【夢小説 003】 夢壱位「能楽堂鍼灸治療院(3)」
浅見 杳太郎
そうして、物を掻き分け、頭上が崩れている処は屈みながら、先へ先へと進むと、少し開けた大部屋に出た。そこの土間は、まだ瓦礫やゴミなどで取り散らかってはいたが、一段高い畳張りの十畳くらいの和室まで行くと、新鮮な藺草の匂いが漂い、健やかな生活の香りがしてきた。
そこには、少し恰幅が良すぎるきらいはあるが、見るからに愛嬌のある一人の和装の女性が、営々と食事の支度に精を出していた。旦那の夕食の準備だろうか。丸い卓袱台の脇に、美味そうな湯気を立てる白米の入った半切桶