面が切り替わって新しい人生が始まった、という感覚です。カッチン、と音がしました。呆気ないような、目が覚めるような、そんな音でした。

あ、新しい人生が始まったのだと、素直に受け止めたような感覚です。

自分が何をどう感じているのか、無意識を意識化して言語化し、自覚し、全てを受け入れる事で、新しいスタートラインに立てる、それが、この3ヶ月で得た最大の学びです。スタートに立って、どこへどうゴールするのか、走り続けるのか歩くのか、無酸素運動と有酸素運動を交互にサーキットトレーニングしながら向かうのか、歩き続ける亀の側で昼寝するウサギになるのか、阿波踊りしながら行進するのか。

考え続ける事が、生きるという事なのだと思いました。まさに人生修行です。結果として擬似的に身近に感じた死をきっかけに、生きる事に向き合う事ができたように思います。癌は、私の再整備のためのピットインでした。

来月までは重いものを持たない事、アルコールは必要最低限に控える事以外は、食事も生活も普通に戻して良いですよと、担当医師。
『一旦お疲れ様でした』と言ってくれました。
ステージIIの完治率は80%、稀に再発もありますが、様子を見て5年経てば完治との事です。

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病院の帰りに、お花見散歩をしました。
自分に向き合い続けた3ヶ月。ろうそくに照らした自分の指先しか見えない闇深い洞窟から、花鳥風月を感じられる陽のあたる外界へ。冬眠から覚めた熊の気分です。私が熊だったら、とりあえず鮭が食べたいと思うのではないかと、思われます。そんな新しい春を感じました。


久しぶりに荒木町にも足を運びました。

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ファンクラブのお店に置きっぱなしになってしまっていた仕事道具と三味線を取りに行ってきました。まだまだコロナ禍。流し仕事の再開は未定ですが、またファンクラブのお店で予約制ミニライブくらいはできるように、三味線の猛練習と、歌のリハビリをしようと思っています。修行は続きます。

あと、似顔絵やイラストの仕事にも力を入れて行きたいと思ってます。

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カレンダーのためにに描き下ろした4月のイラストと、その現場である荒木町公園の写真です。

いつかまた、荒木町公園お花見して、みんなで歌える日が来ますように。


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