藝術農民文庫

富山県氷見市の中山間地域で、ちいさな農を営む新米農民の創作文庫です。 パーマカルチャ…

藝術農民文庫

富山県氷見市の中山間地域で、ちいさな農を営む新米農民の創作文庫です。 パーマカルチャー(※人と自然が共存していくためのデザイン手法)の実践を目指して農村に移住した、元都市生活者(夫婦)の葛藤と歓喜について綴っていけたらと思います。 農繁期は、むかし書いた夢小説等でお目汚し🙏

マガジン

  • 小説「夢千夜」

    浅見 杳太郎著。おれは、ぼくは、私は、男は、 ―こんな夢を見た。夜に見るあの「夢」。その奇妙で脈絡がなく不条理な、しかし、確かに暗示的でもある(時には神話的でさえある)ヴィジョンを、ものがたり(夢小説)に綴り直しました。藝術農民がまだ都市生活をしていたころ、実験的に筆を遊ばせたものも十数篇あり、少しずつアップしていく心算です。挿絵はAIに描いてもらっています。不条理小説、スリップストリーム的な雰囲気が醸せたらな、などと思っていますが、まだまだ未熟です。お笑ください。

  • 藝術農民の日日

    「Simfonio Kampara / 農村は交響する」 ー。里山資源を循環させ、次世代に生かす新たな価値を。富山県氷見市で、2022年に新規就農。パーマカルチャーの考え方を礎に、人・自然・地球環境に配慮した農法やライフスタイルの確立を目指して、ゆるゆる活動しています。うまくいったり、いかなかったり。家族・親族や地域の方々、仲間たちに支えてもらいながら、一歩一歩、里山での農ぐらしのあり方を模索中。そんな新米百姓・「藝術農民」の日日を、不定期で綴っていきます。

最近の記事

  • 固定された記事

【交響する氷見 001】 里山にある元小学校で、「村まつり」のような音楽祭を!

農村にオーケストラの音、鳴り響くを夢見て小生、富山県氷見市の中山間地域で循環型の農を営まんとする、百姓見習いのようたろうと申します。「藝術農民」という屋号で稲や各種野菜、果樹などのお世話をさせてもらって居りますが、随分と未熟です。 そんな、いち農民見習いが無軌道に旗を振らせていただき、この春(2024年4月)、氷見の里山の元小学校で音楽祭を開催させてもらうこととなりました。地域の方々、仲間たち、先輩、家族・親族、等々、皆さんおかげさまです。 氷見を拠点とした、この音楽コ

    • 【交響する氷見 003】 「春の祭典2024」演奏曲紹介(交響する氷見祝祭管弦楽団)

      (1)J.オッフェンバック 『天国と地獄』序曲春の祭典の開幕を飾るのは、この曲。 ⁡ 「カステラ一番 電話は二番 三時のおやつは文明堂」 ⁡ で、わかる人はわかると思いますが…、この、運動会やCMなどでお馴染みのメロディーが終盤に登場する、底抜けに明るい曲です。 ⁡ フランス・パリで19世紀に活躍した作曲家ジャック・オッフェンバックが、ギリシャ神話を元にした古典的なオペラをパロディにしたオペレッタ『天国と地獄』。 ⁡ 19世紀のフランス社会への風刺が込められた作品でもあり、

      • 【交響する氷見 002】 能登半島地震に対して、ちいさな農村の楽団ができること

        令和6年能登半島地震チャリティーコンサート「交響する氷見」プロジェクトでは、目前に迫る「春の祭典2024(※)に向けて、練習や準備のラストスパートをかけているところです! ほんの数人での音合わせから始まった「交響する氷見祝祭管弦楽団」ですが、おかげさまで、少しずつ演奏仲間と出会う機会が増えてきて、さらに、楽器を弾かない地元の仲間たちからも、運営面で多くの力や気持ちを添えてもらえるようになっています!! そのように、今(2024年4月現在)でこそ、「春の祭典」の実施に向け

        • 【夢小説 014】 夢伍位「気分屋ロリヰタ そらを飛ぶ(2)」

          浅見 杳太郎  僕らの陰鬱な行進は続く。  早く、宿舎に行き着いて酒が飲みたい休みたい、と思うから、辛くても、つい早足になる。次第に団員同士、競走しているかのような錯覚に陥る。そして、その錯覚は疲労や空腹と共にすくすく育ち、ついには、一人でも先んじて宿に着かねばならぬ、という強迫観念となる。  加えて、鬱気を誘う風景に、加速度的に沈んで行く太陽、さらに、いつ雨粒を落とすか知れぬ不穏な黒雲。皆、無口になるのも無理はない。特にファゴット男は、確かに気の毒だった。裸で楽器を持

        • 固定された記事

        【交響する氷見 001】 里山にある元小学校で、「村まつり」のような音楽祭を!

        マガジン

        • 小説「夢千夜」
          14本
        • 藝術農民の日日
          2本

        記事

          【夢小説 013】 夢伍位「気分屋ロリヰタ そらを飛ぶ(1)」

          浅見 杳太郎  まるで行軍のようだ、と思う。  空には今にも雨粒を落として来そうな灰色の雲が、ある所では厚く、そしてある所では薄く、そんなふうに自儘に斑模様を作っていて、夕べの陽の光を意地悪く覆い隠してしまっている。  磯の香りがするけれど、海は見えない。風に運ばれて来るその香りを、すうーっと鼻腔を拡げて吸い込むことで、僕は辛うじて、海の気配を知る。磯の近さを感じる。  大人数でぞろぞろと、寂れた集落の中を足早に歩く。潮騒はこの圧倒的な靴音の重なりの中に力なく埋まり、

          【夢小説 013】 夢伍位「気分屋ロリヰタ そらを飛ぶ(1)」

          【アボカド 002】 北陸・氷見にて目算なき旗揚げ━、くまなしアボカドプロジェクト!

           2021年の春、富山県氷見市の中山間地域・熊無に立つ大きなビニールハウス2棟と出会ってから、早や丸1年以上が過ぎ、2022年の夏、放恣に伸び散らかす雑多な草木らに、小生は茫然とするばかりだった。  とはいえ、22年の夏まで、何もしていなかったという訳では決してない(熊無のハウスに対しては、有意で具体的なアクションが取れていなかったのは確かなのだけれど)。  その間、藝術農民の拠点地である氷見市の「触坂」という集落にて、耕作放棄地を開墾し、水稲栽培の経験を積むことなどに躍

          【アボカド 002】 北陸・氷見にて目算なき旗揚げ━、くまなしアボカドプロジェクト!

          【アボカド 001】 くまなしハウスとの出会い、そして、その遺跡的様相

           2021年春、おおきなハウスを2棟、借りることになった。  すぐそこが石川県羽咋市という、富山県氷見市の西域・熊無にあるハウスだ。  2棟ともに、おおむね、間口10m、高さ5m、奥行き30mくらいのハウスで、小規模に農を営む当方にとっては、大変におおきい。  もともと、菊やストック(花の名前、アラセイトウ属との由)等の花卉栽培に使われていたハウスだったが、少し前に耕作放棄地となり、さらに、先の冬の大雪でいま立っているのとは別の2棟のハウスが潰れたため、使い手がいなけれ

          【アボカド 001】 くまなしハウスとの出会い、そして、その遺跡的様相

          復興活動拠点として、能登半島の付け根・富山県氷見市に滞在しませんか

          2024年1月1日に起きた、能登半島地震。 能登半島の付け根に位置する氷見市も多くの家屋が被害を受け、一部の道路が液状化し、一時は全域で断水となりました。 当家は中山間地に位置しており、家屋の被害も小さく済みましたが、断水がやや長引き、水が当たり前に使える有り難さを改めて実感することとなりました。 現在は全地域で水道が復旧し、多くの宿や飲食店も営業を再開しています。 全国からも、多くの復旧・復興支援関係の皆さんが能登に向かわれていると思いますが、実は氷見も活動拠点とし

          復興活動拠点として、能登半島の付け根・富山県氷見市に滞在しませんか

          【夢小説 012】 夢肆位「飛行機と半券(4)」

          浅見 杳太郎  しばらく、こんなふうにはしゃぎながら通路を進んで行くと、突然右側のカゴから、おぎゃあという声が響いた。  驚いた。何だろうとカゴの中をのぞいてみると、そこには赤ちゃんが横になっていた。赤ちゃんと言うには少し大きすぎるような気がするけれど、オムツを着けているのだから、やっぱりこれは赤ちゃんなのだろう。  ぼくは他のカゴものぞいてみた。すると、さっき公園で遊んでいた子も寝ていた。この子は赤ちゃんの格好はしていなかった。さっきと同じ服装のまま、気持ちよさそうに

          【夢小説 012】 夢肆位「飛行機と半券(4)」

          【夢小説 011】 夢肆位「飛行機と半券(3)」

          浅見 杳太郎  このフロアには、シートが、朝礼できをつけをする生徒みたいにきちっと並べられていた。  リクライニングがきく上等なシートで、真っ白な革張り。隣との間隔も充分で、足も伸ばし放題だから、すごく座り心地がよさそうだ。  そして、その各々の座席の前には大きな液晶のテレビが備えられていた。薄型のとても高そうなやつだ。そこに映っている映画も、子どもの好きそうなファンシーなキャラクターが飛んだり跳ねたり歌ったりしているもので、とっても観たくなる。  はっきり言ってすご

          【夢小説 011】 夢肆位「飛行機と半券(3)」

          【夢小説 010】 夢肆位「飛行機と半券(2)」

          浅見 杳太郎  でも、ぼくはもう六年生だ。あのころのぼくじゃあない。  ぼくは妹の手を引き、階段をカンカンと昇って行った。伯爵はいい人、じゃなくて、いいヤギに決まってるさ。ちゃんと頼めば、きっと乗せてくれるとも。そうとも、自分の気持ちを伝えるんだ、伝えるんだ、と呪文のように口の中で繰り返しながら、ぼくは一段一段つまずかないように昇って行った。  しかし、昇るにつれて、何だかタマまで一緒に腹の方へせり上がって来るようで、妹の手を握っていない方の手が、あそこへと伸びて行くの

          【夢小説 010】 夢肆位「飛行機と半券(2)」

          【夢小説 009】 夢肆位「飛行機と半券(1)」

          浅見 杳太郎  飛行機が、ぼくの目の前に座っていた。今の今までこの公園で遊んでいたというのに、まったく気がつかなかった。  こんなおっきなものが、何の前触れもなく、その白くてつやつやとした尻を公園の芝生の上に乗っけているなんて、おかしな話だ。このどこにでもあるような公園に、ジャンボ旅客機が場所もわきまえずに姿を現したということは、ひどくぼくを恥じ入らせた。  こんな突拍子もない光景は現実のものであるはずがなく、そういったヘンテコな空想にふけるなんて、もっと小さな子のする

          【夢小説 009】 夢肆位「飛行機と半券(1)」

          【夢小説 008】 夢参位「鼻血女(4)」

          浅見 杳太郎  何という妙な場所だ。おれは愈々耄碌したのか。そう言えば、さっきから頭が重い気がする。  そうして、おれがこの現実離れした光景にただただ狼狽していると、すぐ横の個室の白い扉が、出し抜けにぎいいと鈍い音を軋ませながら開いたのだ。  驚いて目をやると、そこには一人の女が、白い洋式便器の便座の上に座っていた。黒いデニムパンツを下着と一緒に足首まで下げ、胸元に赤黒い染みをつけた青いシャツを着ている痩身の若い女であった。  目が妙に離れていて、口幅もいやに広く、魚

          【夢小説 008】 夢参位「鼻血女(4)」

          【夢小説 007】 夢参位「鼻血女(3)」

          浅見 杳太郎  あの目を刺す西日が何時の間に沈んだのか。  夜になると、何だかんだ言って冷える。歳のせいだろうか。おれは、草臥れた黄土色の背広のポケットに両手を突っ込みながら、事件現場のホームに立って、線路を見下ろしていた。  「またか」とつい独語してしまう。ゴツゴツとした石と二本のレール、平行に秩序立って並ぶ枕木。そこに先刻まで、あの若い男の肉体がばら撒かれていたのだ。飛散したかつて人体だったものの数々。赤黒い血液に混じって、透明な脳漿だかリンパ液だかが、かなりの広範

          【夢小説 007】 夢参位「鼻血女(3)」

          【夢小説 006】 夢参位「鼻血女(2)」

          浅見 杳太郎 「ちょっと、待って。あなた誰?」  彼女は起き上がりながら平坦な口調でぼくに話しかけてきた。そして、兄のベッドの上で脚を斜めに投げ出す格好で、しなりと座り直したかと思うと、次の瞬間、急に鼻血をどろりと漏らした。  白い濁りの混じった血の固まり。  その今までに見たこともない程の大量の白濁混じりの鼻血は、彼女の唇を容易に乗り越え、形のいい顎の先で少し留まって、粘り気のある紅白の玉となった。それは重力に抗うようにふるふると細かく震えたが、やがて、ぼたりと椿が

          【夢小説 006】 夢参位「鼻血女(2)」

          【夢小説 005】 夢参位「鼻血女(1)」

          浅見 杳太郎  ……ぬわぁんわんわんわ……ぬわぁんわんわんわ……。  腕っ節の強そうな男である。肩幅も広いし、胸板も厚い。健康そうに日に焼けた大学生くらいの男である。その男が駅の構内を猪のように脇目も振らず、ホームへの階段を二段跳ばしで駆け上がって行く。もうそろそろ残業のない勤め人が帰路に付く頃だ。大分日が長くなった。この時間でも、まだ夕日は赫々と西の空に留まり、街を暖色に染めている。  ……ぬわぁんわんわんわ……ぬわぁんわんわんわ……。  男は、階段の人垣を太い腕で

          【夢小説 005】 夢参位「鼻血女(1)」