見出し画像

【間違えやすい表記】×講「議」○講義

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導からよく見かける、中高生の間違えやすい表記を紹介し、世の中高生・受験生に警鐘を鳴らすのが、このシリーズ【間違えやすい表記】。

 本日は「講義」です。これを「講『議』」とする間違えが、志望理由書などで多く見受けられます。この熟語について、本日は確認していきます。

 「不可欠」の回でもお話ししたように、漢熟語のほとんどは漢文由来であり、この「講義」もその例に漏れません。これは、「講」が動詞つまり述語であり、「義」が名詞つまり目的語(対象語)となり、これは漢文として訓読すると「義ヲ講ズ」となります。

(不可欠の回はこちら)

 漢文(中国語)は日本語と異なり、主語(S)の次に述語(V)がきてその後ろに目的語(O:~を)や補語(C:~に)がきます。これは、いわゆるSV構文であり、語順や構成だけでいうと中国語は英語などに近いわけです。したがって日本語読み(訓読)する場合は、後ろから前へ返って読む必要があるため、「返り点」というものが必要になるのは、漢文の授業で習ったかと思います。

 つまり「講義」は、「講」がVであり後ろに続くのはOかCであるため、「義ヲ(O)講ズ(V)」と返って読みます。こうしたV-O構成の漢熟語は多くあり、「読書(書を読む)」、「殺人(人を殺す)」、「貯金(金を貯める)」など枚挙にいとまがありません。「講義」もその一つということです。

 「講ずる」とは「説く」や「説明する」、「教える」、「レクチャーする」ということ。対して「義」のここでの意味は「意味」や「内容」ということ。「対義語(反対の意味のことば)」や「意義(=意味)」、「広義/狭義(広い意味/狭い意味)」に使われているものと同じ「義」です。合わせて「義を講ずる」とは「(書物などの)意味や内容を説明する(こと)」です。

 講「議」と間違えるのは、同音異義語である「抗議」との混同やそこからの連想なのかもしれませんが、この「議」は「意見」や「話し合い」という意味。「抗議(反対の意見)」、「異議(異なる意見)」、「合議制(話し合いによって決まる制度やシステム)」、「会議(=話し合い)」のように使い、「議」に説明するとか授業のようにレクチャーするというような意味はありません。

 以上のように、「講義」の「ぎ」は「義」です。間違えないように、注意してください。

「記事が参考になった!」と思われる方がいましたら、サポートしていただけると幸いです。いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!