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更新日:2024/09/14

 小論文・作文指導者の〆野が日々の添削・採点指導でよく見かける、中高生の間違えやすい表記を紹介し、世の中高生・受験生に警鐘を鳴らす、このシリーズ。今回は番外編です。

 今回は「偏在」と「遍在」。これは中高生があまり使わないので、「間違えやすい」ものとは言えませんが、これは大人でも間違えやすいなと気づかされました。自分の備忘録的な意味も込めて、ここでまとめます。

 この気づきのきっかけは、昨日6月17日(月)にTBSラジオで放送された「アフター6ジャンクション2」(通称アトロク)でした。私の仕事は夜10時過ぎまでありますから、「リアタイ」できないのでradikoで聴いていました。電車の中でね(ちなみに私、ラジオ聴取が趣味です)。

 この日は、「第10回日本翻訳大賞特集!」ということで、選考者の、翻訳家の柴田元幸さんが日本翻訳大賞の作品を紹介するというものでした。この企画は度々やるのですが、知らない翻訳作品が紹介されるので、私も楽しみに聞いていました。しかし、この日、メインMCのライムスター宇多丸さんはのどの不調により急遽お休み(お大事にしてください)。代打MCは声優・作家の池澤春菜さんでした。

 で、その放送の中で、柴田元幸さんが、大賞作品である『母を失うこと――大西洋奴隷航路をたどる旅』(サイディヤ・ハートマン著)を訳した榎本空さんに対して、「ちなみに、『偏在』と『遍在』、間違って使っているよ!」と指摘したのです(一応言っておきますが、嫌みな感じではなく、冗談まじりに軽い調子で言っているので雰囲気は悪くないですよ)。これを昨日聞いていて、「あー、この二つ、私も油断していたら、間違えそう……」と思ったので、「今緊急でnoteを回しています」(笑)「偏」と「遍」、漢字が似ているので、うっかり使い間違えそうですね。

へんざい【偏在】(名・自サ)〔文〕かたよってあること
へんざい【遍在】(名・自サ)〔文〕広くゆきわたって、どこにでもあること

三省堂国語辞典 第七版


 「偏」は、「偏る(かたよる)」と読み、たとえば「日本の医療機関は、日本全国に偏在しているのが問題だ(都市部には医療機関が充実しているが、地方部には医療機関が足りていないなど、偏って在る状態)。」などの使い方をします。

 一方「遍」は、「遍く(あまねく=広くどこまでもゆきわたる)」と読み、「汎神論においては、世界における神の内在や遍在が強調される(神の力は無限にひろがりどこまでも及ぶものだということ)。」などの使い方をします。ちなみに「あまねく」は「普く」とも書くため、この同じ意味の漢字を重ねた「普遍(ふへん)」は、まさに「あまねく(広く全てにあてはまる)」の意味になります。

 かたちが似ているので、間違えそうですね。中高生は自分の文章の中でこれらのことばを書く機会は少ないかもしれませんが、現代文の試験の評論文問題ではよく見かけることばなので、覚えておいて損はないでしょう。

参考図書:三省堂国語辞典 第七版 2014年1月10日 第一刷


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